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誘惑蝶

No.113 14/06/23 17:51
ハル ( deZwBe )
あ+あ-

『ハルちゃん、応援ありがとう。期待に応えられなくて、ごめんね。いまサッカー部の打ち上げ終わって帰ってきたんだ』

メールを見たあと、
私はいろんな感情が込み上げてきた。

蛍先輩、いま、どんな気持ち…?
私に、何か出来る事はある…?

私は、思い立ったように
パジャマを脱ぎ捨て近くにかけてあった
制服に着替えてカバンを持ち、

「お母さん、友達の家泊まりに行ってくる!」

そう言うと家を飛び出した。

「ちょっと、ハル!?」

後ろでお母さんの
心配する声が聞こえたが
私は駅に向かって走った。

電車に乗って、向かった先は…

「来ちゃった…」

蛍先輩の家。

彼女でもないのに、
重いかな…

勢いで来ちゃったけど…
私、蛍先輩の側にいたい…

唇を噛み締めて、
チャイムを鳴らした。

「はーい」

ぱたぱたと足音が近づいてきて、
目の前のドアが開いた。

「どちら様…って、ハルちゃん!?」

蛍先輩は驚きを隠せないようで、
目をぱちくりさせている。

「こんな夜遅くに、どうしたの!?」

「すいません、来ちゃいました…」

今頃恥ずかしさが込み上げてきて、
私は先輩の顔を見れなかった。

「まだ23時か…終電は間に合うな…ハルちゃん、帰ろう。送ってくから」

「えっ…?」

蛍先輩は私の手を引く。

「お母さん、心配してるんじゃないの?」

「いま、家出てきたんです。友達の家に泊まるって言ってきました」

「明日、学校じゃん」

「制服で来たし、カバンもあります」

「はぁ〜…」

蛍先輩はその場にへたり込む。

「せ、先輩っ?」

「不覚だけど、すげー嬉しいなぁ…」

蛍先輩は、そう呟くと、

「でも、ダメだ。今日は帰ろう」

すくっと立ち上がり、
再び私の手を引いた。

「嫌です…私、蛍先輩の側にいたいです…!」

恥ずかしかったけど、
素直に言った。

暗くてよかった。
顔、きっと真っ赤だから…。

「ハルちゃん」

低い声で、蛍先輩は言う。

「俺、今日は何するかわかんないよ…?」

「…!」

蛍先輩は、ぐいっと私を引っ張り
家の中に引き込んだ。

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