誘惑蝶
No.136 2014/06/27 23:20
ハル ( deZwBe )
あ+あ-
はだけた浴衣をなんとか直し、
歩き出そうとすると、
「ハルちゃん」
蛍先輩が私を引き止める。
「はい…?」
「いまので足の痛み、酷くなってるでしょ?無理しちゃダメだよ、ほら」
蛍先輩は、その場に
膝をついて腰を落とした。
「おぶってあげる」
「歩けるから大丈夫ですよっ」
「いいから」
「でも、私、重いしっ…」
「大丈夫だから、おいで」
強がる私を、蛍先輩は
優しくなだめる。
「じゃあ、お邪魔、します…」
私は遠慮がちに
蛍先輩の背中に、しがみつく。
「ははっ!お邪魔しますって、ハルちゃんおもしろいなぁ。…しっかり捕まっててね」
「わっ!」
「大丈夫?落っこちないでね。…まぁ、何があっても、俺が落とさないけど」
いたずらっぽく蛍先輩は笑う。
おんぶしてもらうなんて、
いつぶりだろう。
広くて、大きな肩。
蛍先輩の背中、あったかい…。
蛍先輩は私をおぶって
駅まで歩いてくれた。
「ハルちゃん、全然重くないよ。むしろ軽い。ちゃんと飯食ってる?」
「えぇっ!?私、大食いってよく馬鹿にされるくらいでっ…」
「あぁ、そういえばさっきお祭りの時、いっぱい食べてたなぁ。やっぱり重たくなってきたかも」
「嘘ッ!?」
「ははは、冗談だよ」
「…いじわるっ」
「いっぱい食べる女の子って可愛いじゃんね。いいと思けどな」
駅に着くと、夜遅いのに
お祭りの日だからか人が結構いる。
外は暗くてよかったけど、
駅は明るいから恥ずかしいな…
「先輩、私降ります。人、たくさんいるし…」
「大丈夫。恥ずかしかったら、目をつぶっていて」
「でも…」
「いいから。このまま、送って行くから」
「えっ!そんなの悪いですっ!」
「俺も男だからさ、これくらいはさせてよ。足痛めてる女の子をそのまま歩いて帰らせるなんて、出来ないよ」
強がってはいたけど、
だいぶ足も限界だ。
下駄の花緒が当たるだけで
ズキズキと痛む。
私は蛍先輩の優しさに甘えて、
家まで送ってもらう事にした。
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