誘惑蝶
No.75 2014/06/11 00:15
ハル ( deZwBe )
あ+あ-
「ハル、これから話す事は、全部本当の事だ。全てを聞いた時、オマエは怒るかもしれない。泣くかもしれない。でも、聞いてくれるか…?」
私は、黙って頷いた。
そしてゆぅくんは、
ゆっくりと話し始めた。
俺は、母さんと父親の元から
逃げ出したあと、
父親が追って来られないように
出来るだけ遠くに逃げたんだ。
そこで、母さんと二人で暮らした。
母さんは働き始めたけど、
女手一つで子供を育てるのは
すげぇ苦労したと思う。
家計簿とにらめっこしては
貯金を崩して、俺の事を
学校に通わせてくれてた。
服とか文房具も、
俺が惨めな思いをしないようにって
新しいものを買ってくれてた。
だけど、おれが中学生に
上がってからすぐに母さんは倒れた。
母さんは、病院に運ばれた。
過労だって医者に言われた。
まだその時、母さんはちゃんと
離婚してなかった。
いや、離婚出来なかったんだ。
離婚届けを渡しに会いに行く余裕も勇気も、
母さんにはなかったんだよな。
でも、病院に身元の確認されて、
父親に連絡がいっちまってさ、
父親に俺達の居場所がバレちまったんだ。
それからまた悪夢は始まった。
父親は酒臭いままいつも
病院に来ては母さんの財布から
金を抜き取っていった。
家に勝手に上がり込んで
前みたいに俺の事を
殴ったり蹴ったりした。
最低だと思ったよ。
母さんの身体は、
あいつのせいでちっとも良く
なからなかった。
そんなある日、事件は起きたんだ。
母さんが、父親に向かってキレたんだ。
「いい加減にしろ、私と夕の未来を奪わないで」ってさ。
そしたら、父親は逆ギレして、
近くにあった花瓶で母さんを殴りつけたんだ。
その時、運悪く割れた花瓶の破片が
母さんの右目に入ったんだ。
そして、母さんは右目の視力を失った。
父親は、逃げ出したよ。
離婚届けにハンコを押してさ。
だけど、それが原因で
母さんは仕事で雇ってもらえなくなった。
右目が見えないと、仕事に支障になるからって。
母さんは、しばらく悩んでいたよ。
父親と駆け落ちした私は、
実家にも戻れない…
路頭に迷うってのは、
こうゆう事を言うんだなって思ったよ。
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