誘惑蝶
No.78 2014/06/11 01:28
ハル ( deZwBe )
あ+あ-
校舎を夕日が照らしている。
いつの間にか、小学生は
家に帰ってしまったようで
校庭は静まり返っていた。
「ハル、ありがとうな…」
ゆぅくんがかすれた声で言う。
「ううん…」
「俺、変わっただろ?髪の色も明るくなったし、耳にかなりピアスつけてるし…」
「あはは、見た目は、チャラくなったかもね。背も私より高くなったし。でも、さっきも言ったけど、ゆぅくんは変わらないよ」
「そうか…?」
「うん。話してると、すごく懐かしいもん」
「ん、そっか…」
「ぶっきらぼうな所もねっ」
私がそう言うと、ゆぅくんは笑った。
「ゆぅくん、私ね、もう気にしてないよ」
「え…?」
「ゆぅくんとは、今日、久しぶりに会ったんだよ。あの時私を犯したのは、ゆぅくんじゃない。知らない人だったよ」
「えっと…ハル…?」
ゆぅくんは、私の言っている
言葉の意味がわかっていないようだった。
「おかえりなさい、ゆぅくん」
私は笑顔で言った。
「約束、守ってくれたんだね。
"また会いに行くよ"って」
「…覚えてて、くれたのか?」
「あの手紙はね、私の宝物だよ」
「待ってて、くれたのか…?」
「うんっ!」
ゆぅくんは、力強く私を抱きしめた。
そして、小さな声で言った。
「ただいま、ハル」
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