誘惑蝶
No.90 2014/06/14 03:06
ハル ( deZwBe )
あ+あ-
「ハルちゃん!」
私の名前を呼ぶ声がして、振り返る。
「お待たせ。急にごめんね」
そこには、いつも通り
優しく笑う蛍先輩がいた。
「いえ!試合、お疲れ様でした!」
「ありがとう。おかげさまで、今日は勝てたよ
「はい!蛍先輩がゴール決めたのバッチリ見ましたよ」
「うん、無事に決められてよかったよ。見られていて、かなり緊張したけどね」
先輩は照れくさそうに言った。
「どこかでゆっくり話そうか」
「はい」
私は蛍先輩の後について行く。
駅からしばらく歩くと、
広い河川に着いた。
「わぁっ…!こんな場所があったんですね」
「駅を出て学校から反対側の方向だから、こっちにはあんまり来ることもないからね」
河川の水面に夕日がうつって
キラキラと輝いている。
「綺麗…」
「ここ、俺のお気に入りの場所なんだ」
「いいですね。私もここ、好きになっちゃいそう」
二人で河川敷に座り、夕日を眺める。
風が涼しくて気持ち良い。
「ハルちゃん」
「先輩」
同時に言葉を発し、
私が蛍先輩の方を見ると
蛍先輩も私の方を見た。
「あ、すみませんっ…」
「いいよ、ハルちゃん先に話して」
「え?いいんですか?」
「うん、いいよ」
「ありがとうございます…」
何から話そうか、迷った。
とりあえず、引っ掛かってる事、
はじめから聞いていこう。
「蛍先輩、ユキナとしたんですか?」
…言ってから、後悔した。
ちょっとストレートに聞きすぎたかも…。
すると先輩は、
「うん、したよ」
と短く答えた。
「そう…ですか…。あの日、ユキナを連れていった時はびっくりしました。でも蛍先輩のおかげで色んな事が丸く収まっちゃって…ありがとうございました」
「はは、お礼を言われるような事じゃないよ」
蛍先輩は、続ける。
「…あの子はね、本当は愛されたい子なんだよ。だからいつも、心の隙間を埋めたくて、ちょっと歪んじゃうだけなんだ」
「…?」
「つまり、寂しいんだよ」
「あ…」
寂しくて、埋めたくて、
誰かの身体を求める…
私、その気持ち、知ってる…
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