禁断の恋 俺

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2018/08/30 14:52(更新日時)

なにもない部屋に、ただただ座り込む。

家具もなにもない。

どうしてこの場所に、なんの為に、考えても考えても答えは出ない。


そして俺は…普通の人とは違うみたい。





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No.2394932 (スレ作成日時)

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No.1

普通って一体なに?

No.2

この部屋に俺は何故いるんだろう。

決まった場所にしか行けない。

No.3

周りの奴等と同じように横断歩道を渡ろうとする。


だが、俺は俺だけは、何故か最後まで渡れない。


俺の目の前に壁があるような


最初は信じられなかった。

だっておかしいだろ?

No.4

俺だけが渡れないなんて


普通じゃない。


病気か?


どうしてだろう。


過去になんかあったのか。


助けてと暴れたら誰か助けてくれるんだろうか。


あり得ない。


人に何を求めても無駄だ。

そんなの痛いほど分かっているハズだろう。誰よりも。

毎日毎日俺は渡れないと分かりながらここに来て、またあの場所に戻る。


俺は、普通じゃない。

No.5

最近なにもない部屋に家具が置かれ人が住むようになった。


でもその人には俺の事が見えていない。話しかけても無視される。


いつの間にか家具も無くなり人も来なくなった。


窓から外を眺める


俺って一体なんだろう。


暑かったのにいつの間にか寒くなっている。その繰り返しなだけで、思い出す事はない。


何を忘れているのかさえも分からない。

また俺は、何時もの横断歩道に行くだろう。



No.6

無意識にまた横断歩道の前に立っている。


また来てしまった。


横断歩道の先はどうなっているんだろう。

いつかここを渡ってみたい。

「いつもここに来てる人ですよね?」

No.7

ん…?

男は振り返る


「あっやっぱりそうだ!私も貴方と一緒。あっ怪しい人じゃないですよ?勧誘とかじゃないんで!!」

勧誘?怪しい人?俺と一緒って?なんだコイツ…

「俺と一緒?」


「うん。」

「なんのはなし?」


「えっ?なんのはなしって…貴方気付いてないの?」

この女はなんだ?苦手だ。

「…」


「死んじゃってますよね?私達。」

No.8

「は?死んでる?」

でもというか、だとするとなんだか…妙に納得出来る。


そっかぁ。俺は死んでたのか。

だから俺が、話しかけてもみんな気付かないわけか。



なんか胸が軽くなったな。


「そうです。死んじゃってますよ!!」



女はニッコリ笑う。


やっと人と話せたと思ったら死んでます宣言。

ニッコリ笑うとこか?


嬉しいような悲しいような…なんだろこの気持ち。


「ほらみて?あそこ」

女は指をさす。


「ん?あれがどうした?」


「沢山の人が行き交っているでしょ?あれも私達の仲間よ?」



No.9

…あれも俺達の仲間?


って事は死んでるのか?


「あっ!あの人…私と気が合いそう!!じゃあ私、そろそろ行くね?」


「…」


女はまたニッコリ笑う。

「あっ!貴方はまだ生きている人間と死んでる人の見分ける方法分からないよね?目を凝らすと分かるよ!!じゃあまたね♪」

女は一方的に話すと走り去ってしまった。


なんだ?アイツ…





取り合えず男は、女が仲間といっていた人達を、目を凝らして見て見ることにした。



ん?少し透けているような…

もし仮にあの人らが死んでいたら、
何故俺はあそこに行けないんだ?


チッ…またモヤモヤしてきた。


てかもっと教えろよ。
気の合う奴がいたぁ!とかいって


気の合う奴?

No.10

また俺は、何もない部屋に戻る。

何もない部屋に…


ん?


部屋には大量の箱


そしてお腹のでかい女と男がごそごそと何かをしている。


目を凝らして見てみる


あぁ。生きてるな


奇妙な3人の生活が始まった。



そんな奇妙な生活が数ヶ月経った頃、俺はまた出掛けようとした
あの横断歩道に…


そしたら部屋から女の苦しむような声が聞こえてきた。

行って見ると女はうずくまって大量の汗をかいている。

そういえば、今日は男を見ていない。


俺は、電話に手を添えてみた。


だけど、やっぱりすり抜ける


俺は何故だか何回も何回も持とうとした。
手に全神経を注ぐ

ガチャ

「ん?持てた…?!」


電話の横に置いてあった紙に書かれた数字を押していく。




No.11

数分すると沢山の人が集まって来て騒がしくなったかと思ったら静かになった。


最近女の姿が見えないとおもっていたら、
ニヤニヤしてる男と、お腹の小さくなった女…それに小さな人間。いやあれは…赤ちゃんだ。


赤ちゃんが1人増えただけで、凄く五月蝿くなった。


嫌いだ。子供なんて…

最近は俺を見てニッコリ笑ってくる。

無視しても

あぅ~とか言って涎でベチョベチョになったオモチャを渡してくる。


いらねぇし、生きてる奴は今寝る時間だろ?っていうけど、キャッキャッ笑ってるだけだ。

あ…また泣き始めた。



五月蝿い…


女が起きた。



いつの間にか、アイツはグッスリ寝るようになって今度は俺の後を追いかけるようになった。

疲れるしお前の口の中でぐちょぐちょした物なんて貰いたくない。



No.12

「なんだよ?無駄に目輝かせて。」


子供は相変わらず持っている物を渡そうとする


「だから…おまっ」

子供の手が男の手にふれる。


何時ものならすり抜けるはずなのに、小さな手は男の手をぎゅっと握る

No.13

あったかい。なんてあったかいんだろう


子供は男の手の冷たさに少し、きょとんとした顔したが、またキャッキャッと笑っている。


手…こんな小さいんだな。


「お前は俺の事が怖くないのか?」


「パパんっ!!」


「…。」


それからもたまに俺はアイツと少し話すようになった。


でもまた、ここから居なくなる。


女がせっせと荷造りをしている。

また1人。


いや、アイツに追いかけられなくてすむじゃないか…。


No.14

俺はこのままずっと、時の流れを見ているだけなのだろうか。

老けることもないまま。


ずっと。


また季節が移り変わる


生きてい奴は厚手の服を着ている。

俺には分からない。

寒くもないし暑くもない。


でもあの小さな手から伝わってきた、
あの温もりは何だったんだろうか。


あれだけは、あの時だけは、感じられた。 温かくて何だか懐かしい。

男は自分の手を見つめ、子供に手を捕まれた時のことを思い出した。

俺はどんな人生を送ったんだろうか。

No.15

今日は寒いねぇ~


もう冬だねぇ。

洗濯物が乾かなくて困るわぁ~。


この会話を聞くと、冬がやって来たんだなぁとしみじみ思う。


生きていた頃の俺も、今日は寒いなぁ。なんて呟いてたんだろうか。



あっ雨だ…。


まっ俺には関係無いけど。

今日こそはなんか手掛かりが見つかればいいな。

No.16

雨が激しく降り雷も鳴っている。


誰一人歩いていない。


わざわざ男は車の通る場所に立っている。



車も雨も男の身体をすり抜ける。


男はただじっと空を見つめる。


死んだら天国か地獄に行くと思ってた。

そんなの存在しない。

花畑に三途の川?

本当にそんな所があるのなら行きたい。


もう嫌だ。



もう嫌だよ。


辛い…誰か…助けてくれ…。




No.17

男は叫んだ。

声がかすれても叫び続けた。

No.18

彼の叫びは雨音でかき消されていく。


うぅっ…


俺はなんの為に存在しているんだ。



神様はこんな姿を見て、腹抱えて笑っているのだろうか…


腹も減らない怪我もしない。


老けもしないし、暑さも寒さも感じない。



そんな俺になりたいと思う奴はいるのだろうか。


空が段々明るくなり、雨も止んできた。


…そろそろ帰るか。



No.19


あれから住人が何回か変わった。



…今回は女か。


若い女が引っ越してきた。


若い女は、とにかく独り言が多い。



ん…?俺に話しかけているのか?

いや違うな。見えて無さそうだし。独り言か?いちいち五月蝿い奴だな。


「ふぁー♪ほらっ?見て?」

女はカーテンと窓を開け、身を乗り出した。まだ少し冷たい風が吹き、女の髪がなびく。

「凄く良い眺め♪今日から1人!夜更かししても、帰りが遅くなっても怒られない!欲を言えば、もう少し新しければもっと良いんだろうけど…でも仕方ないよね。家賃安いし!!ふふっ。自由ってなんて素晴らしいんだろう!!」


…。


数時間後



「1人の夜って何だか怖い…。あれ?なんか今聞こえた?」

No.20

「絶対なんか聞こえたよね?えぇ?絶対聞こえたもん!帰りたい帰りたい帰りたい…でも今更…無理だよね…絶対。笑われる笑われちゃう…どうしょう?どうすれば?誰か助けて?」


…はよ帰れや。

てか何も聞こえ無かったんだけど。アイツには何が聞こえたんだ?逆にこえーよ。


「えっ?ほらっなんか聞こえた!!聞こえたってば!!」


女は布団にくるまる。


もしかして、同じ階のじーさんが出してる音じゃ…


「ふぁっ?怖がってる場合じゃない!!新発売のマンガ取りに行く予定だったんだぁ私ったら忘れん坊な・ん・だ・か・ら♪」


ん?


「ふんふんふーん♪」

何だ?急にあんなに怖がってたのに嬉しそうだ。


「いけない…話す人がいないから独り言が増えちゃった…怪しい人だと思われちゃう!!」

…。

No.21

これ以上、アイツを気にしたら負けだ。


今まで通り…普通に…
ん?帰ってきたか?


女は嬉しそうに帰ってきた。
靴も脱ぎ捨て、廊下に立っていた男の身体を通り、ベッドにダイブした。


「待ってました!この瞬間!!」


と嬉しそうに本を眺め、包んでいたビニールを破くと、その辺に捨て読み始めた。


…。


「はぇー。あっ騙されちゃダメだよぉ。その女は…」


ん?悶えて…る?

「えっ?まじで?!そこでそうなちゃう?」


…。

「えぇー。ここで、終わり?はぁー気になる。てか恋したい…。彼氏欲しぃ…。」


女ってこんな忙しいのか?

いや、今まで見た女はもう少しなんと言うか…いや、気にしたら負けだ。

No.24

最近どこも落ち着かない


横断歩道にいると、白くてデカイ犬が来る。


ワフッワフッいいながら俺の目の前に座る。


俺は、どんなに触り心地が良さそうでも触らねぇーよ。って言うけど、人の言葉が分からないのか、毎回くる。


(アニキ!!今日も待っててくれましたか?あざーす!どうっすか?このフワフワでシルクのような手触りのボクを、今日こそさわさわしちゃいますかね?顔埋めてもイイっすよ?)


みたいな顔しやがって。

犬をさわさわして俺になんの得があるってんだよ。そりゃ…触り心地は良さそうだけど。

それもアイツは雨だと、犬なのにレインコート着ている。まぁ、可愛いって言えば可愛いけどさ。帽子ついてる意味あるの?それ。


飼い主は(小太郎ちゃんは、ここが好きなのねぇ)とかいってさ。


犬の目線の先、明らかにおかしいだろ。
気付けよ。見えてるんだよ!アンタの犬は!!俺の事が!!


はぁ。犬語なんて分からないしな。
どいつもこいつもキラキラな目にすれば、誰にでも好かれると思いやがって。

そういば、アイツは元気かなぁ。

No.25

最近の俺は、おかしい。


どうしたんだ?


男は、行き交う車を見つめている。


ん…?あれは…


見覚えのある女が手を振って近付いてくる


「久しぶり~♪あれぇ?貴方成仏してないの?キャハハ~」

…お前もだろ。


「まっ私もだけどね?」

…。

「あれぇぇ?お口チャックしてんの?私が、あ・な・たのチャック開けてあげようか?」

「なんだよ?お口のチャックってキモい。それも勝手に身体触ってんなよ。」


「イイコト教えてあげるよ?ちょっとここだとあれだし着いて来てよ?」

No.26

「うん。分かった。」


女は手を差し出す。


「じゃあ、手繋ご?」


「んな、着いて行くわけないだろ。てか皆に見えないんだからここだっていいだろ。」


「えぇ~嘘ついたの?」


「なぁ。おっぱい当たってる。」

女は男の腕にDカップのおっぱいを押し付ける。

「ねぇ。女に恥じかかせるの?」


「…。」


「私そんなに魅力ない…かな?おっぱい大きいの嫌いなの?」


…確かにコイツはデカイな。

No.27

「ねっ?行こう!」


「…。」


「ほらっ!」


女は男の手を握り、歩き始めた。


「あっ名前!!私は内藤 満里奈 (ないとう まりな)まりって呼んで?改めてよろしくね?」



「あぁ。よろしく」

男は満里奈の顔を見ずに歩き続ける。


「貴方の名前は?」


「思い出せない。」



「ふーん。そっかぁ。たまにいるみたいだよね?あっ!着いたよ!!ここ!!」


満里奈が指を指した方向に目をやると、真新しいラブホテルが建っている。


位置的には家と横断歩道のある場所の真ん中らへんだ。


「…。」


「ほらっ!!早く行こう?」


「あぁ。」


中に入る。

なんとも言えない雰囲気を醸し出している。



「ねぇ?貴方は何処がいい?ここなんてどう?」

「いいよ、そこで。」

見ないで適当に答える。

No.28



「じゃあ…ここね!」


細い廊下を通り、部屋に入る。

大きなベッドにカラオケ、オモチャ色々な物が置いてある。

「ねぇ。貴方の事なんて呼べばいいかな?」

なんで俺は、自らの意思で他の場所に行こうと思いつかなかったんだろう。
いつもいつも、家と横断歩道を往き来するだけで…

「ねぇってば!!聞いてる?」


「あぁ、わりぃ。なに?」

「だからなんて呼べばいい?」


「好きなように呼べよ。」

「じゃあ…たっくんね!」

「なんでたっくん?」

「えぇ?テキトー。」

「ふーん。そっかぁ。まぁいいよ。好きに呼べよ。」

No.29

「ねぇ…たっくん?」


男の横に座る。

「たっくんって貧乳派なの?私のダメかな?」


「そんな事ない。」


「じゃあ…なんでそんなに、興味無さそうなの?」


男は満里奈にキスをすると、白くてすべすべな太ももに手を添え撫で始めた。

「これでも興味無さそうに見える?」

男は満里奈の目をじっと見つめる。

「たっ…たっくん?」



「なぁ、俺もう止められなくなるけど、本当に最後までしていいの?」

No.30

「うっうん。」


「まりちゃんどうしたの?なんかさっきまでの勢いなくない?」


「そんな事ない…よ?」


「ふーん。そっかぁ。」


男は満里奈にキスをすると、舌を滑り込ませ、ねっとりと舌を絡み合わせる。

満里奈も一生懸命男の舌に絡み合わせた。


「んんっ…。」

静かな部屋に満里奈の甘い声が響く。


「さっきと表情全然違うな。」


男は満里奈の耳元で囁くとパクっと耳たぶを甘噛みする。

「そっそうかな…?」


「あぁ。全然違う。早くまりの中に入れたい。」

満里奈の首筋に舌を這わせながら髪を撫でる。


「んんっ。たっくん…。」

No.31

「今ってどんな気分?」


「えっ?どんな気分って…?」

「ドキドキするとか嬉しいとかってこと。」


「うーん。そうだね。緊張するけどワクワクしているかな?」


ふふっと小悪魔的な表情を浮かべると満里奈は男を押し倒す。


「たっくんは今どんな気持ち?早く入れたいとか?」


満里奈は男の服の中に手を潜りこませ、小さくて細い指でお腹や脇に這わせる。




No.33




「ある日、俺の目の前に若い男女がいた。男は周りを見渡すと女にキスをした。女は恥ずかしいって小さい声で呟いた。男は、俺だって恥ずかしいけど、今すっごく可愛い顔してたからつい…と言った。その男の耳は真っ赤になっている。」


「えっ?うん…。それで?」

満里奈は突然の話にびっくりしながらも、
耳を傾けている。

「女が笑っているような、はたまた泣きそうな表情を浮かべながら男を抱き締めた。」


「嬉しかったんだね。彼女さん」

「嬉しい?」

「嬉しいよ!!いいなぁ。その彼女さんが羨ましい。」

満里奈の長い髪が男の顔に触れると、男は満里奈をどかし座る。

「でも俺、お前とキスしても恥ずかしくもないし、嬉しくもない。なんの感情も湧いてこないんだけど?なんで?」

No.34

「えっ…?何にも?まだほら…キスしかしてないし、緊張してるだけだよ?きっと…それとも童貞?それなら大丈夫。私がリードするしね?」


満里奈の口調は少し焦っているのか、早口で、震えている。


「お前って確かに容姿は完璧だよな。容姿は。でもさ、なんか足りないんだよね。中身が空っぽっていうか、こんなこと男が言うのはカッコ悪いけど、俺は…、俺はさ、人を好きになって、胸の高鳴りや慈しむ感情ってどんなものか知りたいんだよね。お前を利用すれば、少しは知れるかなって思ったけど、俺の何かがお前じゃないって言ってんだよね。利用しようとして、ごめん…」

No.35

「慈しむ?はっ??アハハッ!!聖人になりたいの?私達死んでるの!分かってる?し・ん・で・る・の!!てかなに?私がアンタに好かれたいとでも思ってた?全然違うから。アンタで性欲処理しようと思っただけだからね。」

「あぁ。そうなのか。でもごめん。」


「そういえば、アンタまだ、憑依したとき無いでしょ?楽しいよ?人の人生ぐちゃぐちゃにするの。お前が見たカップルだって、自分の相手よかスペックの高い人にアプローチされたら、すぐ乗り換えるよ?だからさぁ~あんまり夢見ない方がいいよ?世の中、金か容姿これ基本だから。」




No.36

満里奈の高笑いが部屋に響き渡たる。


「あっ!!私達死んでるから、もう金も必要ないか~!アハハ!!…でもさ、感情がないなんてただの強がりか、自分の心とちゃんと向き合って無いだけだと思うけど。だって私に謝ったでしょ?申し訳ないと思ってさ。」


「まぁ。確かに…」


「でしょ?だからきっと、大丈夫。」



「あぁ。ありがとう。」


「強がってたけど私ね、ずっーと、この生活が続くのかなぁ。もう嫌だ、寂しい。辛い。叫んで叫びまくったけど、なにもかわらなくて…もう嫌だ…いつまで続くのかな。」

さっきまでの勢いがなくなりうつむいている。


「…俺もこんな生活が嫌で叫んだ。」

満里奈は顔をあげ男の肩掴む。

「叫んだの?感情が無いなんて嘘じゃん!!慈しむ…あぁ。貴方は恋がしたいの?私とキスしてもなんの感情も沸かないのは、私の事が好きじゃないから…。そう!!それだけ!好きな人を見つければいい!!もしかして人を好きになったときないの?」

満里奈は男をガクガクと揺する。


「人を好きになる…確かにないかも。」

満里奈は大きなため息をついた。

「でも恋愛よか、どうやってこの生活に終止符を打つかの方がよっぽど大切だと思うんだけどなぁ。ってなんで私にこんな事言わせんのよ。成仏しろ!成仏!!それか私を満足させろ!!抱き締めろ!!…お願い…。」

No.37

「えっ?」



「お願い…一回だけ…一回だけ抱き締めて?」


「えっ?あぁ。俺でいいの?」


「うん。お願い。でね…欲を言うと、頭もなでなでして欲しいの…」


満里奈は頬を赤くしながら腕を広げ男が、抱き締めるのを待っている。


「え?えぇっと。本当に俺で?」


「早くしなさいよっ!!」


「あぁ。うん。」


男は満里奈を優しく抱き締め頭を撫でる。

「こう?これでいい?」

「うん。ありがとう。あれ?なんか私…」


満里奈はまばゆい光に包まれた。


「私…成仏するのかも。私ね…好きになった人に抱き締めてもらって……。」

No.38

「えっ?光ってる?泣いてる?大丈夫?ごめん…やっぱり嫌だった?」



「嫌じゃない。嬉しいの。私…父親に処女奪われて生きている間ずっーと、犯されて続けてたの。だから、だからね、今日抱き締めて貰えて本当に……本当に嬉しかった。ずっと幸せな人が憎くて……でもそんな自分が嫌だし惨めで辛かった…でも…たっくんのお陰で、私…人の温もりを知ることが出来た。本では分からない温もりを…。あっ!!本当の名前分かったら大きな声で叫んで?じゃあ…先に行ってるね?」




「うっ!!」


満里奈はもっと強く輝くと消えてしまった。

…消えた。

なんか心臓らへんがズキッとする。
心臓は動いてないから病気の可能性はない。


と言うことは、これが…寂しいという感情か…?

No.39

多分そうだ…。


あれからまた、朝がきて夜がきていつも通り横断歩道にいく。



「おーい♪」


男の目の前に見覚えのある女が手を振っている。


「ん?もしかして…」


「えぇっと。なんか成仏出来なかったみたい。てへぺろっ」

満里奈は可愛く見せたいのか舌を出している。


「…。」


「私ね…やっぱり可愛いウェディングドレス着て、新婦となる私は、新郎となるあなたを夫とし、良いときも悪いときも、富めるときも貧しきときも、病めるときも健やかなるときも、死がふたりを分かつまで、愛し慈しみ貞節を守ることをここに誓います。って牧師さんと神様に誓ってそれでイケメンの旦那様とラブラブな結婚生活してみたいなぁ。って思ったら成仏出来なかったみたいなの?キャハハハ」


部屋に住んでる女もだしコイツもそうだけど、女は何故こうも喋ると止まらなくなるんだ?


「だからもう少し、たっくんの幽霊生活に付き合ってあげるし、色々と満里奈が伝授してあ・げ・る♪」


やっぱり関わらない方が良かったな。
面倒くさい。


「あれれぇ~?今なんか面倒くさいなぁ。関わらなきゃ良かったななんて思ってる?そんなわけないよね?私可愛いし!あっ私たっくん容姿もいいし、お嫁さんになっても全然いいよ?そしたら…すぐ成仏しちゃう。どうしよう。困ったなぁ…」


はぁ…。一人がいい。

No.40

「たっくんが長い長い静寂に包まれた夜をとてつもなく寂しく感じたら、何時でも私は駆けつけるよ?」


ニッコリと笑う満里奈。


こうやって笑うとホントに可愛い。いや笑わなくても可愛いが、女が笑うと、場が和やかな雰囲気をだす。なんでだろうな。


No.41

俺が笑ってもこんな雰囲気は出せない。


凄いな。

羨ましい。


「ねぇ?無視?あっそれよか、人に憑依す
る仕方教えてあげる♪知りたいでしょ?」


フフっと無邪気な表情を浮かべ笑う。

「憑依する仕方?」

「見極めるの。自分と相手の相性を。そしたら右肩に手を添え自分が相手の中に入ることを強くイメージする。それだけ。簡単でしょ?あっ黒いオーラを出してる人は止めた方がいいよ?自分まで染まってしまう。それだけは気をつけてね。」


No.42

その方法を使えばきっと、この横断歩道の先に行けるだろう。


ずっと行けなかった場所に。



果たしてそれでいいのか?


見れたら満足するだろうか?


…答えは分かってる。


きっと満足なんかしない。


この世を全て知ることが出来ても出来ないだろう。

もう少しきっともう少しで行ける。


それまで、楽しみにしておこう。



「ねぇ?私の存在忘れてるでしょ?すぐ一人の世界つくるんだから。」

No.44

「あぁ。お前まだ居たの?」


「居たの?ってずっーと居たわよ!!たっくんの隣に!!もう…?あれ?爽やかイケメンだ!!じゃあまたね?」


「…。」


女って…


でも俺って…前に進もうと努力してるって自分に言い聞かせて満足してるだけだよな。前になんて一歩も進んでないのに。


俺も…前に進まないと…。

No.45

でもどうすれば?


分からない。

やはり憑依してみるか?



目の前を歩く男を見る。


…やって見よう。



男は男の右肩に手を添えイメージする。


「うわぁっ!!」


…すっ吸い込まれた??えぇっ?
吸い込まれてない!失敗したか…でも後ろにくっついているよな?まぁいいか。

なんというか凄いなぁ。


というか、どこに向かっているんだ?


ん?あれは彼女か?こっちに向かって手を振っている。


女は手を振るのが好きなのか?いや、まてよ?もしかして今からデートか?

俺もデートに付き合わなきゃいけないのか?!離れたい。離れる方法は?…聞いてなかった…聞いてなかったよな??

No.46

やっちまった。


絶対デートだな。


恋人繋ぎしやがって。

まさかあれはないよな?流石に…


『ねぇ?今日どこ行く?』


『うーん。どこでもいい。』


俺は帰りたい。


『もうっ!!何時もそれじゃん?今日はりょー君が決めてよ!』


『えぇ…。』


もう帰ろよ。というか、離れたい。


俺の位置…さりげなく彼氏よか近いよな。それも恋人って遠くで見る分には無害だが、近すぎると有害でしかないよな。


こいつらは2人の世界だと思ってるんだろが、残念だが、3人だ。3人の世界だ。


今はっきり満里奈気持ちが少し分かった。破局させたい気持ちを…




No.47

『ねぇ?あそこのクレープ屋さん美味しそうだよ?食べない?』


『あぁ俺…さっきご飯食べて来たんだよね。』


『そうなの?じゃあ今度食べよう?』


…。

今度は3人の目の前に小さなペットショップが見えてきた。


『あっ!!見てぇ?可愛い~♪いつか犬飼いたいね。』


『そうだね。』

『飼うならどの仔がいい?』


『うーん。あれかな?』

彼氏はピョンピョン跳ねている犬に指を指す。


…まぁ。確かに可愛いな。でも俺が飼うならあの白い奴がいいな。

けっ無防備な格好しやがって。

アイツは飼い主以外にもデレデレするな。
番犬に使えない。犬としていいのか?


あっ…アイツはボール遊び…

いけねぇ。すっかり惑わされていた。


ってここどこだ?

No.48

…何時も見ている景色とは違う。

そりゃそうだ。


たわいもない会話をしているとあっという間に大型ショッピングモールに着いた。


『やっぱ休日って人多いねぇ。』


『そうだな。』


…ん?

あいつも…。あいつも?!あそこにも…?
案外俺みたいな奴沢山いるんだな。

あんまし気にして人なんか見てなかったけど…


えっ?アイツ血垂れてんじゃん。大丈夫なのか?

さっきまで死んだ魚のような目をしていた彼氏が、何かを思い付いたのか、満面の笑みで彼女を見た。

『なぁ俺さぁ、こういう人多いとこ来ると、憑かれんだよなぁ。あはは漢字違い。なんつって。疲れるんだよなぁ。』

『あはは…』


そりゃな、俺に憑かれてんだもん。
でもそのギャグ…可哀想だが、笑えねぇ。彼女さんの顔、残念な感じになっちゃったわ。

No.49

やっと活きのいい魚の目になって、ドヤ顔も決まったのになぁ。


ほらっ大丈夫。彼女240個の種類から選べるアイス屋さんに向かって行ったよ。ほら完璧な笑顔でおいでおいでって呼んでるよ。

さっきのことはもう無かったことになったよ?良かったな。泣くなよ?


『…。』


あっまた目が死んでる。

まぁそういう時もあるよな。

No.50

あれから数時間後…


映画見に来たんだよなぁ?

服を見に来たんじゃないよな?


それも同じような柄だし。


あっアイツ…もっと死んだ魚のような目になってる。

『やっと決まったぁ。ごめんね?待たせちゃって。』


『全然待ってないよ。大丈夫。良いの見つかってよかったね。』


結局一番最初に手にした奴ね。
大丈夫とか言いながらもう目があの世にいってるわ。

『あっ喉渇いた?あそこのカフェ行かない?』


『うん。』

もう一度言うけど映画見に来たんだよな?

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