鞘なし侍
この刀を鞘に納めれる日はくるのであろうか。
いく度となく戦場で振り回し、修羅場をくぐり抜けてきたが、
もうキレ味も悪くなってきた。
新しい刀に変えれば済む問題だが、随分と長い間共に戦ってきたのだ、
もはや手離すこともできまい。
最後の一振りまでこいつと共にする、
終わる時はこいつと共に。
刃こぼれだらけで切れずとも。
そうだ、切れないのであれば、叩けばよいではないか、
この刀は相手を斬るものではない、
叩くものだと。
叩いてしんずればよいではないか。
よくいうではないか、
すけさん、かくさん、こやつらめを叩き切っておしまいなさい!
は!ご隠居さまっ!
と。
これを機会に無駄な殺生などやめて
こらしめるぐらいにすればよい。
まさに災い転じて吉となす、じゃ。
まあそういうことでおさめておこう。
おさめるものはないけどね(*´-`)
そう、
ワシは鞘を持たない鞘なし侍。
今日も最高の鞘を求めて旅を続ける。
いつしか立派な鞘を手に入れたい。
あの、
抜刀時の鞘走る時の刀が解き放たれる感触、
納める時の刀が鞘にこすれる時の感触、
そして、最後のキンッ。金打(きんちょう)、
味わいたい、いつ果てるかわからぬこの命、
味わいたい、
金打をムダにキンキンしてみたい。
欲しい、鞘が欲しい、刀をおさめる鞘がほしい、
鞘という納めるところがあって初めて、刀は落ち着くというものだ、
多くの血を浴び脂まみれになりながら振り続け、
ようやく鞘に納まることができる。
今のこの刀はどうじゃ、
血と脂を浴び続け、休める場所もなく、
シミになり錆びてきておる。
鞘という支えがあるからこそ、刀が活きていくというものではないか。
鞘走らせれば刀は音速のごとし。
刀にも魂があり、鞘にこもることでその魂は鎮まることができる。
この友に安らぎを。
そしてワシに金打を。
(金打したい、キンキンキンキン金打したい、)
(もうどんな鞘でもよいから…)
- 投稿制限
- ハンドル名必須
注目の話題
おとなチャンネル 板一覧