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誘惑蝶

No.124 14/06/25 11:58
ハル ( deZwBe )
あ+あ-

日が暮れて、屋台の明かりが
じんわりと辺りを照らし始める。

「そろそろ移動しましょうか」

「そうだね」

私は蛍先輩とある場所に向かった。

「…すごいな。大通りを抜けてちょっと歩くと山があるんだもんな」

「この町もどちらかと言えば田舎ですからね。この階段を上がると、小さな神社があるんです」

「へぇ〜。詳しいんだねぇ」

「昔、夏祭りの夜に山の中で遊んでたんです。小さな山だし、参道もちゃんとしてるから迷わないんですよ」

ガサガサ…

「でも、ここに抜け道があって…。ちょっと、細い道ですけど、ここを抜けると…」

開けた場所に出ると、
蛍先輩は目の前に広がる景色に
感動したようだった。

「綺麗だ…」

ぽつりと、感想を漏らす。

「ふふ、綺麗ですよね。お祭りの様子もここからよく見えるんですよ。町の明かりが、すごくキラキラして…。ここ、私の秘密の場所なんです」

「うん、すげーいい所だね。連れて来てくれてありがとう」

「前に、蛍先輩がお気に入りの場所だっていう河川に連れていってくれたから、私も蛍先輩をここに連れて行ってあげたいなって思って…」

「うん、俺もこの場所、すごく気に入っちゃった」

そう言うと、蛍先輩は
私の頬に触れる。

蛍先輩の顔が近付いてきて、
私は目を閉じてその行為を受け入れる。

唇が重なる。

河川の時と同じ
長い長い、フレンチキス。

唇が離れる。
見つめ合う、二人。

…今日こそ、聞かなきゃ。
私は、蛍先輩にずっと
気になっていた事を聞いた。

「…蛍先輩」

「ん?」

「ユキナのこと、フッたんですか?」

彼女の事を聞くつもりが、
ストレートに聞けず
ユキナの事を聞いてしまった。

確かに、これも気になってたけど…
私の意気地無し…

「うん、フッたよ。ユキナちゃん、あれから身体を求める前に告白してきたんだ」

「そうなんですか…」

「俺は、ちゃんと気持ちを向けてくれる子は、抱けない。俺が同じ気持ちを返せないから、ね」

…じゃあ、私は?

言葉が、喉の奥で突っ掛かる。
ここまできているのに、
声になって出てきてくれない。

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