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誘惑蝶

No.132 14/06/27 12:27
ハル ( deZwBe )
あ+あ-

蛍先輩と見上げた花火は、
とても綺麗で、儚く感じた。

すごく特別な時間なのに、
幸せに浸りきれない。

私はこの前、蛍先輩が私に言った
『好き』の意味をずっと考えていた。

あの言葉は、やっぱり
幻だったのだろうか。

聞き間違い?
そんな訳、ないよね…。

私と蛍先輩の関係は、
一体何なんだろう?

付き合ってもいない、
セフレとも違うような、
先輩後輩、友達、親友…

どのカテゴリーにも入らない、
中途半端で、生温い関係。

蛍先輩の気持ちが、
わからない…。

もどかしいけど、居心地の良い関係。
甘酸っぱい、だけど、
そんな時間が愛おしい。

「好き…」

私はぽつり、呟いた。

花火に掻き消されるように
わざと、小さな声で。

花火に消された言葉を、
ちゃんと言える日は来るのかな…。

「これで、フィナーレかな」

花火が、祭りが、終わる…

最後、一際大きな花火が
夜空に打ち上がった。

キラキラと、光の粒が
闇夜に消えていく。

「花火、終わっちゃったね」

「そうですね」

「ハルちゃん、戻ろうか」

「はい…」

蛍先輩に手を引かれ、
山道を下りる。

ずっと立ちっぱなしで
花火を見てたせいかな…
だんだん足が痛くなってきた。

「ハルちゃん、大丈夫?足、痛いんでしょ?」

「だ、大丈夫ですっ」

「神社で少し休んで行こうか」

「…すみません」

「いいよ、謝らないで。慣れない下駄で擦れちゃったんだね」

隠そうとしても蛍先輩には、
すぐに気付かれちゃう。

二人で神社の石畳に腰掛けた。

「お祭りだけど、この神社には誰も来ないんだね」

「本殿は下にある大きな社なんです。ここは摂社なんで、あまり人も来ないんですよ」

「へぇ〜。山の上に本殿があるのかと思ってたよ」

「そうですね。神体山の上に本殿がある神社って多いですけど、神社よって建物の配置が違いますからね。それに、山の下に本殿があった方が参拝しやすいから、いいですよね」

「ハルちゃん、詳しいんだねぇ」

「小さい頃からお祭りとか初詣に毎年来てるから、この神社の宮司さんと仲良しで、色々教えてもらったんです」

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