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黒百合女学院 恋の時間(小愛的故事) 確定清書版

No.16 2019/12/10 05:19
青木あかね ( 38 ♀ sq6JBe )
あ+あ-

≫15

これは暗転する前の運命の岐路である。



自宅離れでクリスマスコンサートの賛美歌の練習を、合唱部の皆としていた藍子は、防音室から出てきて、妹の緑が学校からかけてきた電話に、やっと気付く。

「お待たせしました。赤井にございます」

「お姉ちゃん?。あのね、わたしね、居残り補習させられちゃうの。だから、あおいを迎えに行けなくなっちゃった。お姉ちゃん、代わりに行ってくれない?。あのネチネチしつこい先生だから、先生が自己満足するまで帰れそうにないの」

「ほらぁ、あなた勉強しないからよ。しょうがないわね、行ってあげる。でも緑、どうせならその先生の養子にでもなっちゃいなさい。緑でも勉強出来る子になれるかもよ?」

「お姉ちゃんっ💢かわいい妹になんて事を!💢」

「ふふふ、冗談よ。怒らない怒らない。それじゃあ、あおいの幼稚部のお迎え、わたしが代わりに行くから、居残り頑張りなさいね」



電話を切ると藍子は、賛美歌の練習をさっきまで一緒に練習していた仲良しの皆に、深々と頭を下げる。

「皆さんゴメンね。お昼ご飯のお誘い致しましたの、さっきの今ですのに、急遽、妹のあおいを幼稚部にお迎えしなければならなくなりましたの。今度またの機会にお誘いさせて下さいましね」

藍子はそう言うと皆を見送り、自室に戻り

『人生最後に袖を通すのだ』

とも知らずに、黒百合女学院高等部の制服に着替える。

そして、今朝ママに言われた通りに、ママのお店に

「緑の代わりに自分があおいを迎えに行くこと」

を伝え、今朝までお泊りに来ていた、あおいの仲良しの美佐の多忙なママが、美佐を幼稚部に迎えに行けるのか、自分が美佐もお迎えするのか、確認の電話を入れる。

そうして支度を済ませた藍子は、走って学校に向かう。あおいの通う幼稚部のクリスマス会が終わるまで、もう時間がない。

黒百合女学院山手校の総校門をくぐり、初等部の校門をくぐると、幼稚部と初等部の間にある初等部グランド、そのグランドの時計台が見える。

間に合ったのを確認した藍子は、やっと走るのをやめ、幼稚部と初等部での合同クリスマス会が行われている、初等部体育館に歩く。



初等部体育館からは、こどもたちの賛美歌の歌声が漏れている。クリスマス会を楽しんだこどものたちの、しあわせいっぱいな歌声が。



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