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黒百合女学院 恋の時間(小愛的故事) 確定清書版

No.9 2019/12/02 04:42
青木あかね ( 38 ♀ sq6JBe )
あ+あ-

≫5

《あおい七歳 恋の始まり・・・の時間》

京都市内のここは、とある産婦人科病院。

さっきまでの土砂降りも今は一転。快晴の青空に白い月が浮かんでいる。離れた場所からここを眺める人々の、その角度によっては病院上空に虹があったかも知れない。



桃子の出産。第一子の長女の藍子・長男の貴志・次女の緑に続いてこの日に産まれそうなのは・・・



すでに三人の子の父なのに、七人の孫の祖父なのに、出産に慣れないと言うよりは、産科に男の居場所はなく、落ち着かない二人の男。

桃子の夫である幸一郎とその幸一郎の父、つまり赤ちゃんの祖父の晋太郎は、外のパーキングで缶コーヒー片手に、煙草を燻らせている。

六人の孫娘が産まれたときは、いや、女の子が産まれた日は決まって雨降り。近年はずっと、そんな歴史の赤井家。そのため、赤井家二十九代当主の晋太郎の

『女の子が産まれるはず』の予感は的中。

「晋太郎さん幸一郎くん!産まれたぞ!女の子だ」

そう叫びながら来たのは、黄大泉こと赤井晋太郎の、黄家八極拳の同門の師兄弟で、将来、赤ちゃんの師になる渡忠人先生だ。



明治は初期に旧武家の赤井家に婿入りした、台湾人の黄響鐘。その苗字が、黄家八極拳の宗家の黄四海と同じなのは、たまたま偶然だが、台湾では黄大泉の武名で割と有名な、祖父の赤井晋太郎は

明治初期の日台混血時の赤井家当主であり、再興のお姫様の、赤井葵から、また赤ちゃん誕生に合わせるかのような、青空に浮かぶ白い月から

赤ちゃんの本名を赤井あおい、武名を黄蒼月と、名付けたのである。






その後いつしか時は流れ、あおいは、青空の月のように色白な、これぞ裕福なる末娘な、蝶よ花よ!と甘やかされたお嬢様に育っていた。



そんなクリスマス間近、時空間は



『わたしの夢
 黒百合女学院初等部一年一組 赤井あおい

 わたしは藍子お姉ちゃんが大好きだった、藍子お姉ちゃんのお兄ちゃん。真鍋の瞬お兄ちゃんが大好きです。

 お兄ちゃんはいつもいつも、わたしをお風呂に入れてくれて、髪を結ってくれて、勉強を教えてくれて、遊んでくれます。わたしはそんな優しいお兄ちゃんが大好きです。

 だからわたしは、お兄ちゃんの可愛いお嫁さんになって、美味しい料理をたくさん作ってあげたいです・・・』

時空間は、この作文の半年前のクリスマスに遡るのである。

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