【落語】
No.7 2025/03/27 11:31
匿名さん6 あ+あ-
【落語 文七元結 下】
長屋への帰り道。大川にかかる吾妻橋に差し掛かったところで橋から川に飛び込もうとしている男に遭う。
長兵衛
「何してやがる。よさねえか。」
男
「いいえ、死ななけりゃならないわけがあるんです。どうか、助けると思って死なせてください。」
長兵衛
「そんな器用な真似ができるかい。よしやがれ。」
今にも死のうという町人風の男を欄干から引きずり下ろす。
長兵衛
「死ななけりゃならないわけがるというのなら、そのわけを話してみな。」
この男、日本橋田所町の鼈甲問屋、近江屋の手代で名前を文七という。得意先へ集金に行き代金の五十両を受け取ったが、その帰りにスリに遭い、五十両をそっくり盗られてしまった。
手代の身分で、五十両もの大金を穴埋めできるわけがない。かくなるうえは死んで主人にお詫びをするしかないと思った次第。
これを聞いた長兵衛は散々迷った挙句
長兵衛
「ええい、もうどうにでもなりやがれ」
と佐野槌から借りた50両をそっくりそのまま文七に渡してしまう。
長兵衛
「そのかわりな、俺の娘のお久はもう帰ってこないから、少しでもありがたいと思うなら、佐野槌にいる娘が悪い病気にならないように観音様でも仏様でも祈っていてくれ」
そう言い放つと長兵衛は走り去ってしまう。ところが文七が五十両を大事に抱いて近江屋へ帰ると、なんと掏られたと思っていた五十両が届いているではないか。文七の勘違いで盗まれたのではなく、うっかり得意先へ忘れてきていたのだ。
文七は吾妻橋での出来事を主人に話した。主人はその話にいたく胸を打たれた。
主人
「その人は本物の江戸っ子。手がかりは何かないか。」
そこで文七は、吉原に身売りをしたお久という娘のことを思い出す。これが手がかりとなって、文七と主人は、長兵衛の居所を探し当てる。
かくして五十両は長兵衛の手に戻り、お久は近江屋の財力で身請けされた。その後文七とお久は夫婦となり麹町に元結屋を開いた。店は大繁盛し明治維新の頃まで続いたという。
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