禁断の恋

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2016/09/29 11:48(更新日時)

私はここに今まであった出来事を綴ろうと思う。



こんな不思議な出逢いなんて、なかなかないだろうから。

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No.2368203 (スレ作成日時)

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No.1

最初に伝えておこうと思います。



今、私達は幸せです。


No.2

ねっ?そうでしょ?優希(ゆうき)


あっ…!まだ、自己紹介してなかったね。私は田中 美優(たなか みゆ)そして、優希は私の旦那様。


これは私達が出逢って結ばれるまでのお話。







No.3

あっそうだ!!


その前にあなたに聞きたい事があるの。


見えるものだけが、この世に存在していると思う?


あなたは、二人だけの秘密とか…そういうの好き?


えっ?なんでそう言うこと聞くかって?

なんとなくね。


じゃあ…そろそろ私達の出逢いを書いていこうと思う。


出逢いは突然だった。そう…人生で初めて一人暮らしを始めた頃まで遡る。

No.4

ずっとしたかった仕事が想像以上に辛いし、
お金を貰うということはとても大変。だからこそお金は大切にしないといけないことに気付いた。


それから、一人暮らしは寂しい。
お母さんの長電話の音や朝早くから聞こえる野菜を切る音。


お父さんの笑えないダジャレ。


それに3つ下の存在感の薄い弟。
私はいつも、驚かされ叫んでた。弟はその気はなかったようだけど…

そしてもう一人。弟とは全く真逆の4つ下の妹。
あの子が静かにしていたら逆に心配になるくらずっとしゃべっている。


そんな賑やかな環境からがらりと変わったのも一つの原因か、私は男を取っ替え引っ替えしていた。

No.6


数年たったある日、やっと私はそんな生活にピリオドを打つことができた。


やっぱり愛がない付き合いは違和感があるし、そもそも相手に悪い。

運命の相手に出逢うまで、恋愛を封印し、仕事に精を出すことにした。


そうしているうちに、みるみる寂しいという感情は薄くなっていったし、上司からは認められ、もっとやりがいのある仕事を任せられるようにもなった。


だから私は朝早くから夜遅くまで頑張った。


あの日も…

No.7

ガチャガチャ カチャン


キィィー


バタンッ


「ただいまぁー。はぁ。疲れたぁ。」

美優は帰ってきてすぐ、風呂場に向かいシャワーを浴びた。


「ふぁ~。今日も一日終わったぁ。」



ジャァァァァ


ガタンッ

No.8

洗面所から何かが落ちた音がした。

「…えっ?なんか落ちた?なに…?まっいっか」

洗い終わると、パンツだけを身につけ、そのまま冷蔵庫に向かい、綺麗に並べられているチューハイを迷うことなく一つ手に取った。



「今日はマンゴーにしよう。ふふっこの瞬間が好き!!」

ぷしゅ

美優はチューハイを開ける

「んぐ。ゴクゴクゴクッぷはぁぁぁ。やっぱこれだよね!これ!!これ飲まないと一日が終わった気がしないよね!」


半分くらい飲み終わると、美優は部屋を見渡し、少し寂しそうな顔した。


「やっぱり…一人は寂しいよね。」


部屋は冷蔵庫の稼働音とクーラーの音しか聞こえない。


バンッ

No.10

静かな部屋に突然、大きな音が響き渡った。


「えっ??なっ…今度はなにが落ちたの…?」



音のする方を見ると、靴箱の上に置かれていた写真たてが倒れている。

「なんだ…びっくりしたぁ。知らない間にぶつかってたかな?」

No.11

ぼふっ


美優はふわふわのソファーに座るとテレビをつけた。


…今日は楽しそうなやつないなぁ。


少し経つと酔いが回ってきたせいか、美優はそのままソファーの上で眠りに落ちた。


数時間がたった頃



カンッ カンッ カンッ


ズルッズルッ



んんっ…?

なんの音?



カン カンッ カン

ズルッズルッ

No.12

ん~。腰いたい…


よろよろとベットにうつり、また寝ようと抱き枕を挟んだその瞬間、また何かを引きずるような音が聞こえる。


もう…この音なに?

隣の人?それとも…ゆっ幽霊?


スマホの画面を見る。

3時30分…?
幽霊がこんな時間に?

じゃあ違うか。やっぱり隣のお爺ちゃん?
もう明日も早いのに…



No.13

美優は目を閉じた。



ズルッ ズルッ


でも…おかしいよね?こんな時間だよ?


なんか…だんだん私の部屋に近付いてる気がするし。



美優の住んでいるアパートは古く、2階には4部屋あり、美優は一番奥の角部屋に住んでいる。

気のせいかな?気のせいなんかじゃないよね?やっぱり近付いてきてるよ…

美優は耳をすませる。


何かを引きずっているような音が、美優の部屋の前で止まった。

とっとまった?

また外は静寂に包まれた。

幻聴だったのかなぁ?最近疲れてるしね…

再び寝ようと、体制を変えた瞬間


ガチャガチャガチャガチャ


えっ?こっ今度は、なんなの?もういや…

美優の部屋のドアノブであろうものが激しくまわされ始めた。


ガチャガチャガチャ

No.14

美優は一気に目が覚め恐怖のあまり身体を丸めると、手で耳を押さえ、心の中でお経を唱えた始めた。

でっでも(そんなのきかねぇーよ。)って言われたとかなんとか……って聞いた時あるし、誰か誰か助けてよぉ。
そうだ!!お祖父ちゃん助けて!!!

心の中で亡くなったお祖父ちゃんに助けを求めた。

お願い。お願いします…


ボソッ ボソッボソッボソッボソッ


こっ今度は、なんか話してるよぉ。
もう無理っ無理無理無理。


ガチャン

へ?!


キィィー


ひっ開いたぁぁぁ?!

美優は叫びそうになったが、口を手で押さえなんとか声を殺した。

No.15

私…カギ閉め忘れてた?!


バタンッ


トンッ ズルッ トンッ ズルッ


やばいこっちに向かってきてる…どっどうすればいいの?!

そっそうだ!!

美優は大きく深呼吸をすると、大きな声で叫んだ。

「こっ…ここの家賃は私が払ってるんだ!!出てけ!!」


ピタッと足音は止まった。


…?止まった…びっくりして逃げたかな?


ふぅ…。でも、まだ心臓がドクンドクン脈うってる…

それも、あんな大きな声だしたの何年ぶりだろ…

まぁよかった。

安心したらオシッコしたくなってきたなぁ…
どうしよう…

No.16

うーん。ダメだ…もっと行きたくなってきたな…


そっと目を開け、周りを見渡した。

大丈夫そうかな?

静かに床に足をつける。

…ん?なんか凄い冷たい。
えっ…どうして?こんなに冷たいもんだっけ?

美優は、恐る恐る足元を見た。

No.17

「いてーよ。」

…えっ?


「なに見てんだよ。早くその足どけろよ。」

「えっ?ゆっ幽霊さんですか?!呪われる?!どっどうしよ!!だっだれかぁ!!たすけて!!」



「ぐちぐちうるせーよ。早く引っ越せよ。ここ、俺の家だし」


美優は驚きながらも踏んづけている。

「でっでも私が家賃を…」


「ごちゃごちゃうるせーな。てかその前に、その臭い足どけろよ。てかなんで幽霊見てんのに、そんな冷静なん?出てけよ。」


「だってここは…」


「仕方ないじゃん?行ける場所かぎられてんだから…」

No.18

「えっ?幽霊は何処でも行けるんじゃないの?」


「…俺は行けない。てか、その足どかせよ。」


「あぁごめんごめん。でもなんでこんなところに横になってるの?」


「よこぉ?横だと?俺は寝ようとしてたんだ。」


No.20

「あっそろそろ朝だからか!!」

「だからさ、それよか足どけろ。」


「えっ?あーごめんなさい。私は、田中 美優。よろしくね?」


美優はベットの上に足を乗せた。


幽霊は身体を起こし、胡座をかいて美優を見つめた。


「えっ?私…あとなんかしましたか?」

「…してない。」

「よかったぁ。貴方のお名前は?あっ男の人ですよね?」


「名前が…思い出せない。それに…なんで俺はここにいるのかとか、決まった場所にしかいけないとか…あと、殆どの奴に話しかけても反応してくれない。ごくたまに、目が合う奴がいるけど、あからさまに俺を避けるだよな。」


「そっか…大変なんだね。幽霊ってさ。」


「俺ってやっぱり死んでんの?…死んでるに決まってるか…。俺の身体すり抜けるんだもんな。」


「すり抜ける…?」

No.21

美優はベットから降りて、幽霊の隣に座り、ベットに寄りかかった。


「隣に座るなよ」


「ダメかな?なんか凄く興味が湧いて…」

「俺は見せ物じゃない。」


「分かってる。うーん。私に出来ることないかな?なんかある?」


「えっ?そうだなぁ…。俺が何者だったのか調べて欲しい。」

No.22

「何者かって…生きていた頃の事を調べればいいのかな?」


「あぁ。じゃあよろしくな。」


幽霊は美優に頼むとすぐ寝てしまった。



「えっ?寝るの?ふぁ?!冷たい!!やっぱり触れない?いや触れてんのかなぁ?なんか不思議~!!」


「だからお前やめろ!!」


No.23

「ごめんごめん。だって凄く不思議なんだもん。それに貴方の事…ちっとも怖くない。どうしてだろう。」



「知らねぇーよ。それよか、そんな簡単に人の事信じんな。…俺は人なのか?まぁそこは置いといて、お前は無防備過ぎる。気を付けろ。」


「そんな簡単に信じてないけど…」


「まぁ。お前がどうなっても俺には関係無いけどな。」

「あのさ…もしかして…私が引っ越して来る前からずっとここにいたの?」

No.24

「…今更?当たり前だろ。」


「えぇー!?当たり前ってことは…全部…全部見てたの?はっ裸とか…」


「だからなに?」

「だからなにって…」

「とにかく寝かせてくれ。それと、お前の裸見たってなにも思わない。以上。」




No.25

そう…前置きが長くなったけど、これが初めて私と優希の出逢いだった。
正確に言えば、出逢いはあの家に引っ越してきた時だけど…。

幽霊って怖いとか呪われるとか思ってたけど、
全然違った。なんだか長年の親友みたいなそんな感じ。


だから私は、そんな彼の為に彼の生きていた証を探し始める事にした。

あれから数日後、

No.26

何故か私は…最近独り言増えたね?とか、誰と話してたの?ってよく言われるようになった。


上司からも、君は頑張り過ぎてるみたいだから、旅行でも行って、リフレッシュしてきなさい?と急に言われ長期休みをくれた。


みんなどうしたんだろう?

不思議。


誰と話してたの?って言われたけど、その時も目の前にいたし、大事な仕事任されてるのに…なんでどうして?嫌われてるの私…?

No.27

それとも本当に心配して言ってくれてるのか…


「ねぇ…」

そう言えば…最近休みとったのいつだけっけ? 二週間前だよね…

そりゃ疲れるか。


お金は貯まるけど…

てことは…やっぱり幻だったのかな?
旅行でも、行ってこようかなぁ。


「無視してるの?」


私の部屋で亡くなった人もいないっていうし…
旅行よか病院行った方がいいかな?



「無視しないでよ…気付いているでしょ?」


えっ…?

No.28

もしかして…私?


だってここ…私の車の中だし…


それもここ地下駐車場だし、私以外いないハズだから…幻聴かな?


私結構重症なのかな。


「気付いてるよね?…お姉ちゃん?」


寄り道せず、早く帰えって早く寝て早く病院に行こう。


「仕方ないね…。」



ん?!

バンドルを握った瞬間、左肩が肉離れしたような痛みと、重石が乗ったような感覚に陥った。


イテテ…なにこの痛み?
もしかして…四十肩?
まだ私25なのに?

まだじゃなくてもうかな…

整形外科も行ったほうがいいかな?

No.29

会社から美優の自宅まで、車で20分の場所にある。


美優は肩の痛みを我慢しながら、無事アパートの駐車場に着き、車を降りると大家さんがたまたま部屋から出てきた。

やばっ…大家さん世間話長いんだよねぇ…


「あらっ!美優ちゃん。お疲れ様!今日は早いのね?あれ…その子どうしたの?弟かな?でも年離れてそうだし甥っ子かな?あっ男の子だよね?どちらにしても可愛いわねぇ。」

大家さんは私の斜め下を見てニッコリ微笑んでいる。

「えっ?なんのはなしですか?」





No.30

「えっなんの話してってほら…美優ちゃんの隣に………。あれ?いない…?見間違えかしら…。」


「隣に…?」


美優は斜め下を見つめた。


「それとも、たまたまそこら辺の子がいたのかしら。あっあんまり気にしないでね?」


「あっはい…。」

なら言わないでよ…

「明日も仕事なの?」

「あっはい…。」

「じゃあ早く寝なきゃね?それじゃおやすみなさい。」

バタンッ


大家さん…私を怖がらせてといて逃げるんですか?


何時もなら少なくとも30分は付き合わされるのに…


「…やっと気付いてくれたみたいだね。ボクはウレシイヨ。」


No.31

だっ…だれか私の隣にいっいるというか、
裾引っ張られてる!!


「ひぃ…もっ…もうだめ。だっだれか…たすけて…」


なんとか声を絞りだし助けを求めようとするが、大きな声がでない。

だっ…だめだ。


そっそうだ!!大屋さんに助けを求めよう!

腰を抜かしてしまったため、四つん這いで大屋さんの玄関の前に行き、力を振り絞りドアを叩いた。

ドンドンッ ドンドンドンドンッ

No.32

大屋さん!きっ気付いて!!お願い!!


だが美優の願いも虚しく、大屋さんは出てこない。


どうしよ…大屋さん出て来てくれないよ…それも呪○みたいな子だったら…

ムリムリムリムリムリムリ

幽霊はやっぱり怖い!!
でもここにいても怖い…はっ早く家に帰ろう…
まだここよか安全…だよね?きっと!!

腰に力は入らないが、気力でなんとか階段を登り自分の家に逃げ帰ることができた。


はぁ…やっと……ついた。


廊下に倒れこむ美優。


ん…なんか足…?えっ…?

No.33

美優は目を擦る。


ん…?!

白くて綺麗な足…。


えっ?なんでここに足が…?


美優は、恐る恐る見上げる。

「オネェチャン…」


No.34

「でっでたぁぁぁ。」

大きな声で叫ぶ美優


「ねぇ…オネェチャン?」


美優は後ずさりすると、男の子は美優に向かってくる。

「ねぇ?何?貴方にしてあげれることなんてないから、さっさと成仏してぇ!!お願い!!」


「アハハ!!アハハハハハ!!」

No.35

「ひぃっ」

男の子は甲高い声で笑い始めた。

美優は手探りで探す



ガチャ ガチャガチャガチャ

「オネェチャン…ってば…ねぇ?オネェチャン?もうボクのことミエテルンデショ?キヅイテイルンデショ?イッショニ…アソボウヨ?」


「私が…あんたに何したっていうのよ?
もう…やだ…っなんで?なんでよ…なんでついてくるの?」



美優は見ないよう目を瞑りながら、開かないドアノブにしがみつき泣き叫んでいる。



「なぁ。もうそこら辺で止めてやったら?」

No.36

「えぇ?U吉ー。 オネシャスジメにクワワユくねぇぇぇぇ???てか金モ?てか金モ?」


「お前何語話してんの?」

「はぁ。まぁいいよ。キミには関係ないから。てかキミのせいでテンション下がったし…てかキミも幽霊?幽霊だよね?キミには言われたくないんだけど。」


「俺は、アイツを怖がらせたりなんかしない。」


「へぇー。好きなの?そんなにムキになっちゃってさ。」


「えっ?ちょっ…ちょっとまって?なに?話についていけない!?」

No.37

「こんな奴…好きになるわけねぇだろ?」



「ふーん。じゃあ、ボクたちの邪魔しないでね?」



「いわれなくてもしねぇよ。安心しろガキ。」


「ねぇ…なんなの?幻覚?」


「ガキじゃない。俺はこれでも25だ。お前は?てかここ、通行人多過ぎじゃね?」


「俺は…分からない。まぁそうだな。確かに多い。」


通行人?子供に見えるのに25才?なに?


「分からないんだぁ。ぷふっ。」


「好きなだけ笑えよ。だけど、もうコイツを怖がらせるような事はすんなよ?じゃあ俺いくわ。」

No.38

人生初めて目撃した、男の幽霊は消えてしまった。


「オネェチャン?やっと二人になれたね?通行人は沢山いるけどさ?気にせずイチャイチャしよ?」


「だから…貴方はなんなの?」


「あぁ。俺?25のとき、不慮の事故で死んだんだよね。で、ふと小さい頃を思い出したらなんか小さくなってたんだよね?まるであのマンガみたいな?頭脳は大人。身体は…アハハ…アハハハハ…いや、全然笑えねぇ。ってことでこんな姿だけど、これから宜しくね?」

No.39

「宜しくされたくないんだけど?!」



「いやいや、宜しくやってくださいよ?」

男の子はポンポンと美優の肩を叩く



「ちょっとまって?もしかしてもしかすと…貴方もここに住むつもりなの?そんなわけないよね?」


「え?」

No.40

「えっ?ってなに?やっぱり住むつもりだったの?」



「うん。そうだよ?だってキミの事、気になっちゃったんだもの。」


「いやいや、まって?私まだ生きてるし?」

「待ってるから大丈夫。」


「待っててくれるの?うーん…って。いやいや、そういう問題じゃないからね?」


「でもさ、最近心から笑えてる?俺、ずっと見てたけど、なんか無理して笑顔作ってるように見えたんだよね?俺の事が見えたら…俺の声がキミに届いたら…存在に気付いて貰えたら…俺は絶対、キミを幸せにしてあげようと決めたんだ。あの日…あの雨の日にキミが助けたように。」

No.41

「えっ?なんの話?」



「まぁ。そう言うことで、いっちょキッチャーしますか?」


「ねぇ、悪いけどお風呂に入っていい?」


「えっ?まさかのまさかですかね?あらっ!オネェチャンって凄く大胆!」


「は…?もうなんでもいい。とにかくお風呂に入りたい。絶対入ってこないでよ?」

No.42

「なんでダメなの?」


「上目遣いしたってダメに決まってるでしょ?貴方は子供じゃないんだから。そもそも幽霊なんだからお風呂なんか入んないで、成仏したらどうなの?」


「オネェチャン…」


「貴方のお姉ちゃんになった覚えもないから。」


「えーん。」


「えっ?ごっごめん言い過ぎちゃったね。…でもそっち風呂場だからあっちいって。」

バタンッ

美優は自称男の子を風呂場から追い出すと、溜め息をついた。



はぁ。なんなの?一体私はどうしちゃったの?
どうなってしまうの?

でも…あの人私の事助けてくれた…

妄想?それとも現実?どっちなの?



「うーん…現実だよ。きっとキミなら大丈夫。受け入れられるよ。」


「ふえっ?!」



No.44

美優はブラウスのボタンを外す手を止めた。


えっ…


「ちょっ…ちょっとなに入ってきてるの?ダメっていったじゃん?てか何処にいるのよ?」


「あーごめんごめん。上!上だよ!上にいるよ?」

「ちょっ!!」


「悩んでたみたいだからさ、なんか自分に出来る事がないかなぁーって思って…」


「あのさぁ。それ覗きだよ?立派な犯罪。それも、貴方のせいで悩んでるの!!貴方が私の周りから居なくなってくれれば解決するの!!」


「だって少し…少しだけ見たかったんだもん。ケチ…だね。」


「なによ?!ケチって!!私はまだ、男に裸見せた時ないの!!」


「え?オネェチャンって男と付き合ったこともないバージンなの?」


「付き合った数は自慢じゃないけど、多いよ。でも運命の相手には出逢えなかったからなの。やっぱりそういうのは、心から好きになった人としたいし…というか、私と貴方は同い年だからお姉ちゃんじゃない!!」


「へぇー。なるほど。というか、さっきブツブツ言ってたじゃん?25なのに、四十肩なの?ってさ。まぁここは男が優しくリードしないとだよな?」


「てかなんで?なんで、頭の中で考えてる事が分かるの?ほんとヤダ。やめてよ?」


「なんでだろうね?…ん?!えっ?!」


自称男の子の身体が透け始めた。

No.45

「えっ?もしかして…成仏するの?」



キラキラと光を放ちはじめた。

コクンと頷き微笑む自称男の子


「少しの間だったけど、楽しかったね。じゃあ…ね?」


「私も楽しかったよ?バイバイ…。」



光がもっと強くなり美優はとっさに手で、目を覆った。



少し経って恐る恐る美優は目を開けた。


「えぇぇぇ?!ナニコレ!!!」

No.46

「へっ変態見ないでぇぇー!!」

自称男の子は全裸で、腰に手を当てながらたっている。

「えっ?!そのわりに堂々とし過ぎでしょ。それも…こっちの台詞!早くなんか着てよ?てか透けてないしおっきくなってるし、成仏したんじゃないの?」


美優は置いてあった自分の着替えを、裸を見ないように顔をそらし、手渡した。



「俺のこの素晴らしい肉体を見せれてよかった。このままでもいいけど、借りるね?」

No.47

男は借りたTシャツに手を入れるが、小さくて着れそうにない。


「ねぇ…。大きくなっていきゃめんになったボクには…このTシャツ小さすぎるよ。それともこれって…羞恥プレイですか?ボクの本質を分かってますね?もっともっとしてくだ…」


「いきゃめんってなによ?!いきゃめんって!!なんかイラッとするし、プレイでもなんでもないから。でも…どうしよう。男物なんてないし、もうこんな時間だし…だからと言って裸はちょっと…てか、ここに今日泊まらせるの?おかしいよね?…うん。絶対おかしい。」


「俺は、このまま裸でいいよ?そもそもパンツも無いわけだし。」


数秒、美優は頭をフル回転させた。

「あぁっ!!パンツはある!パンツは!!防犯用に買った奴!!よかったね?」


「俺はそんなもの身に付けなくてもいい。そう…ありのままで。なぁ?変なこといっていい?」


「履いて!!もうこれ以上、変なこと言わないで?」


「後ろ見ろよ。後ろ。」


「…後ろ?」

No.48

「通行人沢山いるよ?」



「えっ?通行人?」


「本当に見えないの?沢山いるのに?」


「全然見えないよ?」


「あっそうだ!お風呂入るんだったよね?じゃあ、俺はテレビでも見てるね?」


「あっうん。」


バタンッ

男は鼻歌を歌いながら風呂場をあとにした。

…通行人?

通行人って一体なんなの?

というか、なんか裸になりたくないんだけど…
っていうかアイツ全裸だったよね?

No.49

美優は急いでお風呂に入り終わり、ドライヤーで髪を乾かしている。


この様子も誰かに見られてる?

通行人…通行人って一体…

アイツのことは見えたのに、なんで見えないんだろう?


うーん。わからない。

というか、生身の人間?になったし…
そういえば…今なにしてんだろ?


美優はそっーとドアを開き、部屋の様子を伺った。


ん?あっ!私の布団にくるまってる!!


美優は急いで男の方へ向かった。


「勝手に使わないで……よ?」


あれ?寝てる?

男はすやすやと寝ている。

こう見ると…案外かっこいいかも…

いやいや、そこじゃない。


「ねぇ起きてよ?」

美優は布団をめくった


ふあっ?!むっ胸板が…完璧だ…完璧すぎるぅ!!
だっだめっ!!これじゃ私も犯罪者になってしまう…

美優は慌てて周りを見て布団をもとに戻した。

よしっ大丈夫。うん。大丈夫。

「なにしてんの?襲ってんの?」

No.50

「ふぇ?こっこれはね…裸で寝てたから風邪引くかなぁって思って掛けてたの…変なことなんてしてないよ?」


「なんでそんなに焦ってんの?」


透けている男は美優をじっと見ている。


「えっと焦ってなんか…ないよ?」


ごにょごにょと美優は呟いている。

「そいつ起きてるだろ。」

透けてる男はそう言うと、ソファーに座った。

男は目を開け身体を起こした。

「あぁーあ。今いいとこだったのに…またお前かよ。邪魔すんなよ?てか、早く成仏しろよ。」


「えっ?!起きてたの…?」


No.51

「うん。」


「私変態みたいじゃん。」


「みたいじゃなくて、変態でしょ?見たいなら見たいって言えばもっと見せてやるし、ほら触らせてやるよ?」


男は美優の手を自分の身体に導いた。


「ちょっちょっと?」



「どう?もっと俺の事知りたくなっちゃった?俺は美優の全てを知りたい。」


…話そらさないと。でもどうやって?

美優は透けてる男の方を見る

アイツは知らん顔してテレビ見てるし…

「まっまず落ち着いて??ねっ?あっ貴方の名前は?」


「俺の…名前?知りたくなっちゃった?」

No.52

「知りたいというか…なんというか…」


「ねぇ…。俺の事…本当に覚えてないの?」


男は美優の顔を覗きこむ


「ふぁ?!そっそんな近くで見ないで…恥ずかしいよ…。というか、全然知らないし…」

美優は顔を真っ赤になり顔を背けた。

No.53

「坂口 築(さかぐち きずく)本当に覚えてないの?」


「ごめん…わかんない…。」

なんなの?私達は何処かであってたの?
でもこんなチャラチャラしてる人なら絶対記憶にあるはずだよね?


「あの雨の日…まだ小学生の俺と生まれた時からずっと一緒に育ってきた犬と散歩してたんだ。」


「うん。」



「雨も強くなってきたから、走って家に戻ろうとしたら、急にクラクションを鳴らされた。」

「うん。」

美優は思い出そうとしている。

うーん。思い出せない。


「飼い犬の名前はマロンだったんだけど、マロンはびびりで、突然のクラクションに驚いて、凄い勢いで走っていってしまったんだ…そこは車の通りも激しくて…大きな声で名前を何回も何回も呼ぶんだけどマロンはとまらなかった。そしてマロンは…」

「どうしちゃったの?」

「混乱したマロンはそのまま車の通りが激しい車道に…」

築は下を向いた。

「えっ…??もしかして…」

No.54

いつのまにか透けている男も築の話に耳を傾けている。


「車道に…マロンは…」


段々築の声が途切れはじめた。



「大丈夫?無理に思い出さなくても…」


「止まれ!!」


急に築は大きな声でさけんだ。


美優と透けてい男はびっくりし、築の方を見た。


「びっ…びっくりしたぁ。」


「ごめん。驚かせちゃって。俺は大事なマロンが車道に飛び出そうとしていたのに、一歩も動く事が出来なかった。大事な大事な親友なのに…」



築はスッと立ち上がると、美優の所に行き腕をを掴んだ。



「やっぱり傷…治らなかったんだな。ごめん。」

築が掴んだ美優の右手には、15センチくらいの傷痕が痛々しく残っていた。

私の腕の傷がついた理由を知ってる?

あれは確か…私が小3の頃…

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