氷の中の奴隷

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2018/05/26 06:03(更新日時)

ガチャーン…

ガンガンッ

父の怒鳴り暴れている姿と割れた皿を謝りながら片付ける母の姿。

詩織の家ではよくある光景だ。


詩織は何時も隣の部屋で震えながら父親の怒りが静まるまで耐える。それが一番適切な行動だった。

でも…この日の詩織は違った。

No.2406506 (スレ作成日時)

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No.2

怒鳴り散らす父の前に立ち、震える手で拳を握ると言った。


「お父さん。お母さん…あの話早く…進めて貰いたい」

No.3

「なに言ってるの…?ねぇ詩織…?貴女自分が言ってこと分かってるの?」


「黙れやババア。お前は黙って酒持ってくればいいんだよ。」


ドンッ

ガタンッ

父親は母親の髪の毛を鷲掴みにし、床に叩きつけるとお腹を蹴りつけた。

「お父さん…やめて?私…覚悟決めたから…ね?」

詩織はうずくまっている母親の元に駆け寄る。

「嬉しい事があったんだから酒飲まなきゃだろ?なぁ…?詩織。」

震える詩織の前に屈むと、クイッと詩織の顎を掴んだ。


「ゲフッ…アハハなぁ?しおり~女に生まれて良かったなぁ?ありがたいと思えよ?」


No.4

…これでいい。


数日後。


詩織は、廃墟なんじゃないかと思うくらい古いビルに連れていかれた。

…なにここ?


入るのを躊躇う詩織が振り向くと、若くてガタイのいい男が、ニッコリと笑った。


『詩織さんどうしたんですか?』


男はニッコリと笑っているようだが、目は全く笑っていない。それに後ろの人は笑ってもいない。

ゴクリと唾を飲む。


多分私は…このまま無事で帰って来ることはないだろう。

でも涙すら出そうにない。

何でだろう。

No.5

詩織は足を踏み入れる。

外観は廃墟ぽいけど中は綺麗…


驚きを隠せない詩織は立ち止まった。

長い廊下は薄暗いが、ホテルの廊下みたいに高そうな絨毯が敷かれている。

でもなんだかほこりっぽい。

なんでだろう。

詩織は少し咳をした。


『びっくりした?』


No.6

「…。」


『ここに来る女の子は、みんな同じような反応するんだよね。』


「そうなんですか…」



『人間として最後に見れる風景が、今にでも幽霊が出そうな廃墟でしたぁ~なんて可哀想過ぎるからね。まぁ、どっちにしろ薄暗いからあまり変わらないかぁ。あっ…人間として最後って言ったけど、人間として扱ってくれる優しい人もいるからね。ごく希にだけど。』


…えっ?


『まぁあまり期待しない方がいいよ。』


言い終わると男達に挟まれながら詩織ははそこまで広くない廊下を進み始めた。



急に男は止まる


ボフッ


No.7


「すっ…すいません。」


エレベーターの前で急に男が立ち止まったせいで、詩織は男にぶつかった。


男は無言でボタンを押すとドアが開いた。


9階まであるんだ…。

男はなんの躊躇いもなく、
2、4、6、1とボタンを押した。


えっ…?

No.8

男はボタンを押したあと詩織をチラッと見るとまた正面を向いた。

…声に出ちゃってた?でもなんでこんなに押しているんだろう。

詩織は床に視線をおろす。

あれ…?

エレベーターが下に向かっているような体感がする。


上に向かっているはずだよね?


『なにしてんの?ほら着いたぞ降りろよ』


えっ?

「すいません…」

『お前すいませんって言い過ぎ。それってクセなの?』


というと、男は先に行ってしまった。

No.9

えっ…?


ぽんっと最初に話した男が、詩織の肩を叩く。

『気にしないでね?アイツなりに詩織さんのこと、気遣ったつもりだから。』


というと、まだ乗っていた男達も降りていった。


…怖そうな顔してるけど優しいのかな?


詩織は遅れてエレベーターから降りた。

うぅ…寒い?


エレベーターから降りると、目の前には机がポツーンと置かれていて、男の人が一人座っていた。


あれ?さっきの人達は?

詩織はキョロキョロと見渡す


『こんにちは。さぁこっちにきて?詩織さん。』

No.10

「あっ…ハイ…。」


『ごめんねぇ?ここ、寒いよね?あっそこの椅子使って?』

男は目の前にある椅子を指差す

もう本当に後戻り出来ないんだ…夢じゃなくて現実…なんだよね?…怖い…どうなってちゃうんだろう…。

『あっそんなに緊張しなくてもいいよ?今から簡単な質問に答えて貰いたいんだけど、大丈夫?』


詩織は椅子に座ると、ぎゅっと拳を握り、震えるのをなんとか押さえそうとした。

「あっ…ハイ…大丈夫です。」

男は詩織に紙とペンを渡した。

金持ちの家に生まれていたらこんな思いはしなかったんだろうなぁ…

そんな事を思いながら紙に目を通す
えっと…

1、貴女は処女ですか?

はい どちらともいえない いいえ

どちらともいえない?ってなにそれ?…ってツッコミいれてる場合じゃないよね…えぇっと…

詩織は、はいにマルをつけた。

2、貴女はオナニーが好きですか?



No.11

ええっ?それは…どちらとも…


詩織はチラッと男の人の顔を見る。


『あっ!ごめんねぇ?見られながらだと答えにくいよね?』


と笑いながらいうと、机に置いてあった雑誌を手に取り読み始めた。


恥ずかしいし…もういなくなりたい。

いいえにしよ…。


3、貴女は他の人に見られながらオナニーをするのが好きですか?

えっ?


大好き 結構好き 恥ずかしいけど見せたい


なにこれ!?

いいえがないじゃん…

No.12

もう…恥ずかしいけど見せたいでいいか。

4、これから自分がどうなってしまうのか不安?


全然不安じゃない そりゃ多少は不安… 不安?なにそれ?


えっ…

もうなにこれ…
そりゃ多少は不安…ってかなり不安なんだけど…


5、やっぱりオチンチンは太くて長くて硬い方が好き?


そんなの関係ない! べつにどうでもいい。 大きさとかの問題じゃない!大切なのはムード

これ…みんな同じような事言ってるよね?

べつにどうでもいい…で…


6、寂しがり屋?

かなり どちらともいえない ちがう

No.13

これは…かなりかなぁ…

ここまで質問に答えてくれてありがとう!!
これが最後の質問だよ?!

やっと最後の質問かぁ…

7、ズバリ貴女はM?S?


Sだよ! 違う違うM! いやいやドSでーす! いやぁーん!!ドMですよ?!縛って貰いたいよぉ!!

えぇ?なにこの質問?絶対これ…作った人ウケ狙ってるよね?


…えぇ。Mかなぁ?人のこと、傷つけるのは嫌いだからやっぱりMかなぁ…


No.14

「終わりました。」

詩織は男に紙を渡す

『おっ!終わった?どれどれ…いいねぇ!お疲れ様ー!じゃあ次は…』



ポチッと男はボタンを押すと、壁がガタガタと動き始めるとドアが現れた。

『じゃあ次はあそこだよぉ!』


「あ…ハイ…。」


詩織は男に軽く会釈して、次のドアを開けた。


さむっ!!


なんでこんなに寒いんだろう?


『詩織さん!!こっちこっち』


男が手招きしている。

詩織は手招きしている男の元に行く。



No.15

『寒いからちゃちゃっと話すけど、今から詩織さんには氷漬けになって貰うよ?そうする事で、老けずにずっと若いまま保存することができからね。』

「えっ?」


『でねぇ…買い手が決まったら溶かされて奴隷として生きて貰うの。分かったかな?』


「えっ…じゃあ…買い手が決まらなかったら?」


『うーん。ずっと氷漬けかなぁ?でも大丈夫。売れ残るのは、ほんの一握りだからさ!それも詩織さんは可愛いからすぐ見つかるよ。』

「どっちにしても…私」


『おーい!!持って来てくれる?』

と説明してくれた男が誰かに向かって大きな声でいうと、


奥から少し体格のいい男が透明の容器を運んできた。

『さぁ服を脱いでこれの中で横になって?』


「えっ…ちょっと…。」


『ねぇ…早くしてくれるかな?』


先ほどまで笑顔だった男の顔が急に真顔になった。

No.16

…ゴクン

詩織は唾を飲み込むと、スルスルッと身に付けているものを脱いだ。


『さぁ。横になってね?』

また男は笑顔になった。

目は笑っていないが。


詩織は無言のまま容器の中に横になる。


『じゃあまたね?』


と男は詩織に風を吹きかける。

わた…し…どうなっ…


『上手くいったな。抵抗もしないし、やり易かったな。』


『そうですね。』


『まぁ、こいつはすぐ売れそうだな。』



数ヶ月後…

No.17

詩織は金持ちに買われた。


ピンポーン

『お届け物デース!』


「はーい。って…これなんですか?」


体格のいい男が二人がかりで細長い箱を持って玄関の前に立っている。


『お届け物です。』


「いや、それを聞いているんじゃなくて…」


『斉藤 一樹様からのお荷物です。』


「兄貴から?」


『あっお風呂場までお運びしますね?』


「えぇ?なに?」


男達はいいとも言われてないのにズカズカと勝手に入ると浴室に運び入れた。

「えっ?ちょっ…」


『あっサインお願いします。』


「あっ…はい…」

No.18

『ありがとうございました。』

バタンッ



えっ?


ちょっ…


男はとりあえず荷物を見に行くことにした。


…ナマモノ注意!ってなんだこれ?


ビリビリと、テープを剥がす


えぇ…ちょっ…死体???


男は急いでリビングに向かい置いてあったスマホを震えた手で電話をかける。

プルルプルル


「おかけになった…」


ピッ

No.19

繋がんない!!俺…共犯者?捕まるの?

えっ?氷漬けだったよね?


男は何故か忍び足でまた風呂場に向かう


…やっぱり…やっぱり、しっ死体だよ…!!


兄貴殺しちゃったの?殺人鬼?



えっ?

チラッと茶封筒が顔を出している

No.20

男はすかさず手に取りリビングに速足で戻る。


ビリビリッ

説明書

とデカデカと書いてある。


えっ?説明書?


まず40度のお湯をかけて氷を溶かしてください。


あとは自由です。


お買い上げありがとうございました。
またのお越しをお待ちしています。


えっ?なに?溶かす?というか、お買い上げなんかしてないし…

男はまた風呂場に行くと、半信半疑でお湯をかけてみた


全て溶けると、女がゲフゲフと咳をし始める。


「えぇ?生きてる!!生きてるよね?」

男は急いでタオルを女にかける。

「いっ生きてます。」



ゲホゲホと咳をすると、女は周りを見渡す。


「えぇっと…キミは誰?生きてるんだよね?」

No.21

「生きてます…」


女は息を整えようとしている。


「良かったぁ…生きてたんだね?」


男はその場で座り込む


「生きてます…」

「あっあの……みっ見えてます…」


「ごっごめんなさい!!」

女はタオルで身体を隠す


「えっと…どうしよう?どうするの?えっ?ふっ服ある?」


女は周りを見渡す


「あっ…なっないよね?ええっと…俺の服着る?」

コクンと頷く


「じゃあ…探してくるね?」


No.22

男は風呂場を後にした。


…ここはどこ?

私は無事…買われたんだね。

てことは、私はあの人の奴隷?

頭が痛い…


それ以上考えたくない。考えたくなんかない。


でも…だからと言って逃げれる訳じゃない。現実からは…


嫌な事から一度逃げたら癖になるって誰か言ってたっけ。

…これは当てはまらないよね?さすがに。

隙をみて逃げよう。大丈夫私なら。出来る。


足音が近付いてくる。


No.23

トントンッ


「着替え持ってきたから、少し開けてもいい…?あっ!!目…綴じるから安心して!!」

男がドアを叩き早口で詩織に話し掛けた。


「大丈夫です。ありがとうございます。」

「んじゃ…開けるね…」


キィィィと少しドアが開くと、着替えが置かれ、また直ぐに閉まった。

…別にそんなに急がなくてもいいのに。

それになんだか優しそうな人だ。


奴隷なんていうから、もっと酷い扱い受けるかと思ったけど…

No.24

詩織は少しドアを開け、顔だけだすと男を探した。



いたいた…テレビの前で行ったり来たりしてる。なんでだろう…?


男は落ちつかずソワソワしている。


「服…ありがとうございます。」


「ごめんね?俺のしかなくて…」


何故か振り返った男は、顔が真っ赤になっている。


「いえ…そんなことないです。助かりました。」


「あっあのぉ…家…帰りたいよね?」

No.25

「…そうですね。」

「…だよね。でも、その格好じゃ…今から服買いに行ってくるよ。」


「えっ?私…家に帰ってもいいんですか?」


詩織は男の腕を掴むと、聞き返した。



「えっ…?あぁうん。当たり前だよ!うん。兄貴が勝手に…ごめんね?なんか…」


詩織は男に思わず抱きついた。


「ありがとう!嬉しい!あっ…すっすいません。つい嬉しくて…」

「だっ大丈夫だよ?」



…帰れる!!やったぁ!


でも、あの家に?


No.26

お母さんの事は心配だけど、もうアイツには会いたくない。どうしよう…


「あっじゃあ買いに行ってくるね?テレビでも見てて?」

というと男は、上着を羽織った。


ドンドンドンッ!!

「あれ?誰かきた?」

男が玄関に向かおうとした瞬間、勢いよくドアが開いた。

「おーい?和也?いたいた!荷物届かなかった?」

勝手に男の兄であろう人が入ってきた。


「荷物っていうか…」


「あぁいたいた!これここに住まわせて?ほら俺嫁いるじゃん?だからねっ?あっお前、今から出掛けるんだよね?早く行けよ。」


詩織は状況が読み込めないまま、今来たばかりの男に腕を掴まれた。


「えぇっと…でも…」




No.27

「早く行けよ。」

と和也にいうと、男は服の上から詩織の胸を揉み始めた。

「いや…詩織さん嫌がってるし…」


「なに?こいつはお前の彼女じゃないだろ?俺は高い金払ったんだよ。払ってくれるの?無理だよね?ニートの君にはさぁ。それともお得意の親父のカード使うのかなぁ?」

「…。」



和也は無言のまま逃げ出すように出ていってしまった。

「やっと邪魔者がいなくなった。さぁ始めますか。脱げよ、奴隷。」



No.28

「…はい。」


神様っているの?いるよね?絶対いるよ!!

いないよ。いるハズなんかないでしょ?
貴女が助けて!って空に向かってお願いしたとき、助けてくれた?

…。

ほら…ないでしょ?

でも…奇跡が重なって…間一髪で助かった人もいるし…

奇跡?笑える。
じゃあなんで毎日泣いてて、人の顔色ばっかり伺ってるの?
奇跡も神様もないよ。
現実見た方がいい。
貴女はずっと負け組。
ずっーと部屋の隅で、座ってメソメソ泣いてるのがお似合い。


だって貴女は、幸せになんかなれないんだから。

幸せになる価値なんかない。

クズだから。

キャハハ!!また泣くの?
泣いたって叫んだって状況は変わらないよ?時間の無駄。





No.29

…。


辛い事があると、というか、毎日頭の中で討論が始まる。


何時から私はこんな…


「早く脱げや。」


詩織は顔を上げると、目の前の男を見る。


脱ぐしかないのかな…お母さんも和也っていう人も、私を捨てた。もしここで逃げて自由になれても、私は…


えっ?まだ他人に期待なんかしてるの?

自分の身を削ってお前を助けてくれる奴が現れるとでも思ってるの?ウケるわぁ。


早く脱いで抱いて貰えば?
貴女にはあってるよ?
ある意味幸せにして貰えるよ!

それに私、間違ったこと言った時ある?


ずっと前から言ってたよね?私…。


お前の母親はお前よか父親の方が大切だって。

あの日お前聞いたよね?聞いちゃったよね?

No.30

分かってる。聞いたから。
だけど、やっぱり全部は嫌いになれない。嫌いになんかなれないよ。好きだもん…。


だから今も、迎えに来て助けてくれるって、ほんの少し期待しちゃってる。


あはは馬鹿だね。私…。


詩織は下唇をキュッと噛むと、和也から借りた服を脱ぎ捨てた。


と同時に、私の奴隷生活が幕を開けた。

No.31

「うーん。やっぱり痩せすぎだ。お前ご飯ちゃんと食べれてた?」



「えっ…?ご飯ですか?」


詩織は聞き返す。


「あぁ、これ。早く着ろよ。」


男はバックから女性用の服や下着を取り出し手渡した。

「あっありがとうごさいます?」


急いで詩織は渡された服を着る。

可愛らしい服に可愛い下着…
私になんか似合わないよ…

No.32

どうせ脱がすのに必要なの?
なんか急に優しくなったけど…。


もしかして逃がしてくれる?

そんなわけない。


そんな甘い話があるわけない。


男は口笛を吹いている。


「いいじゃん。」


「そうですか…」


「若いっていいねぇ。ほらっここにおいで。」


男は自分の隣りに座るようにソファーをポンッポンッと叩いている。

…やっぱりそうだよね。うん。

詩織は男の隣りに座る。




No.33

「緊張してるの?震えてるよ?」


男は詩織の方に身体を向けると、手を握り目をじっと見つめた。


「少し…」


「あのさぁ…一つお願いがある。聞いてくれる?」


「はい…」


「弟の側に居てくれないか?」


「えっ?」


詩織の手を握る力が強まった。

No.34

「あはは。なんか俺嫌われてるんだよねぇ。和也に。俺は何年も女が出来ない弟が、心配で心配で仕方ないんだよね。夜はグッスリ寝れるんだけど。あっ…でね?なんかこう…ねぇ…、彼女が出来るようにしてくれないかな?服装とかさ…女から見て魅力のある男にして欲しいんだよね。弟の面倒みてくれないかな?無理なら諦めるけど…」


男は苦笑いしている。


「私は奴隷じゃ…」


「いやぁ…。嫁のこと大切だから、裏切れないよ。あっもう一度胸触らせて?」


男はムニュムニュと詩織の胸を触る。

「んんっ…。」


「詩織ちゃんそんな甘い声が出しちゃうの?もっと聞きたくなっちゃうよぉ?」


というと、男は詩織を押し倒す。

No.35

「だめぇ…。」


「えっ?なに?もっとやって下さいって?」



男は詩織の腕を押さえ付けた。


「いやぁ…。」


「あはは。俺、こんなに女に嫌がられたの初めてだよ?」

詩織の首筋を舌で沿わせると吸い付いた。



「んんっ…いやぁ。」


「そういう反応が男を興奮させるんだよねぇ。いやぁ…とかだめぇとかさ。」


男は詩織の服を掴むと、ビリビリと破いた。


「おっ?なかなかいい感じ。」



No.36

詩織は男の手を振り払い部屋を飛び出た。



…逃げなきゃ。



ガチャ


…!!


目の前には和也が立っていた。

「大丈夫?逃げよ?」


和也は詩織の手を握り、走り始めた。


No.37

和也の部屋に1人取り残された一樹は1人呟いた。


「やり過ぎたか?まぁいいや。さぁ、帰りますか。」

No.38

その頃二人は家から少し離れた公園のトイレにいた。


どうしよう。えっ?ちょっと服破れてんじゃん?それに…


「ごめんなさい。」


和也は詩織に土下座をした。

「大丈夫だよ?立って?」


あっそうだ…さっき買ってきた服…


和也は服を詩織に渡した。


「えっ?ありがとう…」


「本当にごめんなさい。」

「…あっいやっ…貴方が悪いんじゃないし…それにお兄さんもしかして…。本当に大丈夫だから…ねっ?」


詩織は和也の手を引っ張り立たせると、
和也の前で破れた服を脱ぎ、和也が用意したパーカーを着た。

…可愛い。でもというか、もう少し女の子ぽい服選べば良かった…。


「ごめん…服可愛くなくて…。」


「えっ?謝らないで癖なの?癖になっちゃうよ?このセリフ受け売りなんだけどね。」


…可愛い。初めて笑った顔見たけどほんとに可愛い。


それを俺は…。


「あの…それよか寒い…。」




No.39

「そっそうだよね…?どっか暖かいとこに行こうか?」


「うん。」


…どこがいい?どこいこう…。


和也が考えているとき、詩織は全く別の事を考えていた。


でも私…この人といる意味ある?
この人なら逃げきれる自信ある…。



逃げれたら私は自由。

それに…簡単に他人を信じちゃだめ。

裏切るもん。人間なんて簡単に…。

詩織は上目遣いで和也を見つめながら、和也の服の裾を少し掴み言った。

「ねぇ…それよか私…喉渇いたなぁ…?」




No.40

「あぁそうだよね?じゃなんか買ってくるね!」

というと、和也はすぐ飲み物を買いに行った。

だから私は、周りを確認して思い切り走った。

多分人生で一番早く走れたんじゃないかと思う。



周りの目なんて気にせず走り続けた。


…ここは何処だろう?

同じようなビルが建っている。



どんくらい走ったんだろう?


もう動けない…

どうしよう逃げきれたけど…。


詩織はその場に座り込んで息を整えていると、突然肩を叩かれた。


「だっだれ?!もしかして…!?」


No.41

「お前こんな所で何やってんの?」


「ええっと…それは…」


詩織は立ち上がり後退りした。



「なぁなんでこんなとこにいるの?」


「そっそれは…止めてください!離して下さい!」


男は詩織の腕を掴んだ。


「答えろ。そしたら離してやってもいい。」

「痛いっ!!離してっ!!」


「早く答えろよ。」


No.42

「そっそれは…」


「逃げてきたのか?」


「…違います。」


「分かりやすい嘘つくな。」


抵抗する詩織をものともせず、男は詩織の腕をがっしり掴みながら歩き始めた。


「お願いします。逃がして下さい!!」

詩織はボロボロ泣きながらお願いするが、男は無言のまま歩き続けている。


No.43

数分歩くと少し古いアパートの前で止まった。


「お願いします。逃がしてください…。」


「静かにしろ。」


男は詩織の口を手で押さえながら、角の部屋に無理やり連れ込んだ。


No.44

「暴れるな。」


「なっなに?なにするんですか?!お願いします。助けて下さい!!」

「取り敢えずシャワー浴びろよ。」


「えっ…?」


「早くしろ。帰りたくないんだろ?」


「それは…」


「じゃあ早くしろよ。ここだから」



「はい…。」

No.45

…どうしよう。もっと大変な事になってしまった。


あの人は確かエレベーターであった男の人…だよね?


私どうなっちゃうのかな…。


どんなに抵抗してもうんともすんともしなかった…

無理…絶対逃げきれる自信なんかない…どうする?どうしよう…


詩織を呼ぶ声が聞こえる。


どうしよう…どうする?

No.46

取り敢えず行くしかないよね…。


お風呂からあがり、脱いだ服をまた着ようと、置いた場所を見てみると無くなっていた。その代わりに男の服が置かれている。


…どうする?着るしか…ないか。


ドアを開けると、男がソファーに横になっているのが見える。

No.47

「あっあのぉ…」

詩織が声をかけると、男は体を起こし手招きをした。


詩織は少し戸惑いながら男のすぐ近くまで近寄ることにした。


「お前俺の女になるか?」


「えっ…」


「どうする?早く決めろ。」


男は詩織の腕を引っ張り抱き寄せた。


男の人なのに良い匂いがする…。


「聞いてるか?」

No.48

詩織はコクンと頷く。


「あぁ?なるってことか?」


「えっそれは…んんっ…」


男は詩織の頭に手を回すと、そっとキスをした。


「五月蝿い。」

No.49

「えっ…キッキス…?」


詩織は呆然としながら男を見つめたかと思うと、数秒後には生暖かい大粒の涙が頬を伝った。



「…泣くな。」


男は詩織を抱き締める。


「なっなんで…ヒック…こんな目に…ヒックヒック…遭わなきゃいけないんですか…?なんか私がしたの…?なんで私だけ…ヒック…こんな人生なの…?なんで…?」


「…はぁ。女って面倒くさい。少しだけ泣いたら静かにしろよ。」


というと、男は頭を撫でながら優しく詩織を抱き締める。


何だか落ち着くし…凄く良い匂い…。


顔は…凄く恐そうだけど…

ふぁ~…。何だか眠くなってきちゃったなぁ…


「夜ご飯なに食いたい…?おいっ…?」


もうダメ…。




No.50

「ふぁ~。ふふっくすぐったいって頭?!」


「おぅ。」


男は詩織の上に覆い被せりながら、詩織を見つめた。


「…っ?!そっそれに服が…。」


「服がどうしたんだ?」

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