氷の中の奴隷

レス114 HIT数 25646 あ+ あ-


2018/05/26 06:03(更新日時)

ガチャーン…

ガンガンッ

父の怒鳴り暴れている姿と割れた皿を謝りながら片付ける母の姿。

詩織の家ではよくある光景だ。


詩織は何時も隣の部屋で震えながら父親の怒りが静まるまで耐える。それが一番適切な行動だった。

でも…この日の詩織は違った。

No.2406506 (スレ作成日時)

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No.101

雨が止んで、葉っぱに落ちた雫を見ると


「見てみて!!宝石みたいだよぉ!!」


って喜んでたっけ。


あの頃はなにもかもが、キラキラ輝いていて、楽しかった。


お父さんもお母さんも仲良しで…



いつもくだらないことで笑いあってた。



あの頃に戻りたい。


何も考えず笑えていたあの頃に。

No.102

車の振動が妙に心地いい。
それに、なんだか眠くなってきちゃったな…。

そうそう。

小さい頃こうやってドライブに行くといつの間にか寝ちゃってて…。

あぁ…もう…ダメ…瞼が…。

No.103

「あのぉ…ラジオ聴いてもいいですか?」


詩織はパッと目が覚めた。

「いいですよ。」

びっビックリして心拍数が大変なことに…。


『次の曲は「矛盾」です。どうぞ』



ラジオなんて久しぶりに聴くなぁ…。

No.104

『お前が好きだ お前のことがすきなんだ

少し 少しだけでいいから

時間をくれないか?

この想いをどうしても伝えたいんだ

後悔なんかしたくないから

お前にとってこの気持ちは重いかも知れないけど

でもお前に伝えないと一生後悔するかも知れないから

来てくれるだろうか この階段の先に

でも少し怖い

だってお前の申し訳なさそうな表情を見なければいけないかもだから

いつもの俺を演じることが出来るのか?

たぶん無理だ…でもきっと出来る俺なら…

うん大丈夫だ さぁこい

こいよ

この階段を登って扉を開けたお前の未来を俺に託させろ

だから俺は もう少し待っている 待っているからな』

No.105

私も愛されてみたいなぁ。

あっ…でも私は、汚い。

そうだ。色んな汚いモノを受け入れた汚い人間なんだ。

いや、人間じゃない。

やだ… やだ…。

汚い…汚い…。私は…汚い。

詩織は、ぎゅーっと腕に爪を食い込ませ下唇をきゅっと噛んだ。

どうして…どうして…私だけ…

No.106

キキィー


車が大きな音をだし止まった。


詩織は涙を拭い前方を見ると、零時が車の前に立っていた。


あれ…あの人は確か…。



聞き取れないが何かを叫んでいる。



No.107

顔は覚えているけど、えぇっと名前は…ダメだ。思い出せない。

詩織は元から名前を覚えるのが苦手で少し考えてみたが、諦めた。


名前は思い出せないけど…、あの人は確か、美味しそうな料理を作ってくれた人だ。

もしかして助けに来てくれたの??

零時は車から運転手を引きずり下ろすと、すぐ車に乗り込み、急いで車を発車させた。



No.108

「あはは。やっと見つけた。俺のこと覚えてる?」

バックミラー越しに零時は詩織をみて笑う。


「…はい。一応。」

「えぇ?一応ってどういうこと?まぁ、いいけど。今からゆっくり時間掛けて思い出してくれればそれでいっか。」


「あの…私をこれから…。」



No.109

「そうだなぁ。今度外出したい時は、一人でして欲しくないなぁ。君のこと、狙ってる人多いからさ。」

と零時は笑う。


「ちょっ…えっ??だっ大丈夫ですか…?血が…血が凄いです!!」


「あはは。いや~久しぶりに運動したらさぁ~このザマだよ。ダメだね。めんどくさいからってサボっちゃ。腹もぷよぷよになっちゃうもんね?」

「でっでも…凄い沢山…ですよ?本当に…」

「一晩ぐっすり寝たら治るさ。そうだなんか食いたいのあるか??」

No.110

「そんなことより…額に汗が…。やっぱりかなり重症なんじゃ…?病院行った方がいいんじゃないですか?」


「そんなに俺のこと心配してくれるの?俺の彼女になってくれる?あはは。冗談だよ。」

といい零時は笑っている。

本当に大丈夫かな?だって目が笑ってない。


なんとなく車内は気まずい雰囲気が流れ、お互い無言のまま一軒の家の前に着いた。


「着いたよ。今日からここがお前の家。」

No.111

「えっ…?」

「気に入らない?」

「気に入らないとか…そういう問題では…。」


「また別の家に行くことになるから、少しの間我慢してくれるか?」

「いや我慢だなんて…全然です。」


「ん?全然?ってことは気に入ったってことでいいの?ごめん…あのさ俺、はっきりいって貰わないと頭悪いから理解出来ないんだよね?」





No.112

「あの…家は何でも…というか、それより大切なことっていうか…ぶっちゃけ私、これからどうなるんですか?」


「ってことは、ここで大丈夫ってことだよね。良かった良かった。…うーん。そこなんだよね…。俺さぁ、お前に逢うまで、女って皆一緒で、もぁ~んって漂うあの甘ったるくて、吐き気を誘発させるような臭いを振り撒きながら、内面なんて全然気にしないで、まるで男を、ブランド品みたいな感じでツラか金かで決めて、自分よか劣ってる女を見下して馬鹿にしてる奴ばっかりと思ってわけよ。ぶっちゃけさ。まぁ、男も一緒だけど。だから俺のことで頭一杯にしたいなんて初めて思った。だから俺自信戸惑ってるし…。」

「えっ?」





No.113

「だめだ。こんなハズじゃなくて…こうもっと…年上の余裕を…あはは。あぁ、恋すると余裕なんて持てないんだな。
それにお前の一言に一喜一憂する。って何言ってんだ?俺は。意味分からないな。そもそも俺はこんなに話すことなんてないし、無口で通ってるし、べらべら喋るなんて男してどうよ。てか、なんで一目見ただけでずっと、忘れられなくなるんだ?仕事してても寝ようとしても思い出して寝れないし、まぁ仕事は凄いはかどるんだけどな。なんで?なんであの日ただ少し目があっただけなのに、お前に恋したんだ?」

No.114

「そんなこと私に言われても…」


「あぁ、そうだな。それにこんなとこでぶっちゃけられてもムードもなにもねぇしな。」


「あのムードっていうか…それ以前の問題というか、それより血が気になって…気になって仕方ないのですが…。」


「あっ…。これ?気にしなくても大丈夫だよ。それよかそろそろ中入ろうか。」


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