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黒百合女学院中等部 恋の時間割

No.96 2019/03/02 11:40
あかいあおい ( 37 ♀ sq6JBe )
あ+あ-

≫95

冷え込んでいる大晦日の夜。今年最後の客は誰だろう?。

そう思いながら出迎えに門に向かう、あおいの父の幸一朗とあおいの姉の緑。玄関の引き戸を開けて外に出る。

「寒っ!」

「わぁー雪だぁ!冷えるはずよね」

そう言いながら門に行こうとしたとき、寒さにしびれを切らした客の声が

「ゴルァ!幸一朗! 貴様あ、己の先生をさっさと出迎えに来んかいっ!」

「そっ、その、その声は・・・」

震えだす幸一朗。それを「何で?」と思う緑。

「勝手に入るでえ!」

門扉から手が伸びてカンヌキをまさぐる手が叫ぶ。

「あ、あいつや!。わわわワシの天敵が来よったんや!」

「みみみ、緑、わ、ワシは今日は留守やぞ!」

そう残し家に逃げ込む幸一朗。

逃げるなら外のほうが安全なのに、頭が回らないほど怯える相手って誰?。脳天気なお花畑が珠に傷でも、父の幸一朗は一応は武術家だ。それが逃げる相手?。



門から入って来た狂暴なる不審者に少し身構える緑に声の主は

「緑ちゃんか?大きくなったなあ!。ワシだよ渡だよ。」

寒さに顔が半分隠れるほどに巻き巻きしたマフラーを外し、そのせいでほぼ曇ったレンズの眼鏡を外し、目深に被った帽子を取った声の主は、緑と父幸一朗の幼いときの空手の先生だ。もっとも緑は当時は幼すぎて、習っていた記憶は殆どないのだが。

「渡先生、お久しぶりです。何年ぶりかしら?」

「おまえの同人、読んだでえ。なかなか面白う書きよるやんか!。ワシ、おまえのファンや!。で、幸一朗はどした?」

「パパ逃げちゃいました。賭け事がバレて、あおいに説教されてて、逃げようとしたら先生がいらしたのでビックリして(笑)」

「そうや、あおいちゃんにも逢いたいなあ、今いくつや?」

「十二歳で来年中等部です」

「そうかそうか」

微笑む渡先生。



緑はこの渡先生に聞いたことがある。

「渡先生、どうしてパパは先生を怖がるの?」

「あのなあ、あいつはカナヅチなんや。泳げんから教えてやろうとしたら暴れてな、ボートから海に放り込んだら溺れよったんや。ふつうは必死に本能的に泳ぐんやが、あいつは死にかけた。だからや。」

「だからあいつは今でも水が怖いカナヅチなんや。海や川やプールにおまえら連れて行かんやろ?。」

「しかもワシ、まだ若うてな、情けなさに目覚めたあいつを張り倒してしもたんや。」

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