黒百合女学院中等部 恋の時間割
ここは古くから在る街の山手地区。大通り奥の細道に入れば、昔からの武家屋敷や豪商の町屋が今なお残っている街。
そんな街に物語の舞台、黒百合女学院の大学を除く幼初等部・中高等部の集まる、黒百合女学院山手校はあった。無論、ここはお嬢様学校であり、女子校である。
その黒百合女学院山手校の正門がある大通りは、裏手の大規模団地を降りきった、この山手地区の繁華街でもある。
そんな通りに面した半地下の喫茶から通りを見ると、一人の幼女が歩いている。
18/07/20 16:12 追記
主人公は物語開始時まだ小学生です。初恋の人に幼稚園時代に出会い、中学時代に再会し・・・と主人公や主要登場人物の幼稚園時代や大学生時代に話を飛ばしながら物語は進みます。
二つに分けて書いていたのを、一つにまとめた物語にしたほうがいいかな?と思ったもので。再構成しつつ書き損じを訂正しながら書き加えていくものです。
18/07/23 17:43 追記
この物語はわたしが小学生時代から書いていた日記や記憶、同級生らとの思い出話による、ほぼ実話です。もちろん個人特定されないようにしていますが。
物語は「初等部篇の恋のエスケープの時間」から始まっています。
わたくし、普段はミクルにしかいないんですが、大人ミクルに入り浸りしているであろう、我がエロ姉氏と違い、文才も画才もありませんので、クレームは受け付けません。
- 投稿制限
- 参加者締め切り
>> 150
「で、でっかい家だぁ!」
「な、な、な、なんでポルシェがあるのよ!」
「しかも同じのが色違いで。おまけにベンツまで、しかも高いやつ」
「ね、ねえ、あれは?まさか犬小屋じゃないでしょーね!」
「やっぱり犬小屋じゃないの!」
「このちび!お前が偉いんじゃねえ!勝ったと思わないでよ!。うちの車庫くらいな犬小屋、建ててんじゃないわよ!。お前が偉いんじゃねえ!先祖が偉いんだ」
「チョーむかつく!。税務署さん!泥棒さん!しっかり仕事しろ!」
「まあまあ、言うと思った。うなちゃん、怒らない怒らない」
キレたヒステリー状態のうなを、あおいに気を遣い宥めているのはカネコだ。今日から赤井家に下宿で初訪問したうなは、あまりの驚きに両目に悔し涙を浮かべている。
「何が、わたしはお嬢様ぶりっ子しないからお友達になって!だ。チョーむかつくんですけど!」
そんなうなにあおいは
「はいはい。わかったから暴れない暴れない。ご近所迷惑だからね」
そう言いつつ皆に目配せを。すると示し合わしたかのように、カネコはうなの両手を、みずきはうなの足を。美佐とゆかりは胴体を。飛行機状態にしたうなを大広間に連れていく。
お茶を飲み、少し落ち着いたうな、それでも
「ハーハー、フーフー、ハーハー」
と、ヒステリーを押さえるかの深呼吸してる。すると、うなは黒百合の初等部で至急されたランドセルを抱え、庭の池に飛び込み、鯉を追いかけ回す
「何してんの!」
「盗んで売ってやるぅ!ルパン三世の気持ちがわかったもん」
で、また飛行機状態にされ大広間に連れ戻される
「あのね、うなちゃん、わたし好きでお嬢様生まれじゃないのよ。ここにいたらお嬢様なんかなりたくない!って思うから。ね、カネコちゃんとちはる、そうでしょ」
「それに、ここはおじいちゃんの道場と事務所兼ねてるから広いの。それに古い家だから建物自体に価値ないのよ。でポルシェ一台は向かいの剛くん家のだし、ベンツ一台は紫蘭お姉ちゃん家のだからね」
必死にうなを宥めるあおい。
カネコも
「うなちゃん、あおちゃんはね窮屈な思い何度もしてるの。会いたくもないおじさん、政治家とかどこかの社長さんとかに嫌々あいさつしなきゃとかで嫌な思いもしてるの。女の子ならエロじじいキモい!って気持ちわかるよね?」
>> 151
「なんだぁ!この騒ぎは、あおいさぁ静かにしてくれよ」
赤井家道場に練習に来ていた剛くんと雪穂が顔を出す。
「ちょうど良かった!。剛くん助かるわ!」
「うなちゃん、紹介するね。うちの生徒の剛くんよ」
「剛くん、こちらはお友達の柴田うなちゃん。仲良くしてあげてね」
「ねえねえ、久しぶりにみんなで汗流さない?。緑お姉ちゃーん、拳法着か空手着みんなに貸してあげて!。うなちゃん、合気柔術教えてよ!お願い!」
「よっしゃ、あおいちゃん、今度は加減しないからね!」
「わたしもよ!」
そんなふたりに
「お前ら、勝手に二人の勝負の世界に入ってるけどさ、今日は拳法教室じゃなく空手教室だぞ。まあ、いいか。で柴田うなちゃんだっけ?可愛いね。よろしくな」
「あっ、立ってみてくれる?防具のサイズ見るから」
そう言いつつ、うなを立たせた剛くん。例によって例のごとくの、いきなりのスカートめくりを。
「んキャっ! 何すんの?コイツ!💢」
スカート押さえるでもなく、瞬時に平手打ちするうな
「ちえっ!ブルマかよ。ブルマだと俺にはモテないぞ!」
「誰がアンタにモテたいと思うのよ!ふざけんな!」
うなの再びの平手打ちが炸裂する。今度は手加減されてない本気のだ。
「痛えな!。でも痛いだけだな。お前は強いよ。下手したらあおいより強いかもな。でもあおいと違ってこのままじゃ男に勝てなくなるぜ?。そんなテメエが強いとでも?。そーそーその調子、怒れ怒れ!。もっと怒れ!泣けよ。俺に怒ればあおいに怒らずに済むだろ!」
「俺だって好きでお坊ちゃまじゃねえし、あおいも美佐もゆかりも好きでお嬢様じゃねえんだよ。お前は何か?親を選んで生まれたのか?。違うだろ。俺達もそうなんだよ!」
「お前の顔はあおいより可愛いよ。胸もある。でもあおい見てみろ。胸ナシのちび女だぜ。あおいが好きそうなのか?。カネコ見てみろ、カネコは好きで高校生みたいな巨乳女なのか?。みずき見てみろ、みずきは好きで片耳が聞こえないのか?。カネコはお前よりビンボーなんだよ」
「生まれのせいにするようじゃ弱い女だよ」
「わたしのうなちゃんを馬鹿にすんな!」
あおいのキレた当て身が剛くんに命中する。息ができない苦しみに悶える剛くん
「あおい、おまえ、庇ってやったのに」
- << 154 「うなちゃんさあ、お前はあおいより胸もあるし顔も可愛いよ。でも、あおい見てみろ。色気も何もないペチャパイでちびな体だぜ。あおいは好きでそうなのか?。みずきは好きで片耳が聞こえないのか?。カネコは好きで巨乳なのか?。気付いたらそうだったんだ。それにカネコはお前よりビンボーだけど八つ当たりはしないぜ」 「あおいは好きでお嬢様じゃないし、カネコは好きでビンボーじゃないんだ。生まれのせいにするようじゃ、お前は弱い女だよ」 なんて剛くんのご高説が終わる前に、友達を悪く言われキレたあおいのフルスピード当て身が炸裂する。息ができない苦しみに悶える剛くんに叫ぶあおい。 「わたしのうなちゃんを馬鹿にすんな!。剛くんより強い女の子よ!」 「あ、あおい、お前なあ、なんで俺にキレてんだよ。庇ってやったのに」 「うるさい!壊れたレコード男は黙ってなさい!。うなちゃんの事情も知らないくせに!。女の子の友情に口出しするんじゃないわよ」 「うなちゃん!道場行こっ!。うちの基本教えたげるから」 夜のお食事を見たうな。お嬢様らしからぬ質素な食事に驚きを隠せない。あおいのパパが覚えの悪い門下生に付き合い、深夜まで指導してるのに驚く。あおいの祖父が事務員の残業が終わるまで食事に手を付けないのにも驚いた。 そして極め付きは 朝も4時には練習してるあおいや緑に紫蘭だ。それも自分の習う練習ではない。道場指導助手で、祖父やパパが他人に教える内容を練習してるのだ。さらに朝も5時に道場を掃除し看板を出し、高齢者太極拳教室のおじいちゃんおばあちゃんに手取り足取りだ。 それから七時にはあおいは登校に家を出る。朝ごはんの弁当を持って。そして学校の渡り廊下で自分の練習をし、学校の教科書をめくりながら朝ごはんしてる。 また、あおいのママ桃子の、家計簿や道場に塾と会社の帳簿とにらめっこの様子にも驚いた。どうしたら儲かるなんて言葉より、この経費を削れば社員の給料が増やせるトカ、家計のこれを削れば黒百合女学院への寄附や教会への献金に福祉施設への寄附を増やせるトカ、桃子の呟くセリフは、いかに質素に生活し、いかに他者に恵みを分けるか?な呟きばかりだったからだ。 あおいの言葉。ポルシェもベンツも、旧武家の格式や社交で持ってるだけ。贅沢はしたくない!は本当だった。 だが、あおいの姉、緑の趣味にもうなは驚いた。
>> 152
「なんだぁ!この騒ぎは、あおいさぁ静かにしてくれよ」
赤井家道場に練習に来ていた剛くんと雪穂が顔を出す。
「ちょうど良かった!。…
「うなちゃんさあ、お前はあおいより胸もあるし顔も可愛いよ。でも、あおい見てみろ。色気も何もないペチャパイでちびな体だぜ。あおいは好きでそうなのか?。みずきは好きで片耳が聞こえないのか?。カネコは好きで巨乳なのか?。気付いたらそうだったんだ。それにカネコはお前よりビンボーだけど八つ当たりはしないぜ」
「あおいは好きでお嬢様じゃないし、カネコは好きでビンボーじゃないんだ。生まれのせいにするようじゃ、お前は弱い女だよ」
なんて剛くんのご高説が終わる前に、友達を悪く言われキレたあおいのフルスピード当て身が炸裂する。息ができない苦しみに悶える剛くんに叫ぶあおい。
「わたしのうなちゃんを馬鹿にすんな!。剛くんより強い女の子よ!」
「あ、あおい、お前なあ、なんで俺にキレてんだよ。庇ってやったのに」
「うるさい!壊れたレコード男は黙ってなさい!。うなちゃんの事情も知らないくせに!。女の子の友情に口出しするんじゃないわよ」
「うなちゃん!道場行こっ!。うちの基本教えたげるから」
夜のお食事を見たうな。お嬢様らしからぬ質素な食事に驚きを隠せない。あおいのパパが覚えの悪い門下生に付き合い、深夜まで指導してるのに驚く。あおいの祖父が事務員の残業が終わるまで食事に手を付けないのにも驚いた。
そして極め付きは
朝も4時には練習してるあおいや緑に紫蘭だ。それも自分の習う練習ではない。道場指導助手で、祖父やパパが他人に教える内容を練習してるのだ。さらに朝も5時に道場を掃除し看板を出し、高齢者太極拳教室のおじいちゃんおばあちゃんに手取り足取りだ。
それから七時にはあおいは登校に家を出る。朝ごはんの弁当を持って。そして学校の渡り廊下で自分の練習をし、学校の教科書をめくりながら朝ごはんしてる。
また、あおいのママ桃子の、家計簿や道場に塾と会社の帳簿とにらめっこの様子にも驚いた。どうしたら儲かるなんて言葉より、この経費を削れば社員の給料が増やせるトカ、家計のこれを削れば黒百合女学院への寄附や教会への献金に福祉施設への寄附を増やせるトカ、桃子の呟くセリフは、いかに質素に生活し、いかに他者に恵みを分けるか?な呟きばかりだったからだ。
あおいの言葉。ポルシェもベンツも、旧武家の格式や社交で持ってるだけ。贅沢はしたくない!は本当だった。
だが、あおいの姉、緑の趣味にもうなは驚いた。
>> 154
あおいの姉の緑のエロ同人執筆にも驚くうな。
「あおい!悪いけどモデルして!」
「やだ!絶対にやだ!。なんでロリを描くのよ!」
「たまにロリな挿絵入れたら売れるの!お小遣い弾むから。イヤならいいのよ。うなちゃんはあおいより可愛いし、ゆかりはイメージぴったりだし、カネコは色気あるし、美佐は元プロのモデルだしぃ、ちはるはどんなポーズもしそうだしぃ」
「お姉ちゃん、それだけは、初等部の子を使うのだけはやめて!。わかったわよ。顔は変えて描いてよね。で、料金四万円よ。ったく、もう!モデル事務所だってあるのに」
「お姉ちゃんは自分で学費出してるの。これしかわたし才能ないし、またバイト首になるのよ!。助けて!お願いっ!」
「集会所でも借りて自分で武術教えたらいいのに。今度だけだからね。まあ、お姉ちゃんは寸止め下手くそで手加減できないからね、死人出されたら困るし」
うなは風呂上がりにあおいの部屋と間違え襖を開くと、そこはあおいの姉、緑の部屋。本棚やテーブルにはエッチな本やビデオだらけで、我が目を疑う、そんなうな。
「あら、うなちゃん、入っていいのよ?」
「あまりの驚きに宙を泳ぐ目が緑と合ってしまい、ご、ごめんなさい!お部屋間違えました!」
そう叫んで小一時間、、うなの下宿用に割り当てられたお部屋、あおいの亡い姉の藍子のお部屋だったが、そこに隣のあおいの部屋から、あおいと緑のエロ同人モデル料交渉の先程の会話が漏れて来たのだ。
お嬢様のあおいと緑の会話。緑お姉ちゃんは、すねかじりでパパママにお高い学費を甘えて出して貰ってたのではなかったが、まさか同人で儲けてたとは。
そして、そのあおいのせしめたモデル料は、いや、それだけではなく、道場指導助手のお駄賃までも、自分の贅沢や貯金ではなく、ビンボーゆえにお嬢様と付き合えない子たちを、あおいがいつも誘ってるのを、そんな子のパパやママの儲けの悪い小さなお店に行っては貢献してるのを、うなはあおいの従姉の紫蘭お姉ちゃんに知らされる。
朝の早いあおいはすぐに寝たため、うなはあおいの朝7時登校に付き合い、お嬢様だからと八つ当たりしたのを平謝りに謝ったのだった。
でも
「お嬢様も窮屈でめんどくさくて楽じゃない」
うなはあおいの言葉のその意味はまだ知らない。赤井家のひな祭りの社交にいなかったから。
>> 155
🎵学舎の外は 無限の海
我らの漕ぎ出る海なのさ
学舎の日々は煌めいて
恩に報いるため旅立とうぞ
友よ 明日に向け別れるとも
再び逢おう 名を上げたら
いつかは帰る その時まで
いつかは帰る 船出を今🎵
ここは黒百合女学院講堂。六年生全員が歌を練習している。黒百合女学院と黒川学院が系列だった以前に歌い伝えられた歌を発掘したあおい。もちろん文語体を口語の現代語にしたのはあおいの祖父だが
「わたし、もう学校来ないからね!。みんながわたしに付き合って進路変えるのは間違ってるから!。それに、なんで待った先生なんかに卒業感謝の歌を捧げなきゃならないのか、全く意味不明なんですけど」
あおいがお受験の合格発表日にそう言い出したとき
「待った先生、主任先生、六年生総意で卒業ソング変えます!」
最近あおいがそう言い出したとき、一時はどうなるか?と頭を抱えた待った先生こと松田先生。でも、あおいがちゃんとピアノを弾いて、皆に練習させてるのにホッとする
「練習は総下校時間30分前までだぞ!」
そう言って職員室に戻る松田先生
それを確認し、楽譜を変える六年生全員。あおいの初等部最後のいたずらだ。
🎵仰げは尊し我が師の恩
教えの庭にも 早幾年
思えばいと疾し この年月
今こそ別れ目 いざさらば
互いに睦し日頃の恩
別れる後にも やよ忘るな
身を立て名を上げ やよ励めよ
今こそ別れ目 いざさらば🎵
最近、クラスメートになったうなも、実は初等部生徒ではなく中等部生徒だが、そんな初等部特例聴講生のうなも、卒業式参加が認められ混ざっている。もちろん敦子もだ。
「みずきぃ、音を追いかけられなかったら、そこだけは口パクでいいからね!」
耳が片方聞こえない上に音痴なみずきを気遣うあおい。
「うん、ありがとう!。でも何とか合わせられてるはず」
そう答えるみずき
「じゃあ聖歌、詩篇23編やるよ~」
🎵主は我が飼い主
我 乏しきこと無し
緑の野に我を伏させ 憩わせ給う
主は生命を我に与え 義しく導く
死の暗き谷歩む時 死の谷を
我は怖れじ 主 共に居ませば
道を見守り 我が敵の前に
主は宴を開き
我を招き 祝福し給う
溢るる御恵みと哀れみと愛を
我に与え給う
我は主と 主と 共に永遠に
主の宮に住まわん 主の宮に🎵
>> 156
卒業生入場!
児童会長の桃井カネコを先頭に入ってくる卒業生。最後に入場したのは副会長のあおいだ。
君が代が歌われ、校歌が歌われる。
卒業証書授与!。首席卒業、児童会長、桃井カネコ!
「はい!」
「良く頑張りました。中等部での活躍を期待します」
次席卒業、高田ゆかり!
「はい」
「桃井カネコ君と競い合い、中等部では首席卒業期待します」
卒業生総代、児童副会長、赤井あおい!
「はい」
「よく一年間皆をまとめ率いてくれました。その努力を惜しまぬように」
卒業生、学長、校長に挨拶!
六年一組から順に各自、名前を呼ばれ講段に上がり、学長と校長に感謝の会釈と握手をし席に戻る。
学長と校長の送辞が語られ
在校生送辞!次期児童会長 坂田ちなみ
送辞が語られ、前児童会長のカネコが答辞する
卒業の歌、学舎からの船出!。卒業生、起立!。演奏、赤井あおい。
あおいがピアノの元に歩く
あおいの合図で歌われたのは
🎵仰げは尊し 我が師の恩
教えの庭にも早幾年
思えばいと疾し この年月
今こそ別れ目 いざさらば🎵
あおいのツンデレいたずら成功だ。歌うのを卒業式間近になって、六年生総意で拒否されたのに、まさか、歌ってくれるとは・・・いたずらを怒る気にもなれない先生たち。
卒業式も終わり間近になり、卒業祝福がクリスチャンスクールらしく学校牧師により語られ
聖歌、詩篇23編賛美、全員起立してください。
🎵主は我が飼い主 我乏しきこと無し
緑の野に我を伏させ 憩わせ給う
主は生命を我に与え 義しく導く
死の暗き谷歩む時 死の谷を
我は怖れじ 主 共に居ませば
道を見守り・・・🎵
と、全能の神への信頼が歌いあげられる。我らの国籍は天にある。怖れず自分の旗を掲げひた走れ!の校風を表す伝統である。
卒業式終了!卒業生退場!
卒業生が皆、制服の上着のブレザーを放り投げ、子ども扱いに別れを告げ退場する。
卒業式後に各クラスでミニパーティーがあるし、年によっては肌寒い日もあるため、教師が回収して返却するのだが、黒百合女学院ではこの日を境に、善悪わからない子ども扱いは終わり、中等部からは厳しく責任を問われるのを確認する意味、過去に捕われず未来に進め!の意味もある伝統儀式だ。
>> 157
卒業式が終わり、教室に戻った六年一組のあおい達。
これから卒業式の打ち上げの、クラス別のミニパーティーだ。と言ってもご馳走があるわけでもなく、ちょっとした軽食とお菓子にジュースがある程度だが。
「それでは~今から~卒業パーティーを~始めま~す」
「待った先生の~最後の淑女論を~ちゃんと~聞きましょう」
「待った先生、お願いします!」
歌いハモるかのように、会を始めた級長のあおいと副級長のカネコ。待った先生にお話をお願いする。
教師人生初の、卒業生を送り出す言葉を語る感動に、待った先生は涙腺が緩んでる。
「卒業おめでとう!。思えば短い六年一組でした。春には萬田珠子さんが長い闘病で病死、夏には北野みなみさんが転校、最近には千堂敦子さんと住吉うなさんが編入し仲間入り」
「皆さん、色んなことを乗り越え良く頑張りました!。だから今日はうるさいことは言いません!。学長、校長のお言葉のように我らの国籍は天にあり!。その高みを目指して名門黒百合の初等部を卒業した誇りを胸に、自信を持って中等部に、学外の中学校に入学してください!」
「最後に、他の歌を歌う予定を再度、変えてくれた、仰げば尊しのプレゼント、ありがとう!」
送られる卒業生の六年一組の皆の、その再度の涙よりも先に、涙腺崩壊が始まってしまった待った先生。眼鏡を外し、空を仰ぐかのように天井を見つめている。
主役の卒業生より先に泣くわけにはいかない!と、思ってるかのように。
そんな待った先生をからかおうとしたあおい
「だってえ、明日から童貞なんかと会わなくて済むもんね!。草葉の陰からでも先生、わたしたちを見ていてよね!」
「お猿さんと可愛い子犬ちゃんのケンカ、しなくてすむからせいせいするわ!」
そんなことを言いながら涙が出てきたあおい
「ドーテー!」
と、待った先生に叫ぶ。両手を広げ、
そして泣きながら駆けて短い距離、いや、僅か数歩だがを駆けて
「ドーテー!」
と両手を広げたあおい。その胸に
その小さな胸に飛び込んだのは
なんと、童貞の待った先生こと松田先生だった。
そんな光景を見て、松田先生にラブラブのゆかりは
「松田先生!あおちゃんに浮気するなんて酷いっ!💢💢💢」
賑やかなパーティーが始まった。
初等部編《初恋との別れ? 卒業式の時間》完
>> 159
《片恋再燃と百合の再会と 中等部入学式の時間》
ここは黒百合女学院山手校の中高等部体育館前の渡り廊下。今は春休み中の4月1日だ。昼休憩を告げるチャイムはすでに鳴った後で、空を見上げてはため息を繰り返す、そんなあおい。
中等部入学説明会と制服購入に来たのだが、部活で来ていた仲良しの高等部のしおり先輩や従姉の紫蘭に中等部の白柳柑奈先輩と、よもやま話に夢中になってしまった。
その仲良し先輩方が部活顧問と昼食を買いに、購買のある本館茶話室に向かうのを見届けた時には
先日卒業した、初等部での仲良し七人娘は、それぞれ用があったらしく、さっさと帰ってしまった後で、自分は雨女なのに折り畳み傘を忘れてしまって、それでため息なのだ。それで
中高等部の他の仲良し先輩が来てくれないかな?。
なんて人頼みをしてるのだ。その時には小雨だった雨も、分刻みに段々と本降りになり、傘なしでは帰れそうにない。
「お前、あおいか?。なんでここにいるんだよ?」
そんなあおいの背後で声がする。男性の声だ。
先生方、まだ昼休憩じゃないの?。
そう思うあおい。そう、ここは女子校なのだ。存在する男は教師など少数の男性職員、納入などの業者、父兄くらいのもの。あおい以外は無人のはずの体育館なのに・・・
怖々と声の主を振り返るあおい。
そこには、女子校だから男性はいないはず。そんな意味とは違う意味で、そこにいないはずの男が立っていた。
「お兄ちゃん?。なんでここにいるのよ?。女子校だよ?。いけないんだ!忍び込んだらダメよ!。それに声が変!風邪ひいてるの?」
そう、声の主は
あおいの一回り年上の遠戚で、九つ上の緑お姉ちゃんの婚約者で、県外の塾で人気講師の、そしてあおいの初恋の相手で片恋を諦めようとした、その真鍋瞬お兄ちゃんだ。
「ん?。ちょっと風邪でな。てか忍び込んだんじゃねえ!。俺は今日から高等部教師なんだよ!。つか、あおい、お前、国立附属に入るんじゃないのか?」
そんな瞬お兄ちゃんにあおいは
「うーんとねえ、国立行きたかったんだけどぉ、初等部の待った先生がね、わたしがいなくなると淋しい!って泣くから、それで黒百合に残ったの」
「それで入学てか進学つか進級?。その説明会と制服買いに来てるのよ。それよりお兄ちゃんっ!。それならそうと、なんで教えてくれなかったのよ!」
>> 160
「お兄ちゃんっ!ここ女子校だよ!。忍び込んじゃダメっ!」
中高等部体育館前の渡り廊下で雨宿り中のあおい。
背後から聞こえた声の主は
「なんでここにいるんだよ?。国立附属中に行くはずだろ?。てか、俺は忍び込んだんじゃねえ!。今日から高等部教師なんだよ。」
あおいが片恋を諦めようとした相手、瞬お兄ちゃんにあおいは
「初等部の待った先生がね、わたしがいなくなると淋しいんだって!。だから黒百合に残ったの。それで入学説明会と制服買いにね。それより、お兄ちゃんっ!💢。なんで先生になるのを教えてくれなかったのよ!」
「えっ?。お前、松田さんから聞いてねえのかよ?。参ったな」
瞬の言う「松田さん」とは、つまり初等部の待った先生のことで、瞬の高校大学での先輩かつ大親友だ。
松田さんにしてやられた!騙された!そう思う瞬。でも
いやいや、それより今日こそはちゃんときちんとあおいに謝らないといけない。傷つけてしまったのだから
そう思う瞬
「あおいっ!ごめんっ!。お前のバレンタインで焼いてくれたケーキ、無駄にして本当にごめんなさい。冗談でも言ってはダメでした!。申し訳ありませんでした」
バレンタイン生まれゆえにモテすぎてチョコレート嫌いになった。そんな瞬お兄ちゃんのために、つくりかけのチョコレートケーキを放り出し、改めてナッツ入りケーキを焼き上げたあおい。そのあおいに
「俺、バレンタイン大嫌いなんだよ!」
そう言ってあおいを傷つけてしまったお詫びだ。深々と頭を下げた瞬。
「もういいわよ!。どうせ男の子には女心なんて」
この約二ヶ月を思い出したあおい。そう言いつつも
平手打ちが瞬時に瞬の顔にヒットする。
「わたしを傷つけた罰よ!」
「わたし、わたし、この一ヶ月、さみしかった!」
瞬お兄ちゃんに抱き着いて泣くあおい
だが見物人がいたようで
ヒューヒューと口笛が鳴る。あおいが口笛の方を振り向くと
その喧嘩別れの事情を知る、先に帰ったはずのあおい七人組のしおり・みずき・ちはる・うな・カネコ・美佐とゆかり、従姉の紫蘭と高等部のしおり先輩に中等部の柑奈先輩やまなみ先輩、そして松田先生が冷やかしている。
「松田さん!あんた、俺をハメたな!」
「ま、真鍋、怒るなよ。エイプリルフールだ!」
「何がエイプリルフールだ💢。一ヶ月も前から念入りな!」
>> 161
「松田さん!あんた、俺をハメたな!」
「ま、真鍋、怒るなよ。エイプリルフールだ!」
「何がエイプリルフールだ!💢。一ヶ月も前から騙し続けたくせに!」
初等部卒業間近のバレンタインのころ
教え子の赤井あおいがその想い人の真鍋瞬、自分の後輩の真鍋と喧嘩別れした。そう、あおいの友人のゆかり、自分に片恋している教え子のゆかりから聞いた松田先生。その時は
ふーん、子供からママさんにまでモテる、モテ男のあの真鍋がねえ、珍しくもフラれたんだ。
くらいに軽く考えたのだが、翌週のテストで赤井は、心ここに有らずな様子。案の定、成績が奮わず。このまま放置したら、赤井はまたも成績が、学年トップクラスから気まぐれ大暴落してしまう。
そう思った松田先生。後輩の真鍋と教え子の赤井の仲を心配し、真鍋の自宅を三月一日に訪問したのだ。その時、真鍋と赤井はデート中だったが、やはり赤井はあの日の怒りが押さえられず、真鍋の自宅から飛び出した。
それで真鍋を説得し、黒百合女学院高等部教師に推薦したのだ。さいわい真鍋は塾人気講師だったので、思惑通り採用されたものの
真鍋は、あおいは黒百合女学院中等部ではなく、国立附属中学校に入学予定と聞いて黒百合の教師になったのだから、真鍋の怒りは当然で。しかも俺を騙しただけでなく
「あおいの進学を妨げたな!この松田さんの馬鹿教師!💢」
と。でも優し過ぎる真鍋は
「松田さん、次は俺はキレるからな!」
と許したのだった。松田さんの後輩思いを知っているからだ。
そんなあおいが真鍋と仲直りした帰り道の、あおい七人組の溜まり場の黒百合女学院近くのマクドナルド。あおいは不機嫌だ。
「ゆかりっ!みずきっ!ちはるっ!美佐っ!。アンタたち、このあおい様をよくも騙してハメたわねっ!💢」
ゆかりは真鍋が黒百合教師になるのを、想い人の松田先生から聞いて知っていたから。でも知ったのは卒業式の日、たまたま真鍋を見かけて美佐と後をつけて行ったら、真鍋が高等部校舎に入り、それで松田先生に問い詰めたのだ。
「ごめぇん!。でも、それ知ったのは卒業式だよ。それに松田先生、あおちゃんのために黙っていてやれ!って」
謝るゆかりと美佐。みずきやちはるも
「だってぇ、あおいが剛くんを好きになったら、わたしら勝ち目ないもん。だから再会サプライズプレゼントしたの」
>> 162
「わたしを騙してハメたわねっ!」
黒百合女学院近くのマクドナルドで少し不機嫌なあおい。
そんなあおいに謝るゆかりと美佐。
「だってぇ、真鍋のお兄ちゃんが黒百合の高等部の先生になるのを知ったの、初等部卒業式の日だもん。それに初等部の松田先生、あおちゃんのために黙っていてやれ!って」
みずきとちはるも
「あおいが真鍋さん諦めて剛くんを好きになっちゃったら、わたしら勝ち目ないじゃん!。結果的に騙して悪かったけど、再会サプライズのプレゼントじゃん」
「ったく!もう!。瞬お兄ちゃんと仲直り出来たからゆるすけど」
そんなあおいに対し、むくれているのは、中等部を休み過ぎて日数足らず、そんな彼女の内気を心配した学長と中等部校長、そして初等部校長の配慮で、一時的に初等部に編入されていたうなだ。
さっきから一言もしゃべらない。うなは心を許した人にはおしゃべりなのに。
「うなちゃん、どうしたの?。何かあった?」
うなにとって二度目の中等部入学式を控えている今だから、そう案ずるあおい。でもうなはツーンとしている。
「どうしたの?。言ってくれなきゃわからないよ?」
そんなあおいに何かの雰囲気に気づいたカネコが
「あおちゃん、うなちゃんってサナちゃんや雪ちゃんと同じ・・・」
あおいの耳元にそう囁こうと
それはさせない!。他人にカミングアウトされたら堪らない!と。
「あおちゃんっ!。わたしというイイ女がありながら、なんであんな男と💢」
「え?、えええーっ?」
うなの予想外のカミングアウトに唖然状態のあおい
黒百合女学院は幼稚部から大学まで女子校だから、いわゆる百合の女の子は卒業した初等部にも少なからず存在したが。あおいはうなと知り合って、まだ数週間だ。
「わたしというイイ女がありながら男と!」
と言われるほど百合な意味で親密には付き合ってないし、そもそも、もちろんあおいはノーマルだ。うなちゃんは確かに事情で中等部入学式までうちに下宿してるし、同じお部屋で寝たこともあるし、一緒にお風呂にも入ったけど
「それが女の言うセリフかよ!」
機転を利かせ、ふざけてるっぽくツッコミ入れる美佐にハッと我に返る。うなは慌てて
「も、もちろん冗談よ!。女同士の友情を忘れてデート優先なんてしないでよね。みんな仲良くしよーね!って意味のね!」
>> 163
男子トイレから男の悲鳴が響く。
ここは黒百合女学院初等部の男性職員トイレだ。
あおいは高等部教師になった初恋で片恋の人、瞬お兄ちゃん会いたさに、ゆかりは同じく初恋で片恋の人、待った先生会いたさに、中等部入学式前の春休みにも関わらず、真新しい中等部の制服姿で学校に来ている。
そんなゆかりは、ソワソワとドアの向こうに消えようとする、愛しの待った先生を追いかけた。普段はおとなしすぎる性格だが、あおいと同じように、思い込んだら全く周りが見えなくなるゆかり
男性トイレの小便器に向かい、ファスナーを下ろそうとした待った先生の腕と胴体の隙間からスポっと
「せんせーおはようございます!。ねえねえ一緒に遊ぼ。遊んでよ!」
そう言わんばかりに顔を出したのだ。
朝の職員会議が長引きトイレ我慢していた待った先生は、ゆかりがトイレに入って来たのにも気付かず悲鳴がついつい。
「うわぁ!。高田、お前、ここは男子トイレだぞ!」
ゆかりちゃん、駄目っ!そこは男性トイレ・・・。そう言うあおいの声も聴こえないかのような、もう初恋で待った先生に夢中なゆかり。
ゆかりちゃん、ますます待った先生を好きになっちゃってる!。
ゆかりのあれだけの初恋パワーはわたしにはない。そう思うあおいは、それでも、ゆかりちゃんより先に瞬お兄ちゃんの彼氏になるんだ!と、高等部にいる瞬お兄ちゃんのもとに向かう。
空手部や剣道部など、中高等部の武道系クラブがたむろする中高等部武道場。そこに空手部顧問になった瞬お兄ちゃんはいた。
「お兄ちゃーん!弁当持って来たよ!。見学させてね!」
昨日、初めてここに来たときは、元々がモテ男でしかも塾人気講師だったためか、女心に割と敏感なる瞬お兄ちゃんは、早くも中高等部生徒の人気男性教師になりかけていた。
そんな瞬お兄ちゃんと中高等部先輩の雰囲気にムッとする、ムカムカするヤキモチを思いっきり自覚してしまったあおい。
瞬お兄ちゃんから目を離したら、他の女に奪われちゃう!。瞬お兄ちゃんと婚約状態の緑お姉ちゃんに奪われるなら、それは身内だからまだしも、他人の女の子に取られてたまるか!💢💢💢💢💢
それで、瞬お兄ちゃんと自分の二人分のお弁当を作って来たのだ。
>> 164
「お兄ちゃん、弁当持ってきたよ!見学させてね!」
ここは黒百合女学院中高等部の武道系クラブの集まる武道場。空手部顧問になった真鍋瞬に、そう明るく人懐こく話しかけてるのは、何度も書いているが、彼の一回り年下の、彼の遠戚の、彼の婚約者の緑の妹、新中学一年生の赤井あおいだ。
彼の婚約者の緑が瞬に恋を告げる何年も前に、あおいが彼のお嫁さんになりたい発言をして、当時まだ小学一年生のあおいの、その夢を無碍にすることも出来ず、受け入れてしまったための、三角関係中だ。
つまり、あおいは彼の彼女でもある。事情を知るあおいの同級生に言わせれば、そしてもちろん、当の本人のあおいに言わせれば、だが。
前職が塾人気講師で小柄ながらも整った顔ゆえ、また女姉妹の末っ子ゆえ割と女心に敏感な彼は、早くも中高等部人気教師になりかけていて、彼へのヤキモチか、入学式前なのにあおいは付き纏っている。
昼休憩のチャイムが鳴り、春休み中ゆえ給食はなく、弁当派は弁当を広げ、買い食い派は昼食に購買茶話室に向かい、あるいは黒百合近くのマクドナルドやファミレスまたコンビニに向かう中、あおいは瞬を武道場から引きずり出すかのように、瞬の手を引っ張る。
「ねえねえ、初等部体育館裏の桜が綺麗なのよ!あそこで食べよ!」
行ってみると、親友の初等部教師の松田先生も、卒業したばかりの新中学一年生の高田ゆかりに捕まって弁当に付き合わされている。
「よお!真鍋、お前もか?。モテ男はつらいよな!」
そう語るモテ男ではない松田先生。いや実際は去年、松田先生ラブなゆかりを想い案じ、松田先生の人気失墜を企んだあおいのいたずらにひっかかるまでは、彼は女生徒人気で初等部一番だったのだが・・・
「まあ、いいじゃないですか。嫌われ憎まれるよりは」
そう松田先生に言いながら、あおいの広げるシートに腰を降ろす瞬。
「おおっ!。今日は肉ぎっしりの肉食弁当か!どれどれ」
あおいのこしらえた弁当に箸を伸ばす瞬
「うーん、これは〇〇〇イのからあげ」
「ふむふむ、これは〇洋食品のハンバーグ」
「あっ!このミンチ入り卵焼きとあの煮〆だけはお前の愛情込み込みだな!。あおいも料理上手くなったな!」
あおいに見事に言い当てるグルメ?かつ料理好きの瞬。
この光景、何年か前に
>> 165
あおいの広げるシートに桜の下に腰を下ろし、あおいの持ってきた弁当に箸を伸ばす真鍋瞬先生。これと同じ光景は何年か前に・・・
🎵キーンコーンカーンコーン🎵
チャイムが鳴る。ここは数年前の黒百合女学院高等部の教室。一時間目の授業に植竹桂先生がクラスの戸を開けて入ってくる。それに続いて入って来たのは
教育実習の真鍋瞬だ。それを見て
「お兄ちゃん!なんで?」
思いがけぬ驚きに、つい立ち上がり、植竹桂先生による実習生紹介を待たずにそう言ってるのは、まだ高校生だった、あおいの姉の緑だ。
「お兄ちゃん、なんで黒川学院高校じゃなくうちに?」
「いやぁ、黒川は黒百合の系列から離れただろ?。でも俺はあおいのこともあるしで、黒百合の教師志望だからさ。でも話のわかる教授で助かったよ」
そして、この話は緑からあおいの従妹の、まだ中等部だった紫蘭に、そして紫蘭の口から初等部の、ママに習い料理を始めたばかりのあおいに・・・
あのときもこうして皆でお弁当を。
去年の今ごろも黒百合の採用面接の案内はあったけど、臨時採用だったため黒百合には就職はしなかった真鍋だ。そして夏休み、黒百合女学院高等部の社会科の女性教師が妊娠した。結婚退職予定だったその先生は、人気ぶりに辞めずに辞められずで、でも妊娠を期に辞めたいと。
黒百合からは来年度から採用したい!と真鍋に話は来たものの、すでに塾人気講師になってしまっていて、迷いに迷ったものの秋口にその話は一度は蹴った。黒百合も新任先生を雇うよりは、その女性教師をなんとか引き止めようと。
それが結局、幼稚部時代に一時失語していたあおいがやはり真鍋は心配で、それを知る学生時代の先輩の松田先生から、教師に空きが出来たんだし、初志貫徹しろよ!あおいを守ってやれ!との繰り返しの勧誘で、ここに来たのだ。
「なあ、あおい。一応は校内では俺とお前は先生と生徒だからな!」
「お兄ちゃん!ってのは止してくれ。と言っても聞いてくれるお前じゃないよなぁ。でも間違っても彼と彼女じゃないからな。これは言っておくぞ。それは休みと放課後限定だ」
「なら、今は春休みなんだなら問題ないじゃん!」
真鍋の予測通りの回答するあおい。やっぱりそう来たか。
>> 166
「なあ、あおい。一応は校内では俺とお前は先生と生徒だからな。お兄ちゃん!ってのは止してくれ。と言っても聞いてくれるお前じゃないよなぁ。でも間違っても彼と彼女じゃないからな。それは休みと放課後限定だ!」
「なら、今は春休みだから問題ないじゃん!」
真鍋の予測通りの回答するあおい。やっぱりそう来たか・・・。まあ、あおいももう小学生じゃないんだし、いずれわかるだろう。そう思う真鍋。
すると見知らぬ女の子が、やはり弁当箱持って来た。
「お兄ちゃん、紹介するね。わたしのお友達の住吉うなちゃんよ。優しくしてあげてよね」
「やっぱりあおちゃん、ここに来てたんだ。これでしょ?あおちゃんのお姉ちゃんの藍子先輩の好きだった桜」
あおいの隣に腰を降ろすうな。あおいの姉、緑先輩やあおいの仲良しグループのあおい組の皆に聞いた話では
黒百合女学院幼稚部のクリスマス会の日、あおいはまだ幼稚部年長さん。そのあおいを迎えに行った黒百合高等部だった長姉の藍子。当時多忙を極めていた、あおいの母の桃子に代わり母親代わりしていた藍子は
あおいの目前で、あおいを助けようと突き飛ばし、ひき逃げ事故で即死した。そのショックであおいは失語した。それは、いつもは次姉の緑が迎えに行くはずが、緑が担任と居残りしていたため、藍子がたまたま迎えに行ったためだった。
それゆえに、赤井家でも、あおいの彼氏で緑の婚約者の遠戚の真鍋家でも、あおいの仲良しの美佐も遠戚ゆえに立花家でも、しばらくトラウマのタブーな話題だったと。
そしてあおいが再び喋れるようになれたのは、初等部一年生のときの六年生との、この桜の下での合同自由体育という名の授業、実質が入学歓迎お遊戯会だったと。
あれから幼稚部や初等部では、名門黒百合ブランドのかわいい制服を全力拒否して、姉の藍子が自作プレゼントしたワンピースで毎日通学していたあおい。体操服も全力拒否して、雨上がりのグランドで転んでしまい泥だらけに。担任の小桜歌子先生が着替えさせようと
「い、い、イヤぁ!これ、藍子お姉ちゃんとの服・・・」
あおいが再び喋れるきっかけの、小桜先生が中等部担任として再赴任した生徒が落第前のわたし
あおいちゃんとはわたし、運命の赤い糸かも
その桜を見上げるあおい、あおいと仲良しのうなとゆかり、そして真鍋先生と松田先生。
>> 167
あおいちゃんとはわたし、百合の運命の赤い糸かも・・・
黒百合女学院の遅咲きで知られる、でも美しい桜の木の下で弁当を食べながら、そんな百合な想いで桜を見上げるうな。
そして、ママ代わりだった大好きな藍子お姉ちゃんとの思い出で、同じ桜を見上げるあおい。
赤井家と自分の真鍋家の、両家の約束で知らぬうちに生まれながらの許嫁だった、当時は初恋の彼女だった藍子を思い出して見上げる真鍋。
あおいが当時通っていた黒百合女学院幼稚部とは違う幼稚園だったけど系列だったゆえに、幼稚園教師志望だった藍子がボランティアでときどき柊幼稚舎に遊び相手に来てくれた、優しかった藍子先輩を思い出して見上げる、あおいの大の仲良しのゆかり。
失語していたあおいが再び喋れるきっかけの小桜歌子先生、教育実習生時代に良くしてくれた小桜先生との出会いを思い出して見上げる松田先生。
そんな桜の下で弁当を食べていた五人を
いや、その中の一人、あおいを邪悪なる目で見ていたグループがいた。黒百合女学院中等部と高等部の悪女グループと言うか・・・素行悪い女番長グループと言うか・・・
黒百合女学院山手校の学長が一昨年度、安倍学長に変わり、学内改革で、素行悪い反省しない学生は即時追放の方針で、本人たちは知らないが実は退学寸前リスト入りの女の子グループだ。
この子たち実は普段は、あおいの次姉の黒百合女学院大学部の緑や、同じく従姉の高等部の紫蘭の影に怯えているのだが。この二人はあおいと同じ中国武術家の孫娘、そこらの男性より強いゆえに。
しかし、その素行悪い女番長グループの何名かが高等部新任先生の真鍋先生への一目惚れしたらしく・・・ついこの前までは初等部だった、しかも見た目が
髪が肌に纏わるのを嫌うあおいはいつも、ツインテールかポニーテールもしくは三つ編みだが、最近はうなを真似てのツインテールばかりで、童顔が強調されて幼く見えるあおい。
背も極めて低いうえに痩せ身の弱そうなあおいが、中等部新入りの一年生の、いや、まだ入学式前の分際で色気づいて、真鍋に纏わり付いてるのが気に入らないのだ。
「なんだよ!あいつ、ちびなくせに色気づきやがって!」
「先輩のわたしらを無視してるしさ」
「生意気な!数集めてやっちゃいましょう!」
人様を見た目で判断してはならないのに、怖いもの知らずである。
>> 168
「なんだよ!あいつ!💢ちびなくせに色気づきやがって!💢」
「先輩のわたしらを無視してるしさ💢」
「生意気な!💢数集めてやっちゃいましょう!」
桜の下で真鍋先生とお弁当を食べているあおいを、そんな邪悪なる目で見ていた、本人たちは知らないが、黒百合女学院山手校学長が一昨年度に安倍学長に代わり、学内改革で退学追放予定リスト入りしてる女番長グループたち。
黒百合女学院初等部卒業式間近の二月のとある日、学内放送が流れる。
「高等部校長と赤井紫蘭と倉橋しおり、中等部校長と白柳柑奈と牧野菜月、初等部校長と赤井あおいと高田ゆかりと立花美佐は、本館学長室に来てください」
このときには安倍学長に信頼され、名字の「赤井くん」ではなく「あおいくん」と呼ばれていたあおいたちだ。行ってみると
「あおいくんと美佐くんは初等部卒業の中等部入学間近だね。わたしは引き続き本学を創立時の質実剛健清純に戻すつもりだ。そこで本学追放予定リストだが・・・。しかし、この女生徒たちの・・・協力をお願いしたい。立ち直るならそれでいいのだから」
怖いもの知らずは怖いもので、それを知らない、桜の下で真鍋先生とお弁当を食べていたあおいを入学式の日の朝、待ち伏せしていた悪女な女番長グループの彼女たち
しかし、待てども待てども、いつになっても校門にあおいは来ない。
当たり前である。あおいは初等部六年進級の日から、祖父の慎太郎の道場助手で早朝から高齢者太極拳教室に参加し、家で朝ごはん食べては眠くなって学校を休むのはイヤだと、朝ごはんの弁当を持っての朝七時登校してるのだから。
彼女たちが待ち伏せ開始したころには、すでに登校していて、入学式前の講堂脇で、赤井家に下宿のうなと従姉の紫蘭と三人で八極拳や空手に合気柔術の練習をしていたのだ。
そこに、あおいのママ桃子たちが入学式を見に来たから
「今度は帰りに待ち伏せだ!」
しかし、あおいは来ない。当たり前である。初恋相手の遠戚の高等部教師の真鍋に夢中で付き纏ってるのだから。
そして、やっとあおいが現れたと思えば、彼女たちには鬼のように怖い赤井紫蘭が、優しいけど怒ればこれまた強い倉橋しおりが、なぜか一緒に帰っている。おまけに合気柔術してる住吉うなまで一緒だ。
返り討ちに遭いそうだ。
「くそっ!始業式の明日の朝こそシメてやる!」
>> 169
黒百合女学院中等部の始業式の朝、いつものように朝七時登校したあおい。しかし今日は体の軽い不調を覚え、いつもの体育館前や講堂脇の渡り廊下で武術自主練習しての、朝のお弁当しながらの読書や予習ではなく、本館屋上でひなたぼっこしていた。
前日の入学式はあおいが雨女のせいか帰りには雨で、夜は曇っていて暖かい夜だったうえ、さっきから良く晴れて小春日和を通り越して、極めて新陳代謝の良い暑がりなあおいには小夏日和だったため、始業式サボって小一時間くらいは寝坊しても寝ていようと。
入学式を思い出すあおい。それは
🎵静かに神と交わる
朝(あした)の我が一時(ひととき)
新たに朝日の如き心を 我 持たまし
夜の幕 ややに消え行き 日蔭は地に漂う
主(しゅ)のほか 我ただ一人
御声(みこえ)を いざ聴かまし🎵
と、あおいの大大大好きな聖歌で始まった。多分、わたしみたいな初等部からの内部進学組にも、外部小学校からのお受験入学組にも、もちろん、中等部から初等部に一時編入されて仲良しになった入学式二回目のうなちゃんにも、決意を新たに過去に捕われずに頑張れ!の意味なんだろうな・・・。そう思うあおい。
お嬢様嫌いのうなちゃんへの配慮だろうね。中等部の島校長は
中等部ではお嬢様も庶民も貧乏な子も、実力本位です。実力が余りに劣る子は、余りに素行悪い子は、お嬢様でも退学なり落第なり高等部進学拒否なりありますよ!。みたいな喝を入れてたよね。
わたしも頑張らなきゃね・・・。そう思いながらうとうとし始めた、そんなあおいの耳に届いたのは
「今日こそ赤井をシメるぞ!」
本館直近の校門で大声会話は、素行悪い中等部と高等部の問題児グループだが、あおいはそれがまさか自分のことだとは思わない。楽観主義の天然ゆえに。おまけに超気まぐれの超気分屋ゆえに、責任感を感じる必要ない普段の場面のあおいは、分単位で気分が変わるから。
しかし、あおいの睡眠だけは妨げてはいけない。あおいのその怒りに触れたら、超絶に手が早いあおいに殺されかねない。あおいの初等部時代の同級生や先輩後輩には常識のそれを知らない、中等部や高等部からの外部入学組の、その問題児グループは
あおいのその怒りに触れてしまった。一番に気持ちいい、うとうと状態な半分昼寝状態だったあおいを彼女たちは起こしてしまった。
>> 170
黒百合女学院山手校本館前にリムジンが停まっている。それに乗りに来たのは、近県九県ナンバー1お嬢様の梅宮サナ、中等部新入生だ。
サナお付きの運転手が降りて、サナの手から通学鞄を受け取りドアを開ける。入学説明会の日と入学式の日は大好きなあおいとすれ違ってしまい、カネコを見かけ話をしたところ
「あおいちゃんはいつも朝七時登校して体育館前か講堂脇で武術の練習してるの。だから誰かが朝あおいちゃんを一緒に学校行きましょ!って誘っても、たいていはもう学校に来てるから」
それでサナは今日は朝七時に来て体育館前や講堂脇まで歩いたのだが、そこにいたのは、あおいの従姉の紫蘭とあおい宅に下宿のうなだった。
「あおいは今日は練習やめとく!って、どこかに寝に行ったよ」
そう聞いて戻って来たのだ。そして
「ねえねえ早川さん、黒百合はお嬢様学校だからって、あなたこの車を選んでるけど、外から見たら、なんて空気読めない嫌味なお嬢様なんでしょ!状態でしてよ。それにわたくし、ママやお爺さまみたいには偉くないんだから」
「昨日から、わたくし中学生なんだから送迎は要らない!って言ってるのにあなたはそれが仕事だからと。帰りからは普通の車にしてくださいね。やっぱり恥ずかしすぎるわよ」
「そうしてくださらないと、あなたのこと、主人に恥をかかせる運転手!ってお爺さまに、わたくし、言っちゃうかも知れなくてよ。気をつけてね」
「サナさま、それは気がつきませんでした。申し訳ありません。では帰りは他ので参ります。そしてサナさまが新しい学校に慣れるまで、せめて行きか帰りのどちらかだけはご一緒させてくださいませ」
お気に入りの早川とそんな話をしてるサナにも
車内のサナにも
「今朝こそ赤井を捕まえてシメるぞ」
本人たちは知らないが、黒百合女学院山手校の退学追放予定リスト入りしてる、素行悪い彼女たちの声は届く。
「早川、いつものわたくしのスカーフと扇、貸しなさい」
グローブボックスを開きサナに渡す早川。
護身のために四隅にコインが幾つか縫い付けられた、一人歩きしてるときの白いスカーフを首に軽く巻き、鉄扇をポケットに忍ばせるサナは、空手剣道優勝経験者のお転婆さんなのだが。
彼女たちはそれを知らない。
あおいちゃんをシメるつもりなら、わたくし、赦さなくてよ。派手に暴れさせていただきます
>> 171
🎵思いがけない出逢いから
そうよ始まるの わたしの恋がうまれる
光や風が踊って 頬を撫でる 振り向くと
両手 広げ あなたが立ってる
名前を呼び 側に行くわ
遠く消えないで🎵
谷村有美の予感を歌いながら、楽しそうにしあわせいっぱいな表情で黒百合女学院山手校本館前の校門をくぐろうとするのは・・・あおいの親友のカネコだ。
そんなカネコを目敏く見つけ
「あっ!あいつは赤井の連れだよ!」
「何してるのよ!捕まえるのよ!」
そんな邪悪な雰囲気を撒き散らすかのようにカネコを取り囲んだ、素行悪い退学追放予定リスト入りの彼女たち
「てめえ、赤井の連れだろ!。赤井を連れて来いよ!」
「これは先輩方、おはようございます。赤井さんって黒百合には何人かいらっしゃいますけど、どの赤井さんですか?。まさか緑先輩か紫蘭先輩のことですか?。やめといたほうが・・・。赤井元理事のことですか?。それはもちろんやめといたほうが・・・。あおいちゃんですか?。それこそ最悪でますますやめといたほうが・・・。それとも他の赤井さん?」
「初等部でお前といつも一緒の赤井あおいに決まってるだろ!。てめえ、先輩をナメてんのか?。新入生だからと手加減しねえぞ!💢。」
カネコを平手打ちする剣道部らしき竹刀を持った先輩、旧制服のスカーフの色からして高等部だろう。
この揉め事の声は、その前からの声も、屋上でうとうと状態だった、寝不足大魔女のあおいの耳に届いていた。さっきから、本館前で騒いでるのは誰よ!💢状態で、気持ちいい、うとうと状態を邪魔されたあおいが不機嫌な極みの顔で屋上から顔を出す。
「先輩たち!わたし寝てたのにうるさいわよ!。何してるんですかぁ?。まさか高校生にもなって、恥ずかしい弱いものイジメですかぁ?。わたしのカネコに手を出したらゆるさないよ?」
仲良しのあおいが屋上から顔を出したことで、イジメられっ子気質な大人しい性格のカネコは安心する。そして
「あーあ、先輩たち、最悪にもあおいちゃんを起こしちゃった。わたし、知ーらない!。ひとつ教えて差しあげますけど、あおいちゃんは緑先輩の妹で紫蘭先輩の従妹で、赤井慎太郎山手校元理事のお孫さんで、赤井幸一郎中央校理事の娘さんですよ?。先輩たちは外部入学組で知らなかったんでしょうけど。謝るなら今のうちかと」
>> 172
騒ぎに本館屋上から顔を出したあおいは、仲良しのカネコを取り囲んでる、そんな竹刀持って集まってる先輩たちに
「先輩たち!わたし寝てたのに何を騒いでるの?。うるさいわよっ!。まさかぁ高校生にもなって恥ずかしい弱いものイジメですかぁ?。わたしのカネコに手を出したらゆるさないよ💢。それにカネコ、大人しいだけで実は強いからね!」
仲良しのあおいが屋上から顔を出したことで、普段はイジメられっ子気質みたいな、普段は大人しい優等生のカネコは安心する。
「あーあ先輩たち、最悪中の最悪パターンな、寝てたあおいちゃんを起こしちゃった!。わたし知ーらない!。先輩たち、外部入学組で知らなかったんでしょうから教えて差しあげますけど、あおいちゃんはあの緑先輩の妹であの紫蘭先輩の従妹で、赤井山手校元理事のお孫さんで赤井中央校理事の娘さんですよ。謝るなら今のうちかと」
あおいは緑の妹で紫蘭の従妹だと、そうカネコに言われ、自分たちはなんてことをしてしまったんだ!と、一瞬は怯んだ高等部と中等部の素行が悪過ぎて退学予定リスト入りの先輩たち。
しかし中には『怖いもの知らずの極み』みたいな子がいたようだ。
それに今さらどうにもならない。あおいに勝つしか、もはや手はない。そう思ったか、強がって叫ぶ
「緑がなんだ!紫蘭がなんだ!理事がなんだ!。怖くねえよ!。今この場にいないと間に合わねえんだ!。あおいっ!てめえ生意気なんだよ!シメてやるから降りて来いっ!」
「ふーん、このわたしにそゆ事、言っちゃうんだぁ?。わかったから逃げちゃダメよ。行くから少し待っててね」
本館の外にまで音が響く。ちびだけれど瞬発力に優れる、高校生ボクサー並のスピードの猪突猛進のあおいが、中国武術の軽身功をしてるあおいが、階段を踊り場まで一気に飛び降りるを繰り返してるのだ。派手な着地音は威嚇だろう。
激怒を通過し憤怒なあおいは、あっという間に姿を見せ、唖然状態の先輩たちに
「せっかく安倍学長に先輩方とは仲良くしてあげてねって頼まれてたのに。先輩がわたしとやりたいのはケンカですかぁ?。犯罪ですよぉ。前もって言っときますけど、今のうちに謝って去らないと一生後悔しますよ。いいのね?。竹刀なんか持って集まっちゃって、自己正当防衛に人命救助護衛と現行犯私人逮捕の武力行使は合法だからね!💢💢💢」
>> 173
「先輩たちがやりたいのはケンカですかぁ?。竹刀なんか持って集まっちゃって。入学前の春休みの練習、拝見しましたけど、先輩たちのは剣道じゃなく棒道ですよぉ!。それでわたしに勝てるつもり?。紫蘭先輩と違って練習サボり隊なんでしょ?」
「わたし学長に、先輩たちが更正できるよう仲良くしてあげて!って頼まれてるんだけど後悔しないのね?。ケンカって犯罪ですよぉ!。現行犯私人逮捕の武力行使は合法だからねっ!💢💢💢💢。不法に竹刀持って集まってバカですか?」
そんなあおいは見た目は幼く見え、ちびの痩せ体型だ。
寝ていたところを起こされ、親友のカネコに平手打ちした彼女たちに憤怒中ながらも、優しいあおいの最後の善意を、ナメた言葉と受け取った、救いがたい退学追放予定リスト入りの高等部と中等部の先輩たち。
そのうち二人があおいに竹刀を左右同時に振り下ろすが
突進したあおいの震歩彈陽掌の震脚(八極拳の特徴で体重を攻撃に乗せるため地面を激しく踏む歩法)と同時の上段掌打で、右足甲を粉砕され顎を外される。そして一人も震歩探馬掌の震脚と掌打で左足指と鎖骨を同時に折られる。
「先輩たち、わたし思いきり手加減してるのよ?大丈夫ですかぁ?」
そんなあおいに中段突きを入れて来た一人は金剛八式冲捶で当て身され、息も出来ない苦しみにのたうちまわる。
あおいの背後に回り込み竹刀でと動こうとした一人は、隣の一人と一括で二人同時に靠山壁(体当たり)で転倒させられる。
ちびで痩せのあおいだが速すぎる初期加速ゆえに重い攻撃になるのだ。しかも八極拳は体重を瞬間的に攻撃部位に浴びせる、そんな単純原始的な破壊力に特化している。
しかし減らない相手にあおいも多勢に無勢かと思ったころ、停まっていたリムジンのクラクションが響く。
ドアを開けた清純美少女は鉄扇で扇ぎながら涼しい顔だ
「あらぁ?おかしいわねえ。わたくし名門お嬢様学校の黒百合に入学したはずなのに、お集まりの先輩方は手癖が悪すぎるのね。お下品が極まりましてよ」
「あおいちゃんお久しぶりね。生ゴミのお掃除、わたくしもお手伝いさせてくださらない?。楽しそうだもん」
太陽が逆光だけど聞き覚えある声にあおいは
「サナちゃん?。是非お願いいたしますわ」
一瞬にして三人が、舞うかのようなサナに鉄扇で小手や脛を激しく打たれ戦闘不能に
>> 174
サナは愛しのあおいを熱い眼差しで必死に見つめている。黒百合女学院本館の駐車場に停めさせた、お気に入りのお付きの運転手の早川の送迎するリムジンの中から。
あの夏の日、あのときはすれ違っただけだけど、あの酔っ払いのおじさんを電車から蹴り出した、あおいちゃんの物凄いキック見て一目惚れしちゃった。
クリスマスには逢って遊んで貰って大好きになっちゃった。あおいちゃんって、優しくて明るくて面白くて賢くて可愛くて格好良くて。
あおいちゃんを追いかけて黒百合に入学したけど。
大好きなあおいちゃんが闘ってる。
あおいちゃん闘いかたが上手すぎる!。最短距離で全く無駄がないもの。それにあれだけの体格差と人数相手なのに手加減までしてあげてる!。
でも、わたくしの空手や剣道の先生に聞いた、八極拳の欠点らしいものも。そして間合いがやっぱり短いわね。あおいちゃん体が小さいから尚更。
これはやっぱり、お強いお嬢様の中のお嬢様のわたくしの出番ね。あおいちゃんには敵わないんだけどね。
「早川さん、クラクション鳴らして自動でドア開けて!」
言われたとおりにクラクションを響かせドアを開ける早川に
「今から早川さんが見るのは、いつものホワイトなサナじゃなくてナイショのブラックなサナだから早川さん、いつもみたいにママにはヒミツよ。男の人が大嫌いなわたくしが早川さんだけのために投げKISSとしてあげちゃうんだから。約束よ」
そう言いながら早川に、彼すらもたまにしか見られない可愛い表情と可愛い仕草で投げKISSをしたサナ。意を決して車から降りる。
梅のかおりを染み込ませたお気に入りの、梅の老樹の柄の鉄扇を開きつつ。そして護身のために四隅にコインを縫い付けられたスカーフを首から解きつつ、口を開く。
「あおいちゃんお久しぶりね。人間生ゴミ掃除お手伝いさせてくださらない?。だって楽しそうなんだもん」
「サナちゃん、確かにハエがウザいからお願いしますわ」
そんなあおいの返事に
「近県九県No.1のお嬢様の中のお嬢様、わたくし梅宮サナ、赤井あおいお嬢様に助太刀させていただきます。悪者じゃない人はさっさと逃げちゃいなさい。さもないとこうなりますわよ!」
その瞬間サナは舞を舞うかのように、スカーフで目くらましをしながら、一瞬にして鉄扇で三人を打ち据えたのだった。
>> 175
あおいラブな、百合の意味であおいラブなサナが
「近県九県No.1お嬢様の、お嬢様の中のお嬢様、わたくし梅宮サナ、ブラックなサナがあおいお嬢様に助太刀いたします。悪者じゃない人は逃げちゃいなさい!。さもないとこうなりますわよ!」
そう名乗った瞬間、舞を舞うかのようにスカーフで目くらましをしながら、一瞬にして三人の小手や脛を鉄扇で打ち据えるサナ。
その十分前、梅宮家の車を見かけた同じく中等部新入生の千堂敦子、世が世なら彼女はサナのお守役だが、彼女を車内に手招きしたサナは言い含める。
「いいこと敦子ちゃん、今ね、わたくしの大好きなあおいちゃんが待ち伏せされて危ない状況なの。それにあおいちゃんは来てるはずだけど居場所がわからないの。でも騒動はここで起こるの。甘いもの大好きなあおいちゃんは茶話室の近くに来るはずだから」
「それでね、あおいちゃんの従姉の紫蘭先輩とお友達のうなちゃん、あなた、わたくしより先に黒百合に入ってるから判るわよね。二人は講堂そばにいるから、早川にクラクション鳴らさせたら連れてくるの。それが世が世ならあなたの、主人と主人の好きな人を守る仕事よ」
「ただし、ブラックなわたくしをうなちゃんには、まだなるべく見せたくないから、それまでは反応しちゃダメ。うなちゃんのお嬢様嫌いもあなた知ってるはずよね。それも主人の好きな人を守る仕事よ。さあ、お行きっ!」
それから十分、サナはこれは黒百合女学院山手校の反あおいの生徒だけじゃなく、他の学校の生徒が混ざってると判断した。冬制服が変わったばかりなのに、やたらと新制服のがいるのだ。
だいたい黒百合女学院はお嬢様学校、それも名門だから、素行悪いのがこんなにいるはずはないのである。
だから早川にクラクションを鳴らさせ派手に登場したのだ。これはあおいちゃんが強くても頑張れるのは時間の問題と見たのだ。
そんなサナの深謀を知らないあおいは、サナが一瞬にして三人を打ち据えたのを見てニコッとして
「わたし黒井あおいになりまーす!」
腰からベルトを抜いたと思えば、紐の先に鉛玉のついた流星錐だった。
「サナが自分の禁じ手公開しちゃったから、わたしも見せてあげちゃう。目に当たると失明ね🎵。たぶん狙わないけど嫌ならさっさと去れっ💢」
あおいは三人の脛を遠間から打ち据える。
>> 176
「わたし赤井あおいから黒井あおいになりまーす!」
ニコッと笑顔を見せたが、あおいが本性の悪魔に変わった瞬間だ。お友達のサナが味方してくれて、舞うかのようにスカーフで目くらましをしながら、あっという間の瞬間に三人を打ち据えたのを見て
わたしも手加減やめるわ!アホらしい。わたしの優しさを無にしてくれちゃって!と本気の本気でキレた瞬間だ。
スカートからベルトを抜くあおい。そう見えた。しかしそれは、帯状態に束ねた組紐の先に銀の玉、いや、鉛玉のうえにアクセサリーに見えるよう、銀をコーティングし猫を彫り込んだ流星錘。ゲーム感覚で遊びながら自然に身につけた、中国武術の暗器つまり隠し武器だ。
紐の先の鉛玉を振り回し遠心力加速をつけながら
「これは痛いわよ。目に当たると失明ねっ🎵。嫌ならさっさと去れっ!💢💢💢。わたしこれ得意だけどぉ、たまには外れてお目々に当たっちゃうかもぉ」
「あなたたち、安倍学長の書いた黒百合の退学追放リストに名が記されてるの。かわいそうだから今までのあなたたちの悪行、気づかないふりしてあげてたのにさ。もうわたしマジ切れたからね」
あおいはあっという間に遠間から三人の脛を打ち据える。そして紐を絡め一人の竹刀を奪い取る。
飛び道具をあおいが取り出しただけじゃなく、極めて高い命中率を見せつけられた、高等部と中等部の追放予定リスト入りしてる、悪な先輩たちはパニックになる。
竹刀では流星錘の紐は切れないし、仮に紐や玉を打ち落としても、その瞬間に素手で殴り倒されるのは明白だ。あおいの信じられぬスピードでは。
さらに悪いことに、あおいに助太刀している、サナと名乗るあおいのお友達らしき見知らぬお嬢様、あおい並に強いのだ。瞬く間に三人を鉄扇で打ち据えている。
もはや逃げ出したい彼女たち
「だから赤井家に手を出したらいけなかったのよ!。あおいがこれだ。緑や紫蘭に見つかったら・・・」
とか言い出してる気弱な子も出てくる
「ば、バカ!。中等部も一年生、しかも入学してすぐの、こんなちびっ子にやられるわけにはいかないだろが!。てめえ行けよ!」
悪グループ高等部三年生のリーダー格だろう、数人を無理矢理にあおいやサナの前に押し出し、戦わせようとする
「不要犹豫 打架!」
どこからか女の声がする。
皆が声の方を向く。紫蘭だ。
>> 177
もはや逃げ出したい彼女たち
「だから赤井家に手を出したらいけなかったのよ!。一番ちびっ子のあおいがこれだもん。もし緑や紫蘭に見つかったら。それにサナとか言う助太刀してるコイツ強すぎる!」
「ば、バカっ!。中等部一年生それも昨日入学したばかりの、おまけにこんなちびっ子に高等部が負けるわけにいかねえだろ!。お前ら行けよ!」
悪グループのそれも高等部三年生リーダー格だろう、数人を無理矢理に押し出し、あおいと戦わせようとする。が
「不要犹豫 打架!」
どこからか女の甲高い声がする
声の方を振り向く皆。立っていたのは
悪グループが怯えている紫蘭、あおいの従姉だ。
悪な彼女らには、そしてすでに来ているかもな先生たちには、気づかれぬように中国語を使ってるのだ。赤井家は中国武術道場もしてるから皆が中国語達者だ。
「あおい!手加減するな!。この際はとことんやれ!」
そういう意味を言ってるのだ
頷くあおい。あっという間に二人を打ち据えている。紫蘭が姿を見せ、あおいが手加減なく二人を打ち据え、もはやパニックの彼女たちは逃げ散らかるが
「どこにお急ぎですの?鮎川さんたち。まだ遅刻する時間じゃなくてよ」
通せんぼするのは、あおいを妹同然に可愛がってる倉橋しおりだ。
別の方向では
「桧山先輩、わたしのあおいちゃんによくも手を出したわね」
マジ切れ状態の住吉うなが道をふさぐ。あおいの同級生のあおい七人組、初等部リーダー格だったのが揃っている。
そして、本館駐車場に停まっていたロードスターからは、高等部校長に元理事の祖父慎太郎からの手渡し物に来ていた、この騒動を最初から見ていた、あおいの姉の黒百合大学部の緑が
「紫蘭!」
そう叫ぶと同時に黒い棒らしきものを投げ渡す。
受け取った紫蘭は目にも見えないかの早さの抜刀で、リーダー格の天野早百合の、紫蘭に向け構えた竹刀を真っ二つに斬り落とし鞘におさめる。
「あんたたち体調悪くて寝ていたはずの、わたしの従妹のあおいをよくも騒ぎに。もはやあんたたち、ゆるされないわよ!」
「この追放予定リスト見なさい。あんたたちの名前しっかり記されてるわよねえ。わたしもしおりもあおいも含めて当時の高等部中等部初等部リーダー格は学長からあんたたちのこと頼まれてたのよ。立ち直らせてくれ!って。それを・・・」
>> 178
「紫蘭!」
そう叫んで自分の刀を投げる緑。受け取った紫蘭は、従妹のあおいに売った喧嘩に負け逃げ出す、そんな天野早百合が構える竹刀を抜き打ちざまに一刀両断に斬り落とす。
その30分前
「ねえ中田校長、あの子たちわが妹のあおいに勝てる気なのかしら。おバカさんね」
「あおいちゃんの試合も見たことあるし、あの子たちじゃ無理でしょうね。それにあの子たちあおいちゃんに実際に手を出したら退学ね」
本館前の駐車場に停められたロードスターの中でそんな話をしてるのは、黒百合女学院山手校高等部の中田真紀子校長と高等部OGで黒百合女学院大学部の緑。
中等部入学式が無事に終わったのと新学期準備が出来た打ち上げで、本館茶話室でささやかな、新年度頑張りましょう呑み会をしていた中等部の先生たち。小腹が空いたのを覚え茶話室の自販機にカップ麺を買いに来た中田高等部校長は、中等部の島校長に呑み会ご一緒しませんか?と誘われたのだ。
お酒に弱いのを自覚する中田校長はすぐに切り上げ、校長室で仕事を再開したものの、気付けば机に突っ伏して眠ってしまい。朝が来て校内を散策してると、教え子だった赤井緑が車から降りるところで、中田校長にとってはかわいい生徒だった緑に
「どうしたの?こんなに朝早く」
そう聞けば
「あおいが弁当忘れてるから届けようとしたら、祖父にこれを言付かりました」
そう緑から風呂敷包みを渡されたのだが
「今朝こそ赤井をシメるからな!」
そう話す悪グループの声が聞こえてしまい
「緑さん、車に乗せて」
それから30分。
「黒百合の生ゴミさん、さっさと歩いてね」
「てめえもだよ!わが二葉女子の有害ごみめが」
黒百合女学院高等部の山添真央と二葉女子高等部の井上瑞樹を引きずるように連れて来る倉橋しおりと赤井青蘭。青蘭は紫蘭の双子だ。
「青蘭、よく捕まえたわね」
「紫蘭、こいつらアホだからね」
へたり込む二人の前にしゃがむ紫蘭
「山添と井上、わたしらが入れ替わってたの気づいてないでしょ。アホが闇討ちなんて無理なのよ。てか山添、あんたのお気に入りの子は大分前からこっち側で筒抜けだったの」
「あんたら黒百合側は退学になるからね。ほれ、安倍学長作成の退学予定リスト。心入れ替えるチャンスあげたのに、安倍学長お気に入りのあおいを襲ったら駄目でしょ」
>> 179
首謀者、山添真央と井上瑞樹を連れて来る、紫蘭の双子の赤井青蘭に倉橋しおり。くずおれる二人の前にしゃがむ紫蘭。
「山添、ほれ、安部学長作成の退学予定リスト。学長お気に入りのあおいを襲ったらもう駄目でしょ。黒百合山手校学生会総代のわたしもゆるさないから、もう居場所ないわよ」
「井上、あんたも二葉女子で無事では済まないわよ。高額寄附のわが赤井家に盾突いたんだからさ。おまけにあんたら、梅宮サナちゃんを結果的に巻き込んだよね?。二葉女子は梅宮家の地元で梅宮家の寄附も相当あるはずだもんね」
「青蘭、二葉女子のこいつ、あんたに任せるわ。あんた二葉女子だもん」
「えー!。紫蘭、わたしこんな有害ゴミ、関わりたくなーい!」
紫蘭と青蘭の双子同士の会話の中、偶然だが一部始終を見ていた中田真紀子高等部校長が
「山添真央さん鮎川ひかるさん桧山円さん以下、山添グループの子は校長室にいらっしゃい!。退学前にせめてもの哀れみできつーいお説教してあげます!。二葉女子の井上さんたちもね。赤井青蘭さんは紫蘭さんと遊んでてもいいわよ」
一方そんな中で人目を気にせず、あおいとサナは抱き合い再会を喜び合っている。
「サナちゃんゴメンね。入学説明会でも入学式でもサナちゃんを見つけられなくてゴメンね。外部入試、合格してたのね!。おめでとう!それと助太刀ありがとね!。やっぱりサナちゃん強い子ね、大好き!」
「ううん、あおいちゃん!、わたくしもあおいちゃんとすれ違ってしまってごめんね!。お願いっ!わたくしもあおい七人組に入らせてね。去年のクリスマスからわたくし、ずっと、ずっと、あおいちゃんに逢いたかったの!好きだったの!」
うなは二人のそれを複雑な思いで見ている。うなも、これまた百合の意味であおいちゃんloveだから。
「何さ、あおちゃんはわたしの想いには気づいてくれないのに💢」
いやいや、あおいは百合ではないからサナの
「あおいちゃんに逢いたかったの!好きだったの!」
は、お友達の意味で「逢いたかったの!好きだったの!」と思ってるし、数日前のうなの百合カミングアウトの言葉
「あおちゃん!わたしというイイ女がいながら、なんで男と付き合ってんの」
も、お友達の意味で「うなちゃんはイイ女」だよね!なのだが。
ーーー中等部編 入学式の時間 完ーーー
やっと中等部入学編を書き終えました。実は以前にミクルのほうで書いていた、この黒百合女学院中等部シリーズは、これのプロトタイプみたいなものですが、初めは『みんなで記す恋物語』にする予定でした。参加者極少でしたけど。
その中に参加して下さってました、最初期版のレス2さんの書いて下さった、サナのキャラですが、実在の人物に酷似でしたので、こちらでも引っ張って出場させてますが
実はですね、こちら、おとなチャンネルのほうの黒百合女学院中等部の主要キャラのサナには、梅宮サナと住吉うなの実在の二人分のキャラを混ぜてました。(もちろん個人特定出来ないよう書いてます)
でも先日、某市に仕事で出張しましたとき
わたくしの実在の同級生のうなちゃん、その某市に嫁いでる彼女に久しぶりに会いまして、うなちゃんからクレームが
サナがいるのにわたしがいないのは何でよ?と
書いてもいいけど、うなちゃんの黒歴史に触れちゃうわよ?
それでもいい!楽しかった思い出だから?
それで初等部編の初等部卒業物語からうなを書いてます。クレームくるかな?って思いつつ、うなの落第エピソードを書きましたが
むしろ懐かしかった!と。
これからはサナとうなを二人に分けて書いていきたいな!と思いながら、気まぐれなるわたくし、いつまで続くことやら・・・リアルのわたくし、塾・道場と会社の経営者で多忙ですし。
でも最近は読んでくださる方々も増えたみたいで。頑張りますね。
面白いものには共感くださると励みになります。共感くださった方々、ほんとうにありがとうございます。それにわたくしの端末に出てる表示では6000ヒットまで僅か。予想を遥かに遥かに遥かに上回っていてうれしいです。
誤字誤変換だらけ、かつ文才も画才もない文章未熟なわたくしなのに、お読みくださり、ありがとうございます!。
次は
次は
《皐月の五角関係 中等部一年生の初夏の時間》
を予定しております。
>> 181
《皐月の五角関係 中等部一年生の初夏のじかん》
これまでのこれから?の登場人物説明。物語はそれからね。
赤井あおい
主人公。現在12歳の黒百合女学院山手校中等部一年生。遠戚で高等部教師の、一回り年上の真鍋瞬お兄ちゃんが大好き。八極拳と劈掛拳そして流星錘が得意。いたずら大好きなお転婆だが、結構な部類のお嬢様である。
真鍋瞬
あおいの遠戚かつ脳内彼氏で、緑の婚約者で、藍子の生まれながらの許婚。黒百合女学院山手校高等部教師。八極拳と空手の先生でもある。宇宙人顔だが整っており誠実でユーモアあるモテ男で、欠点は小柄と優柔不断。バレンタイン生まれゆえバレンタイン恐怖症。
赤井藍子
あおいの長姉。現在は幽霊活動中。
赤井晋太郎
赤井家当主。あおいと緑たちの祖父。黒百合女学院山手校の元理事。現在は道場と塾それに会社の経営者。黒百合女学院山手校の安倍学長は元生徒。
赤井紫蘭
あおいの従姉。黒百合女学院山手校高等部。真面目っ子だが性格はヤンキーが入っている。八卦掌と刀術が得意。高等部二年生ながら黒百合女学院山手校学生会総代。赤井春子は母。
赤井青蘭
紫蘭の双子妹。二葉女子大高等部。武術はしてなくても運動神経がいいので強い。
赤井貴志
あおいの兄。家業を継ぐのから逃亡し官僚に。
赤井幸一郎
あおいの父親。ギャンブルをやめられないダメ男だが優しく気遣いは上手。若いときは県内無敵だった。道場や塾の先生してるが水が怖いカナヅチおじさん。黒百合女学院中央校理事。お酒は一滴もダメ。
赤井緑
あおいの姉。黒百合女学院中央校大学部。趣味はイケメンハンターとエロコスプレにエロ同人執筆で、これがあおいの頭痛と悩みの原因。真鍋瞬は婚約者。八極拳と空手に羅漢銭が得意。かなりの武勇伝がある。
赤井桃子
あおいの母。怒ると鬼母と化す。元パティシエ
安岐晶
あおいの遠戚かつ元生まれながらの許婚。実は女の子。あおいと同い年。赤井家が武家時代の主君筋。
青井剛
あおいに恋するあおいの幼なじみ。黒川学院中等部一年生。特技はスカートめくり。別名がレコード男。あおいに恋する唐沢雪穂の従兄。みずきとちはるの想い人。
安倍幸太郎
あおいを信頼する黒百合女学院山手校学長。
梅宮サナ
あおいに恋する黒百合女学院山手校中等部一年生。近県九県No.1お嬢様。ブラックサナになるとかなりお転婆。
>> 182
石内歩美
保健室の先生。超巨乳ゆえ通称おっぱー先生
植竹桂
黒百合女学院山手校(以下省略)高等部教師。真鍋瞬を実習生時代に指導。
春日井まなみ
倉橋しおりに百合の意味で憧れる女の子。中等部二年生。
栗山ちはる
あおい七人組。あおいの幼なじみの青井剛くんが大好き。中等部一年生。
倉橋しおり
あおいの脳内の姉。下級生の皆に優しい先輩。高等部二年生。まなみが百合の意味で憧れる人。実は空手得意ゆえ怒れば怖く強いが、温厚で怒らせるのは困難。
黒木良枝
中等部風紀担当教師で黒百合いちばんの鬼教師。あおいたちの天敵。父の一郎は黒百合女学院総理事長
高月杏樹
あおいの同級生
小桜歌子
初等部元教師で現中等部教師。失語していたあおいが喋られるようになったきっかけの先生で、住吉うなの元担任。松田桐男を実習生時代に指導した。
真田護
初等部校長
柴田あゆ
あおいの同級生。
島大輝
中等部校長
白井理子
住吉うなの合気柔術の先生。
白柳柑菜
あおいの仲良し先輩。中等部二年生。
住吉うな
あおいを百合の意味で好きな女の子。あおい七人組に最近参加。人見知りゆえ中等部一年生は二回目。大の(高慢な)お嬢様嫌い。合気柔術が得意。住吉和恵はママ。
諏訪野みずき
あおい七人組。中等部一年生。あおいの幼なじみの青井剛くんが大好き。
千堂敦子
中等部一年生。世が世なら梅宮サナの守役。
高田ゆかり
あおい七人組。初等部の松田桐男先生が大好き。中等部一年生。実は初等部を次席卒業の優等生。おとなしいが待った先生への恋路でたまに周囲が見えなくなる。実はお嬢様。
立花美佐
あおい七人組。あおいとはイタズラ仲間で遠戚。中等部一年生。中等部二年生の後藤亜希に百合の意味で好かれてる。実は元子役の元モデルのお嬢様。
中田真紀子
高等部校長。あおいの姉の緑と従姉の紫蘭の理解者。
松田桐男
初等部教師。ゆかりの想い人。通称は待った先生。あおいとは犬猿の仲。真鍋瞬の親友。
真鍋勝兵
あおいの脳内彼氏の真鍋瞬の父親。真鍋外科院長。
桃井カネコ
あおい七人組だが唯一の良識派。貧乏だが学力極めて優秀で、初等部首席卒業の中等部一年生。高校生並にグラマーだがエロ知識は全くなくあおい組が純潔培養中。
渡忠人
底無しの酒豪であおいの祖父とは八極拳で師兄弟。
次レスから物語開始。
>> 183
んふ・・・んんっ!・・・だ、ダメ・・・
ンふぅん・・・くぅうん!・・・
だ、ダメよぉ・・・だ、だ、ダメなんだからぁ・・・
わたしまだ中学生なのに・・・えっちなこと・・・
わたしまだ12歳なのに・・・こんなことしちゃダメぇぇぇぇ
ドアのガラスの向こうに、鞄とビニール袋を手に下げた男性。磨りガラスでも人影が室内に写るはずだが、でも部屋の主は気づかない。その男性は小柄だ。歳も若い。つか男性にしては幼いし童顔。
女性の部屋だと意識したのか、彼は遠慮がちにドアをノックする。が、これが初めてではないようだ。そんな彼はまだ中学一年生の黒川学院中等部の青井剛くんだ。
「なあ、入っていいか?開けるぞ」
一方、部屋の中では、いや、布団の中では
「だ、ダメっ!。ちょっと待って!お着替え中だから!」
そう言いながらお布団の中で慌ててパンツを履くあおい
ではなく
今のあおいはパンツ履きたくても履けないのだが
中等部の白柳柑菜先輩に借りたコミックを隠すあおいがいた。
別にえっちなことはしてないが。てか、まだ自分で自分には生まれて一度もえっちなことはしたことないのだが。いくら姉の緑がエロ同人を執筆していても、ここまでえっちな本を読んだのは
生まれてはじめてで
表紙のキャラの可愛いらしさと面白そうなタイトルに釣られて借りたのだが、ついつい夢中で読んでいると、内容がだんだんとエロくなり・・・それも焦らすような、かなりのスローモーションで。
それで激しいえっちなシーンまで、ついつい読んでしまったのだ。
それで慌ててるのだ。まだまだ12歳。えっちは自分で自分にを含めて未経験でも、えっちな本を読んでたのが男の子にバレたら恥ずかしいのは、それは何となく知っているあおいだ。
そして寝間着みたいに着ていた浴衣型のパジャマ?を、さも、いま着替えたばかりかのように、一度ひもを緩め乱して整えながら
「入っていいわよ!」
ドアを開けるなり剛くんは
「よお!あおい!また懲りずに来てやったぜ!」
「ほれ、お前の好きなゲーム」
そう言いながら小型ゲーム機を投げ渡しながら
「桃ジュースと蜜柑ジュースどっち?」
『わたし、桃がいい』
「じゃあ、ほれ!」
彼が投げ渡したあおいの大好きな桃ジュースは、自動販売機サイズではない、少しビッグサイズなものだ。
>> 184
「あおい~パン・・・あんたの大好きな、何だったか、あのお店のあんパンね、買ってくるの忘れちゃった」
剛くんの閉め忘れたドアと言っても引き戸だが
そう言いながら入って来た青蘭、本当は
「あおい~あんたのパンツとか持って来たよ!昨日忘れてゴメンね」
そう言おうとしたのだが、椅子に腰掛けてあおいと話してる剛くん、あおいに恋心の剛くんが居るのに気づいて、あおいにも剛くんにも気を遣ったのだが
「もうっ!、青蘭お姉ちゃんは忘れん坊なんだからっ!。いまから売店のでもいいから買ってきて!。ウエスト50よ!」
なんて、もし剛くんが女の子とくに小学生サイズの下着に詳しい男なら、今ノーパンか?そう気付かれそうなヤバい発言をする。
「ゴメンゴメン。すぐ行くから。とりあえずあんたのお小遣い、桃子おばちゃんに預かったの渡しとくね。馬鹿みたいにテレビとか漫画ばかりに遣わないのよ。まあ、あんたは無駄遣いしない子だけどね」
「うるさーい!さっさと行けえ!。あそ・・・・この売店のお団子も美味しいから剛くんに忘れないでね。買ってあげて」
つい「あそこを見られたらどうすんのっ!」
そう言いかけたあおい。ダメダメ、剛くんの特技はスカートめくり。穿いてないのがバレたら剛くんのことだから・・・。まさか優しい正直で誠実な剛くんが今のわたしにそんなこと、絶対にするはずないんだけどね。
それに一昨年までお風呂、ときどきわたしと一緒で剛くん、わたしの多分に見慣れてるし。いや、男の子だから絶対に見てる
そう思うあおい。そう思いながら恥ずかしくなる。
でも半面、剛くんをそう意識すると、剛くんは最近は男の子らしく逞しくなっていて、なんだか初等部時代と違い頼もしい。あの話、剛くんに相談してみようかな。
いやいや剛くんは正直すぎるから。
そう、彼の別名はレコードくん。今までイタズラがバレたあおいたちを、正直者の信条を曲げてまで庇ってきてるのだが、正直すぎるから、きつく問い詰められたら結局、ありのままにリピートしてしまうのだ。
それでも、あおいの内面の秘密は彼は口は堅かった。あおいが誰に怒ってるとか、誰を嫌ってるとか、誰を好いてるとかは口は堅かったから、あおいも
「ねえ、剛くん椅子に座ってないで、ここに座ったら」
そう言いながらベッドをポンポン叩く。ここに来て!と。
>> 185
「ねえ剛くん、離れて椅子に座らずにここに来ない?」
そう言いながらベッドをポンポン叩き、剛くんに「おいでよ!」と手招きするあおい。実はあおいも剛くんには好意はある。ただ剛くんより真鍋先生がキラキラして見えるだけだ。
もちろん真鍋先生のスキンヘッドが迷惑なほど光って眩しい意味ではない。
真鍋先生つまり瞬お兄ちゃんがいなければ、今ごろは剛くんに夢中になっていたかも、なのだ。それは剛くんに比べ瞬お兄ちゃんが完璧なモテ男すぎるだけだ。
あおいが好きゆえに少し照れる剛くん。それでも今のあおいは・・・と言われたとおり素直にあおいのベッドに腰掛けるが、手と手が触れ合ってしまう。
意識してしまう剛くん。
あおいも意識してしまう。
そこに廊下を走るスリッパ音が。
「ここは学校の廊下じゃないんですよ!走らないで!」
そんな声の後にあおいのいるお部屋に飛び込んだ紫蘭。
「あおい、青蘭来なかった?。まあ、いいや。これ青蘭が忘れて行ったあんたの下・・・あ、剛くん来てたのね。ありがとね」
「剛くん、黒川の中等部になって部活で忙しいかもだけど、これからもあおいの優しい友達でいてあげてね。黒川学院は部活熱心だから大変ね」
剛くんのあおいラブを知っていて理解してるあおいは気遣うのだが、これが女の子との初恋片想いの剛くん
さっき、あおいの手に触れてしまい
あおいを女の子と改めて意識しちゃった剛くん。
あせって、慌てて、照れて、恥ずかしくて
「お、おオ、オレちょっとトイレ行ってくる!」
「あおい、今のうちにこれ、パンツ履きなさい。」
お部屋の戸を閉める紫蘭
「体拭く?」
「ううん、汗かいてないし剛くん来てるから。待たせたら悪いし。ママか緑お姉ちゃんが来てからでいい。匂わないでしょ?臭ってる?」
「ううん、大丈夫。あ、キャミソールかTシャツ着る?」
「暑いからいい。お布団あるし。まだまな板だから誰も見ないよ。そう言えば、緑お姉ちゃんも紫蘭お姉ちゃんも青蘭お姉ちゃんも胸ないよね。まな板な家系なのかなぁ?」
「どうかしらね。でもあんたのママ、桃子おばちゃんは巨乳じゃん?。あんたはその遺伝子の可能性あるわよ。あ、でも藍子お姉ちゃんは真っ平らだったから。でもいいじゃん、巨乳で痴漢されるよりさ」
- << 188 誤訂正を訂正 186の二段落の中程の ❌剛くんのあおいラブを知っていて理解してるあおいは気遣うのだが~ を ⭕剛くんのあおいラブを知っていて理解してる紫蘭は気遣うのだが と訂正いたします。ごめんなさいねm(._.)m。
>> 186
「紫蘭お姉さん、いいですか?」
トイレから戻った、いや、あおいを改めて女の子と意識しちゃった照れた状態から戻った剛くんの声が戸の向こうからする。
「いいわよ」
紫蘭があおいの代わりに答える
「じゃあ剛くん悪いけどわたし、あおいと緑お姉ちゃんの代わりにおじいちゃんの道場助手に行かないといけないから、あおいをお願いね」
それを口実に剛くんに気を遣って帰る紫蘭。
「あおい、青蘭が来たらね、まあいいや。うんにゃ良くない。あの子って勉強が残念だからね、遊び歩かずさっさと帰って勉強しろ!ってわたしが言ってたって伝えてね。じゃあまた明日ね」
「お疲れ様でした」
帰る紫蘭にそう挨拶する剛くん
改めて、あおいのベッドに腰掛ける剛くん。あおいは剛くんの眼をじーっと見つめている。真剣な顔だ。そしてポツリポツリ
「あのね、剛くん」
「あのね、剛くん、わたしね」
「あのね、剛くん、わたしね実は好きなの。でもぉ」
そうたとだどしい、ポツリポツリでも真剣な顔。そして眼を閉じたままのあおい。
えっ?。まさか、あおいが俺に告白?。まさかぁ
そう思いながらも、あおいはなかなか次の言葉が出ない。
これはあおいから俺に告白か?。キスのおねだりか?。俺、ついに恋敵の真鍋に勝ったのか?。そう思うものの、さっきあおいと指と指が触れ合ったため、意識しまくり状態で照れ極値の焦りまくりの剛くん
単にあおいは悩み相談するために言葉を選んでるだけなのだが。そうとは思えない剛くん、こんな真剣モードなあおいは見たことないから。それで
あおいに今日、俺、告白されちゃうのか?。そんな焦りで
「あおい、ごめんな。俺、はじめてだからこういう時、どうしたらいいか良くわからないんだ。でもお前が大切なんだ。だからいいけど、頼むっ!、はじめてだから痛くしないでね」
なんて恥ずかしい勘違いを述べる剛くん
「え?。どゆ事?。何の事?。どーゆー意味?」
わけわからない状態になり、改めて眼を開き
改めて眼を開き剛くんを見つめるあおい。
「あっ!そう勘違いしたのね」
剛くんに申し訳ないと思うのに、ついつい吹き出して笑いが停まらないあおい
「剛くん、ゴメンね」
「あのね剛くん、はじめてで痛いのは女の子だけなの」
「男の子はねお○ん○んが○○でない限りはじめてでも痛くないはずよ」
>> 188
「男の子はね、おち○ち○が○○な○○じゃない限りはね、はじめてのときは痛くないのよ。痛いのは、しりもちとかのケガじゃない限り、はじめてな女の子だけなんだから」
そう言いながらも、込み上げてくる笑いを押さえられないあおい。かれこれ10分は笑いつづけてる。これと言うのも
剛くんをしばらく上目遣いで見つめ、眼を閉じて、たどたどしく
「剛くん・・・あのね・・・わたし・・・好きなの・・・」
そう話し始めたあおいに勘違いした剛くんが
照れと恥ずかしさの極値のあまり混乱し
「俺、初めてだからどうしたらいいか、わからないんだ。頼む!痛くしないでね」
なあんて恥ずかしいセリフを言ってしまったせいだ。
「ハハハ・・・ごめん・・・ハハハ・・・お腹痛い笑いが停まらなーい・・・」
そう笑いつづけてるあおい
なぁんだ俺に告白じゃなく、真鍋さんへの恋路の悩み相談したかったなのか。紛らわしい奴。でもさ、俺はあおいの笑顔が好きだからさ、アウトオブ眼中でさみしいけど、今は応援してやろう。今のあおいは怪我人だから。
「あのさ、あおい。俺、昔よくお前のスカートめくってただろ?。あれな、お前に構って欲しかったからなんだよ。好きな人や感心ある人に構って欲しいのは、普通だと思うよ」
「お前だってよく俺の被ってる帽子とかおやつとかさ、奪い取っては逃げるいたずらしてたけど」
「お前と俺、相変わらず仲良しじゃん。真鍋さんだって他人じゃないんだし、もともとお前の遠戚の幼なじみなんだしさ、お前の悪ふざけ程度で嫌いになったりしないはずだぜ。何てったって、お前と真鍋さん、赤い糸どころか鉄の鎖で繋がってるじゃん?」
「それよりあおい、外歩いてみねえか?。五月晴れで気持ちいいぜ」
「そうね、うん、歩いてみたいな。それより剛くん、わたし先にトイレ行きたい。車椅子に載せてくれる?」
「仕方ねえなあ。お前、太ってねえだろうな」
「それは大丈夫よ。わたし新陳代謝が良すぎるから、太りたくても食べたものが消えちゃうんだもん。おまけにここは食事が・・・」
あおいを抱き上げて車椅子に移す剛くん
「ねえ、お姫様抱っこ状態だね。キスしてくれないの?」
イタズラなセリフをいうあおい
「えっ?。オマエ、今、なんて言った?」
バランス崩す剛くん
「きゃっ!。痛ーい!!。剛くん、大丈夫?」
>> 189
「ねえ、お姫様抱っこ状態だね。わたしにチューしてくれないの?。剛くんならわたし、いいのよ」
ベッドから車椅子に移そうと抱き上げた剛くんに、イタズラなエロ発言するあおい。剛くんはうろたえてしまい、足がもつれて転んでしまう。
「きゃあ!。い、いっ、痛ーい。ふ、ふざけてごめんね。剛くん大丈夫?」
「俺は大丈夫だ。それよりあおい、おまえは?」
しかしその弾みでパジャマというか、浴衣タイプの病室着から、あらわになるあおいの白い太ももと淡いブルーのパンツ。そして剛くんの右手は、あらわになったあおいの膨らんでもない胸に、左手はあおいの太ももというよりパンツの上に
「ご、剛くん、どこ触ってんのよぉ!。それに戸が開きっぱなしだよ。恥ずかしいから早く車椅子に乗せて。漏れちゃう!」
そこに廊下から入ってくる見舞い客たち。あおいの同級生や先輩後輩たちだ。
さっき、遠い小さなキャピキャピ声は聞こえていた。悪いことに、それが今、このタイミングで顔を見せる。
「ヤッホーあおい!。また来ちゃったぁ!」
そう言いながら最初に顔を見せたのは、黒百合女学院山手校の初等部六年生総代だったあおいに代わり、中等部一年生のリーダー格になりつつある、あおいに片恋の梅宮サナだ。
サナの眼には、剛くんが怪我人のあおいを、無理矢理に押し倒しているようにしか見えない状態。怒りが込み上げてくるサナ。
ツカツカと剛くんに歩み寄り胸倉を掴む。そして
「お兄ちゃん!あおいお姉ちゃんになんてことを!」
「なんで男のくせにわたしの憧れの女の子を押し倒してんの!」
と叫んでるのは、剛くんの従妹の雪穂だ。
賢いサナは、自分の百合の趣味は辛うじて冷静に隠し、同じくあおいラブな同級生のうなが剛くんに詰め寄ろうとするのを、肩を叩いて我に帰らせる。そんな二人に代わって剛くんの胸倉を掴んで叫んでるのは、剛くんの従妹の唐澤雪穂だ。
喧嘩に負けそうで泣き出した幼い子がよくやる、肩関節を中心に拳を縦回転でグルグルな、そんな連続パンチを剛くんの胸元に繰り返す雪穂。
たまらず逃げ出す剛くん。追いかける雪穂。
「黒百合の初等部の子は相変わらず元気だねえ」
そう言いながらも、雪穂をはじめ、あおいファンクラブな初等部の子たちが剛くんを追いかけるのを見送る、中等部の見舞い客たち。
「美佐、わたしトイレ行きたい」
- << 192 「美佐、わたしトイレ行きたい」 車椅子のあおいとトイレに行く美佐。あおいほどちびっこではなくても、美佐は小柄であり、体格的にはカネコやみずきのほうが適役なのだが やはり美佐はあおいと曾祖父を共有する遠戚なのだ。年頃の女の子のあおいとしては、カネコが親友とは言え、やはり恥ずかしく、みずきも親友とは言え、切り出しにくい話があり・・・ 身障者トイレの戸を開く美佐。あおいに杖を渡し、便座に座るのを手伝い、中のプラスチックなアコーディオンカーテンを閉める。 「美佐ぁ、あのね、わたしさっき剛くんに告白されちゃった。どうしよう・・・確かに剛くんは正直だから好きなのは好きなんだけどね。みずきとちはるに悪いよね?」 「剛くんね、瞬お兄ちゃんとの仲を相談してるのにさ、わたしが剛くんに告ったと勘違いしてからに(笑)。」 「俺初めてなんだ!痛くしないでね!トカナントカ言ってたのは、それはつまり・・・剛くんがわたしと初めてのそれをしたかった!って意味としか」 「剛くんは好きだけどさ、ちょっと意味が違うのよね。信頼できる幼なじみってより、守ってあげたい弟?。つか、家来だもんね。同い年の剛くんを大人の瞬お兄ちゃんと比べたら悪いんだけど、ガキじゃん(笑)」 「でもさぁ、これ剛くんラブなみずきとちはるには言いにくいよね。二人に黙ってるわけにもいかないし、後でバレたら誤解の元になるもんね。どーしよう?」 「そーねえ、わたしなら黙ってるけど、あおちゃんは嘘が苦手だもんね。みずきはともかくちはるは思い込み激しいからね、勘違いされない近いうちに言ったほうがいいかもね。わたし協力するよ!」 「大丈夫よ!。あおちゃんは隠し事しないし嘘嫌いだし、瞬お兄ちゃんに一途なのはみんな知ってるんだから!」 「やっぱり美佐は頼りになるなぁ!。ありがとね。あとね、今日はサナの誕生日だから一緒にお祝いしてあげよーね。サナは仲間になって間もないんだし。それとわたしが学校戻るまでサナをお願いね。お嬢様過ぎて世間知らずだもんね。」 そう、姉の緑にケーキを買いに行かせたのを切り出すあおい。幼稚部年少から姉妹のように育った美佐は、今のあおいには頼るべき良き親友なのである。
>> 190
「ねえ、お姫様抱っこ状態だね。わたしにチューしてくれないの?。剛くんならわたし、いいのよ」
ベッドから車椅子に移そうと抱き上げた剛くん…
「美佐、わたしトイレ行きたい」
車椅子のあおいとトイレに行く美佐。あおいほどちびっこではなくても、美佐は小柄であり、体格的にはカネコやみずきのほうが適役なのだが
やはり美佐はあおいと曾祖父を共有する遠戚なのだ。年頃の女の子のあおいとしては、カネコが親友とは言え、やはり恥ずかしく、みずきも親友とは言え、切り出しにくい話があり・・・
身障者トイレの戸を開く美佐。あおいに杖を渡し、便座に座るのを手伝い、中のプラスチックなアコーディオンカーテンを閉める。
「美佐ぁ、あのね、わたしさっき剛くんに告白されちゃった。どうしよう・・・確かに剛くんは正直だから好きなのは好きなんだけどね。みずきとちはるに悪いよね?」
「剛くんね、瞬お兄ちゃんとの仲を相談してるのにさ、わたしが剛くんに告ったと勘違いしてからに(笑)。」
「俺初めてなんだ!痛くしないでね!トカナントカ言ってたのは、それはつまり・・・剛くんがわたしと初めてのそれをしたかった!って意味としか」
「剛くんは好きだけどさ、ちょっと意味が違うのよね。信頼できる幼なじみってより、守ってあげたい弟?。つか、家来だもんね。同い年の剛くんを大人の瞬お兄ちゃんと比べたら悪いんだけど、ガキじゃん(笑)」
「でもさぁ、これ剛くんラブなみずきとちはるには言いにくいよね。二人に黙ってるわけにもいかないし、後でバレたら誤解の元になるもんね。どーしよう?」
「そーねえ、わたしなら黙ってるけど、あおちゃんは嘘が苦手だもんね。みずきはともかくちはるは思い込み激しいからね、勘違いされない近いうちに言ったほうがいいかもね。わたし協力するよ!」
「大丈夫よ!。あおちゃんは隠し事しないし嘘嫌いだし、瞬お兄ちゃんに一途なのはみんな知ってるんだから!」
「やっぱり美佐は頼りになるなぁ!。ありがとね。あとね、今日はサナの誕生日だから一緒にお祝いしてあげよーね。サナは仲間になって間もないんだし。それとわたしが学校戻るまでサナをお願いね。お嬢様過ぎて世間知らずだもんね。」
そう、姉の緑にケーキを買いに行かせたのを切り出すあおい。幼稚部年少から姉妹のように育った美佐は、今のあおいには頼るべき良き親友なのである。
>> 192
そもそも、あおいが入院してるのは・・・
あおい達が黒百合女学院山手校初等部から同中等部に内部進学し、半月あまり過ぎた二日前・・・
始業式の日、中高等部の悪な先輩グループと派手に喧嘩をやらかしたあおい、そしてあおいに助太刀した美佐とサナに敦子とうなの、新あおい組は、あろう事か中高等部の先輩達を相手に勝ってしまい。
もっとも、高等部のしおり先輩や紫蘭先輩に、中等部の柑奈先輩の善の方のリーダーグループの助太刀もあったからなのだが・・・
中高等部の悪な先輩グループを、学校から叩き出した形になってしまった、そんな新あおい組の九人組はすっかり学校の有名人。
普段はちょっとしたお菓子やパンとかジュースを買うのにすら、初等部から高等部までが押しかけ集まり混雑する、購買茶話室でさえ
あおいや美佐やサナが歩けば、モーセがエジプトの海を割った奇跡かのように、人混みの中に道が自然に切り開かれる有様。
そんな中、初等部では成績上位常連だったあおいではあるが、憧れの瞬お兄ちゃん、高等部真鍋先生への恋が再燃していたあおい。
いや、それだけではなく
憧れの瞬お兄ちゃん、高等部新任教師の真鍋先生は、早くも女生徒人気トップになりかけていて、思いっきりヤキモチを自覚したあおい。
中等部で最初の抜き打ちテストで、集中力を再び欠いてしまい、例によって成績気まぐれ大暴落。中等部職員室に呼び出されてしまったあおい。
クラス担任や教科担任からの説教だけかと思っていたら、初等部担任だった待った先生こと犬猿の仲の松田先生も、それだけならまだしも、遠戚を理由に憧れのお兄ちゃんの真鍋先生までいて。
「赤井よ、お前は集中さえしてれば出来る子なんだ!。気持ちをしっかり落ち着かせろ!」
なんて中等部教師達からの説教だけならまだしも
「お前なあ、瞬お兄ちゃんに相応しい女の子になるんだろ!」
トカナントカな松田先生の要らないお節介な一言
さらに
「お前、最近浮ついてるぞ!。だから校内では俺とお前は遠戚でも幼なじみでも恋仲でもない!と言ってたんだ!」
と瞬お兄ちゃんにトドメを刺されてしまい
「だってお兄ちゃん、あれからデートしてくれないから・・・頑張ったらデートしてくれるの?」
「ああ、いくらでもデートしてやる。が、校内では教師と生徒だ!。公私のケジメくらい解るよな?」
>> 193
瞬お兄ちゃんこと真鍋先生の職員室での、あおいへの説教
「ああ!。浮つかずにちゃんとテスト頑張ったらいくらでもデートしてやる。が、校内では教師と生徒だ!。公私のケジメくらい解るよな?」
にムカムカしてきた、勝ち気な手の早いあおい。
つい、真鍋先生に平手打ちしてしまった。
感情が出てしまったら、
もう猪突猛進の自分の気性は止められなくて
「公私のケジメ?。どの口がおっしゃるのかしら?。」
「女の子に囲まれて楽しそうですこと。料理部で嬉しそうに試食するんなら、わたしが彼女でも問題ないじゃんっ!💢。料理はお兄ちゃんのプライベートな趣味でしょ💢」
「お兄ちゃんは高等部教師の空手部顧問で、中等部教師でも料理部顧問でもないでしょっ!💢」
「黒百合生徒心得。己の掲げた旗は降ろすべからず。論理一貫、言行一致、有言実行の黒百合で、お兄ちゃんのうっかりな論理矛盾は残念ね」
「わたしね、お兄ちゃん扱いはしたけど、彼氏扱いは校内では事情知ってる先生たちのいる職員室以外では一度もしてないよ?」
「紫蘭お姉ちゃんがばらしたから、もう生徒みんな知ってるけど。それでもお兄ちゃんの立場考えて気遣いしてたのに。お兄ちゃんなんか大っ嫌い!💢」
職員室を飛び出してしまうあおいは、一目散に中高等部特別教室校舎屋上に駆ける。音楽室や理科室などのある校舎の屋上に。
その両目には
『お兄ちゃんの優柔不断の分からず屋!』の涙が。
すれ違う、黒百合中等部の生徒たちは
『何があったのかしら?』
そんな中、図書室から教室に戻るサナがあおいの涙に気づく。
「あおいちゃん、待って!」
サナの声もあおいの駆ける勢いは止められない。
あおいを追いかけるサナ。
だが、あおいはちびっこには似合わぬ駿足で
>> 194
『お兄ちゃんの優柔不断の分からず屋!』
職員室から飛び出した、あおいの瞳に浮かぶ涙に気づき
『何があったのかしら』
と、訝る生徒の行き交う廊下を
「あおいちゃん待って!」
そう追いかけるサナ。でも、あおいはちびっ子には似合わぬ駿足で、なかなか追いつけない。
黒百合女学院山手校の広い敷地。
もし高等部のグランドの隅の生徒更衣室から、幼初等部校舎を通り、本館を過ぎて総校門まで、対角線に校内敷地巡りを歩くならば、自転車が必要なくらいの、広い敷地。
だからお嬢様生徒や先生の中には、校内移動用の自転車を用意している人もいるくらいだ。
これは質実剛健・文武両道で、人様の上に立つにはお嬢様でも体力は必要と、走らせる校舎配置するためで、自転車で移動しては意味も半減するのだが、それはさておき
その広い敷地の端の部類の、理科室やら音楽室やら視聴覚室に家庭科室の揃う、特別校舎屋上まで一気に、走り抜けるあおい。もちろん自転車ではなく、自分の足で、だ。
この中高等部兼用の特別校舎の屋上は、あおいの見つけた、先生方があまり来ない場所。
転落防止の屋上の高い塀が、冬は風を遮り夏は日陰を提供で、エスケープの昼寝には最適な場所に、息を切らし寝転ぶあおい。
しばらくして
息も絶え絶えに肩を上下させつつも
あおいに追いつくサナ。
賢いサナは
「どうしたの?何かあったの?」
なんて野暮は聞かない。何も言わず、あおいの隣に寝転ぶ。
そして頃合いを見計らい
「わたくし、殿方は嫌いよ。でも、そんなわたくしでも、真鍋先生は魅力的でしてよ。優しいしカッコイイし強いし面白いし、先生だから当たり前だけど、賢いし、何よりお洒落だし・・・」
「あおいちゃんが掴まえてないと、盗っちゃうぞ!」
「なあんてね。わたくしの興味は女の子だけだから安心して。でも、みんな真鍋先生を狙ってるわよぉ!。喧嘩してて、いいのかな?」
「だって、だって、入学してからデートしてないんだよ!」
「いやいや、校内でデートしてるじゃない。給食ある黒百合で弁当持ち込んで、先生とお弁当なんて、あおちゃんと真鍋先生、ゆかりちゃんと待った先生だけだよ?」
「それはさぁ、わたしってカノジョがいながら、料理部でうれしそうに他の女の料理つまみ食いなんて、ゆるされる?」
- << 198 「わたしって彼女がいながら、料理部や家庭科で嬉しそうに他の女の子の料理をつまみ食いなんて、ゆるされるの?」 あおいは仲良いサナに怒りをぶちまける。 「公私混同はダメだ!って、わたしに言っておいて、中等部教師でも料理部顧問でもないのに、プライベートな自分の趣味で料理部や家庭科授業に混ざるのよ💢」 「彼女のわたしとデートしてるなら、お兄ちゃんの教師の立場は気遣いするけど、わたしとデートしないのに、他の女の子の料理なんて、浮気みたいなもので、公私混同より酷いじゃんっ!💢」 「しかも中高等部の女の子に囲まれ嬉しそうにするんなら、わたしが学校公認彼女でいいじゃんっ!。何さ!わたしが年下だからって、キレイな建前述べるくせにさ💢」 「空手部の部活でお兄ちゃんなんか、デコボコの刑にしてやるぅっ!。このあおい様を怒らせたらどうなるか・・・お兄ちゃん空手部顧問だもんね。逃げられない💢」 賢いサナは、気まぐれ短気なるあおいの怒りが過ぎ去るのを、じっと待つ。聞き役に徹して。男女の恋に興味ナシな百合なサナだが、それでも時折、あおいへの共感の相づちを、何度も何度も打ちながら・・・。 数十分が過ぎる・・・そしてサナは口を開く 「あおちゃん、それ真鍋先生が黒百合の先生でなくて、前の仕事の塾の先生を続けてても、同じじゃないかしら?。遠距離恋愛だったのよね?。あおちゃんの見えない場所で、真鍋先生、何をしていたのかしら?。男の子は移り気の浮気性よ」 あおいの大好きな真鍋先生を、わざと悪く言うサナ。 「サナぁっ💢。わたしの彼氏を悪く言うなぁっ!。アンタ、わたしに喧嘩売ってんのかよ💢」 さっきまで、サナに抱き着いて泣いたりしてたのに、豹変するあおい。剣道空手、かなりの腕前のサナにすら見えないスピードで、あおいの手がサナの胸ぐらを掴む。 「ほらね、あおちゃんわかってるじゃないの。あおちゃんはちゃんと真鍋先生を信用してるじゃないの。真鍋先生が好きなのよね?。なら信じてあげなきゃ」 「歳の差トカナントカこだわってるのは、真鍋先生じゃなく、あおちゃんに見えるの。歳の差なんか何さ!。猪突猛進のあおい様ハリケーンで吹き飛ばしちゃえ」 「わたくしの恋なんて、歳の差どころじゃない、高い高い、たくさんのたくさんの、ハードル越えなきゃ!なの」
わたくしの別作品《たとえばこんなクリスマス》の追記のurlから、こちらの黒百合女学院シリーズの旧バージョン(下書き版)の
《黒百合女学院中等部 恋の時間割》
にお越しの皆さま、追記の誤りで、ごめんなさいね。
m(._.)m
こちらはこちらで、まだまだ書きつづけますが
新バージョン
《黒百合女学院 恋の時間割(小愛的故事)確定清書版》は
https://otonach.com/viewthread/2957373/
でございます。
お詫びして訂正申しあげます。
>> 195
『お兄ちゃんの優柔不断の分からず屋!』
職員室から飛び出した、あおいの瞳に浮かぶ涙に気づき
『何があったのかしら』
と、訝…
「わたしって彼女がいながら、料理部や家庭科で嬉しそうに他の女の子の料理をつまみ食いなんて、ゆるされるの?」
あおいは仲良いサナに怒りをぶちまける。
「公私混同はダメだ!って、わたしに言っておいて、中等部教師でも料理部顧問でもないのに、プライベートな自分の趣味で料理部や家庭科授業に混ざるのよ💢」
「彼女のわたしとデートしてるなら、お兄ちゃんの教師の立場は気遣いするけど、わたしとデートしないのに、他の女の子の料理なんて、浮気みたいなもので、公私混同より酷いじゃんっ!💢」
「しかも中高等部の女の子に囲まれ嬉しそうにするんなら、わたしが学校公認彼女でいいじゃんっ!。何さ!わたしが年下だからって、キレイな建前述べるくせにさ💢」
「空手部の部活でお兄ちゃんなんか、デコボコの刑にしてやるぅっ!。このあおい様を怒らせたらどうなるか・・・お兄ちゃん空手部顧問だもんね。逃げられない💢」
賢いサナは、気まぐれ短気なるあおいの怒りが過ぎ去るのを、じっと待つ。聞き役に徹して。男女の恋に興味ナシな百合なサナだが、それでも時折、あおいへの共感の相づちを、何度も何度も打ちながら・・・。
数十分が過ぎる・・・そしてサナは口を開く
「あおちゃん、それ真鍋先生が黒百合の先生でなくて、前の仕事の塾の先生を続けてても、同じじゃないかしら?。遠距離恋愛だったのよね?。あおちゃんの見えない場所で、真鍋先生、何をしていたのかしら?。男の子は移り気の浮気性よ」
あおいの大好きな真鍋先生を、わざと悪く言うサナ。
「サナぁっ💢。わたしの彼氏を悪く言うなぁっ!。アンタ、わたしに喧嘩売ってんのかよ💢」
さっきまで、サナに抱き着いて泣いたりしてたのに、豹変するあおい。剣道空手、かなりの腕前のサナにすら見えないスピードで、あおいの手がサナの胸ぐらを掴む。
「ほらね、あおちゃんわかってるじゃないの。あおちゃんはちゃんと真鍋先生を信用してるじゃないの。真鍋先生が好きなのよね?。なら信じてあげなきゃ」
「歳の差トカナントカこだわってるのは、真鍋先生じゃなく、あおちゃんに見えるの。歳の差なんか何さ!。猪突猛進のあおい様ハリケーンで吹き飛ばしちゃえ」
「わたくしの恋なんて、歳の差どころじゃない、高い高い、たくさんのたくさんの、ハードル越えなきゃ!なの」
>> 198
あおいが何で真鍋先生にキレてるのか?。
scene1 七年前
あおいの九つ上の姉の緑。お受験した小中学校の全てが不合格ゆえの、公立中学校生徒で、さらに万年劣等生だった緑。
当時、高校三年生だった真鍋は、緑が外部入試入学は超絶難関なる、あおいの通う幼稚部のある、黒百合女学院高等部に入学希望と知る。
そこで真鍋は、緑に勉強を叩き込んだ。いや正確には勉強のやり方から教えたのだ。
緑の努力と言うより、その真鍋の努力は実り、緑は黒百合女学院高等部の外部入試に合格したものの、万年劣等生の緑。
さっそく一年生一学期の中間テストで、成績最悪を記録した緑本人に家庭教師継続を泣き付かれ、家庭教師に来ている。これは、その頃の物語。
あおいは一回り上の姉の藍子お姉ちゃんが、目前で轢き逃げ即死したショックの失語から、なんとか回復し、黒百合の幼稚部から初等部にエスカレーターしていた。
この日、あおいは四つ上の従姉の双子、紫蘭と青蘭の誕生日パーティーにお呼ばれしていたのだが、楽しかったのだろう。あおいの鼻歌交じりの軽やかな足音が、廊下から緑の部屋に聞こえてくる。
ドアを開け、顔を覗かせるあおい。
「瞬お兄ちゃん、ママがね、「晩御飯出来たからお兄ちゃん呼んで来て」だって。「もう遅いから食べて帰ってね」だって」
そうして
「お兄ちゃん、抱っこぉ!」
マイクロミニなスカートが翻り、パンツ丸見え状態も気にしないかのような、ジャンピング抱っこで、大好きな瞬お兄ちゃんに貼り付くあおい。
「この甘えん坊め!」
そう言いつつも、しっかり抱きしめる真鍋。
この数ヶ月前、あおいは作文で
「わたしの夢は瞬お兄ちゃんのお嫁さん」
そう授業で公言していた。
姉の緑が恋を真鍋に告げる前に
『緑お姉ちゃんなんかに瞬お兄ちゃんはあげない』と。
さらに念のために、と
「わたし、お兄ちゃんのお嫁さんになりたいっ」
最近、真鍋本人にも告白した、あおい。だが大学生と小学生。それも歳の差が一回りの、あおいは小学一年生である。真鍋が本気にするわけはなく。
それでも優しい真鍋は
『小ちゃい子の夢は壊しちゃいけない!』と
「それは楽しみだなぁ!。待ってるぞ!」
今日また、あおいは真鍋に恋を。
「ねえねえ、瞬お兄ちゃんは緑お姉ちゃんとわたし、どっちが好き?」
>> 199
ジャンピング抱っこで真鍋に貼りついてるあおいは、今日もまた、真鍋に恋を告げる。いや、正確には恋を告げようとする。
「ねえねえ瞬お兄ちゃんは緑お姉ちゃんとわたし、どっちが好き?」
「そりゃ緑もあおいもいい子だし、可愛い妹同然だしさ、二人とも好きだよ」
「違ぁう!。そんな意味じゃなくぅ、女の子として、どっちが好きか聞いてるの!。お兄ちゃんがカノジョにするなら、緑お姉ちゃん?それとも、わ・た・し?」
『コイツませてるな』
そう思う真鍋。あおいは別にませたくてませてるわけじゃなく、賢いあおいは、姉の緑の『瞬お兄ちゃんのカノジョになりない』邪心に気づいてるから
『お兄ちゃんをお姉ちゃんに盗られたくない!』
と必死なだけなのだが、生憎、ロリコン趣味は全くない、世間一般で言う常識人の良識派なのが真鍋なのであるから、当然に
「緑も年下だしなぁ、おまえも小学生だからなあ・・・」
こんな返事、恋に夢中な、背伸びしたい女の子には、口が裂けても言ってはならぬのに。常識的な良識的な言葉を返す真鍋。
すると、予想外のあおいの一言
「わたし、お兄ちゃんがロリコンでもいいの。あのね、学校の先生がね、小さい子がエッチな意味で大好きな、ロリコンなお兄ちゃんやおじちゃんは沢山いるって、言ってたよ」
慌てて座ってた椅子から立ち上がり、抱きついて剥がれないあおいを引きはがし、思わず叫んでしまう真鍋。
「お、オ、オレ、俺は違うから!」
「何よ!お兄ちゃんの分からず屋!の優柔不断!の意気地なし!。お兄ちゃんなんか、大っ嫌い!」
- << 201 「何よっ!。お兄ちゃんの分からず屋の優柔不断の意気地無し!。ハッキリしないお兄ちゃんなんか、わたし大っ嫌い!」 今日、四つ上の双子の従姉の紫蘭と青蘭の二人と一緒に、招かれていた誕生日パーティー。その主役、紫蘭と誕生日が近いから、紫蘭たち双子と一緒のお誕生会の先輩。 紫蘭の同級生で、あおいの先輩の、あおいを妹同然に可愛がってくれる、倉橋しおりお姉ちゃんに言われた言葉 「ねえねえ、あおいちゃんは真鍋のお兄ちゃんが好きなのよね?。早く告白しないと、緑先輩に取られちゃうよ。ちゃんと掴まえるまで、どんどん繰り返し告っちゃえ!。じゃないとエッチな緑先輩のことだから・・・」 しおりお姉ちゃんの 「エッチな緑先輩のことだから・・・」 の意味は全くわからなかった、あおい。当たり前である。まだ小学一年生なのだから。それに、このときのあおいはまだ、まさか 『実の姉の緑お姉ちゃんが、エッチなイラストを描きまくり、エロ漫画作家を目指してる』 なんて、知らないし思ってもいない、あおい。 でも、緑から立ち上る邪心の香り 『緑お姉ちゃんは瞬お兄ちゃんを独り占めしたがってる』 そう気づいていたあおいだから、恥ずかしくても今日も小さな勇気を振り絞り・・・瞬お兄ちゃんに・・・なのに・・・ 一回り下の妹扱いしかされず、部屋を飛び出したあおい。 ママに抱きついて涙するあおい。 「ねえ、あおい。瞬くんはあおいが嫌いとかじゃなくて、死んじゃった藍子お姉ちゃんの彼氏だったから、まだ緑かあおいかを選べないだけだと思うな」 「それに、告白されたからって、誰とでもカンタンに仲良くなるような、そんな瞬お兄ちゃんでいいのかな?。そんな男の子は女の子を大切にはしてくれないんじゃないかしら?」
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